【特集-2】新しい大会へ。すべての人に、スポーツのチカラを。「SAGA2024国スポ・全障スポ」

 この秋、佐賀県を舞台に「SAGA2024国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会」が開催される。1946年から始まり、「国体」の愛称で親しまれてきた国民体育大会が、国民スポーツ大会(国スポ)へと変わる初めての大会。SAGA2024は、日本の新たなスポーツ文化を切り拓(ひら)くため、前例のない新しい大会づくりにチャレンジしている。そんなSAGA2024全障スポでの活躍が期待される、佐賀県ゆかりの注目選手を紹介しよう。

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最高の泳ぎを。SAGA2024全障スポ 水泳(知的障がい)/坪井夢輝(つぼい ゆうき)選手

2005年、佐賀県鳥栖市出身。中原特別支援学校高等部卒。2歳半から水泳を始めた。21年のJSCA全国知的障害者水泳競技大会で100㍍自由形など個人3冠。23年のかごしま大会では、25㍍と50㍍の自由形で金メダル。ベストスイミングクラブ鳥栖などを拠点に日々練習に励んでいる。28年のロサンゼルス・パラリンピック出場と日本新記録を出すことが目標。

■昨年2冠の王者、日本新記録狙う

 地元開催のSAGA2024全国障害者スポーツ大会(全障スポ)に、「王者」として臨む。「『勝って当たり前』と言うとおこがましいけれど、それくらいの気持ちでいる。ベストの力を出し切れば、おのずと結果はついてくるはず」と自信をみなぎらせる。
 昨年のかごしま大会では、少年男子(知的) 25㍍自由形と50㍍自由形を制し、2冠に輝いた。特に、25㍍は11秒44の大会新記録をたたき出す圧巻のレースだった。しかし、当の本人は「25㍍は納得のいく結果だったが、50㍍は勝っただけ。スタートがあまり良くなくて、タイムも満足はしていない」。今大会では2種目ともタイムにこだわり、「25㍍は日本新、50㍍は大会新を狙う」という。
 祖母や叔母、2人の姉が水泳選手という「水泳一家」に生まれ、自身も2歳半から水泳を始めた。だが、発達障がいの一つである注意欠陥多動性障がい(ADHD)のため練習に集中できないことがあり、最初のうちはうまく泳げず試合でも結果が出なかった。
 それでも、コーチを務める祖母の田中ユリさんに「あんたはできる子やから」と励まされて打ち込むうちに才能が開花。めきめきと実力をつけ、2021年6月に出場した日本知的障害者選手権水泳競技大会の100㍍自由形で3位に入ると、同年12月のJSCA全国知的障害者水泳競技大会では50㍍と100㍍の自由形、200㍍の個人メドレーで優勝した。佐賀県から、国内トップ級の選手として「SSPライジングアスリート」にも認定された。

■国際大会も経験、目標はパラ五輪代表

祖母の田中ユリさん(右)と二人三脚でトップを目指してきた。「ばあばには、いくら感謝してもしきれない」と語る

 昨春、みやき町の中原特別支援学校を卒業。鳥栖市のゴルフ場「ブリヂストンカンツリー倶楽部」に就職し、社会人アスリートとして歩み始めた。職場は山の上にあるが、雨天以外は毎日、自転車で20分かけて通勤する。「筋肉がつき、太ももがかなり太くなった」(田中さん)だけでなく、「仕事を終えてプールに入るのが楽しい。練習にも集中しやすくなった」とメンタル面にも好影響が出ている。
 昨年6月にはフランスで開かれた国際大会にも出場し、リレー2種目で銀メダルを獲得。「自分より体の大きな選手ばかりの中でも戦えることが分かった」。
 一方、克服しなければならない課題も見つかった。前半からぐいぐい飛ばして逃げ切るのが得意。その持ち味を生かすため、帰国後は海外の選手との差で痛感したスタートして浮き上がった後の泳ぎの改善に取り組んでいる。
 今大会の試合会場は、トップクラスの大会も開催できる国際基準の水泳場「SAGAアクア」。屋内50㍍のメインプールは、観客席や大型ビジョンを備える。「とても泳ぎやすいし、選手にとっては最高の環境で試合ができると思う」
 将来の夢はパラリンピック日本代表になること。その実現へ、まずは「地元で最高の結果を出して、いつも応援してくれる方々に恩返しをする」つもりだ。

