コテンラジオで人気の「株式会社コテン」のメンバーを追う「コテンリレー」。第五回目は、株式会社コテンCEO・深井さんの“弟子”を経てプロダクトマネージャーとして活躍する草野さんが登場!草野さんを通して見えてくるコテンの可能性に、今回も大学生ライター・砂畑君が迫ります。
コテンリレーの第5弾は、株式会社COTEN(以下、コテン)CEO深井龍之介さんの弟子として、コテンに入社した草野陽夏(ひなつ)さんが登場!
深井さんの弟子として入社した草野さんですが、現在は弟子を卒業し、「世界史データベース」のプロダクトマネージャーとして活躍中。
世界史データベースというのは、コテンの主要事業。
先日、約8,400万円の資金調達完了と、新たに顧問として柄沢聡太郎氏、山浦大輔氏、今井俊文氏を迎え、コテンが世界史データベース事業に懸ける思いがうかがえます。
そんなコテンの主要プロダクトのマネージャーをしている草野さんのキャリアも、現在のお仕事についても、とにかく気になることがたくさんということで、現在のご