Players 1 車いすバスケットボール(身体障がい)/八島京子(やしま きょうこ)選手

1967年生まれ、佐賀市などを拠点に活動、ハガクレデンジャーズ所属

■集大成として臨むレジェンド
 競技歴は37年。2000年のシドニー・パラリンピックに日本代表として出場し、銅メダル獲得に貢献した ”レジェンド“ だ。
 先天性の二分脊椎症で、幼少期から車いす生活を送る。車いすバスケを始めたきっかけは友人の勧めだったが、巧みな車いすさばきやスピード感、点を取るために選手一人一人が役割を果たさなければならない戦略性の高さにすぐ魅了された。現在は佐賀を拠点に活動する「ハガクレデンジャーズ」などに所属し、日々練習に励んでいる。
 「女子選手が増えるよう、いい試合を見せたい」。競技人生の集大成として、地元開催の大舞台に挑む。

Players 2 バレーボール(身体障がい)/バレーボール(聴覚障がい)女子チーム

■記念の「1勝」へ 連係に磨き
 メンバーは中学生から50代までの9人、うちバレーボール経験者は3人。母体となるチームが佐賀県内にないことから当初は選手集めに苦労。試合に出るために必要な6人がそろったのは、今年に入ってからだ。
 県の障害者スポーツ普及委員会の古川悦子(ふるかわ えつこ)委員が中心となり、体験会を開くなどして少しずつ仲間を増やしていった。現在は月2回集まり、コンビネーションに磨きをかけている。
 主将としてチームを引っ張る県立ろう学校中学部3年の尾形俐音(おがた りおん)さんは「みんなが楽しみながら練習し、少しずつ上達している」と話す。全障スポで記念の「1勝」を目指す。

Players 3 陸上競技(身体障がい)/内田勝也(うちだ かつや) 選手

1989年生まれ。佐賀市を拠点に活動、佐賀市役所勤務

■地元の声援力に変え金狙う
 昨年のかごしま大会では、スラロームで銀メダル、ビーンバッグ投げで銅メダル。悔しさをばねに練習を重ね、今春のSAGA2024リハーサル大会ではビーンバッグ投げで1位になった。
 先天性の難病で骨が弱く、矯正手術は20回を超す。障がい者の視点を街づくりに生かしたいと、2009年から佐賀市役所で勤務。各地で講演も行うなど、障がい者への理解促進へ精力的に活動している。
 中学3年の運動会で100㍍走に車いすで出場し、ゴールした瞬間に受けた歓声が競技者としての原動力だ。「地元の声援を力にして金メダルを取りたい」

Players 4 ボッチャ(身体障がい)/初村綾仁(はつむら あやと)選手

2006年生まれ。佐賀市を拠点に活動、金立特別支援学校高等部3年

■昨年の雪辱へ人一倍闘志
 「地上のカーリング」とも呼ばれるボッチャは、戦略性が高く奥深いスポーツだ。始めたのは金立特別支援学校高等部に進んでからだが、すぐにその魅力のとりことなった。
 先天性の脳性まひにより手足が自由に動かせないため、投球補助具「ランプ」が必要。指示を受けてランプを操作するランプオペレーターは、同校の佐々木豊(ささき ゆたか)寄宿舎指導員が務める。
 昨年のかごしま大会は、惜しくも「銀」。雪辱を期す今年からランプオペレーターにもメダルが授与されるとあって、ペアを組む同校OBの立山雄一(たてやま ゆういち)選手と一緒に「3人で金メダルを」と人一倍、闘志を燃やす。

SAGA2024の全てが分かる! 観戦ガイドブックを活用しよう

 SAGA2024では初めて観る競技でも楽しめるよう「観戦ガイドブック」(全144㌻)を作成。競技の見どころや応援のマナーなどを分かりやすくまとめている。ガイドブックは開閉会式会場や各市町競技会場、JR佐賀駅を含む総合案内所などで冊子を入手できる。またSAGA2024公式ホームページでは電子ブック版を配信中。

写真で視覚的に分かりやすく
 アスリートの躍動感あふれる写真で、どんなスポーツなのか理解しやすい!
競技のポイントをコンパクトに
 競技の基本事項や勝ち負けの決め方など、ポイントをコンパクトにまとめた。
見どころはこれ!
 ここに注目するとより楽しめる! という競技ポイントを写真と文章で分かりやすく解説。
初心者でも安心して楽しめる
 競技に応じた応援方法やマナーなどをまとめており、初めて観る方も気軽に楽しめる。

■Information
SAGA2024開催概要
国スポ  10/5(土)▶10/15(火)
[会期前  9/5(土)▶ 9/17(火)、 9/21(土)▶ 10/1(火)]
全障スポ 10/26(土)▶10/28(月)

提供:佐賀県

著者情報

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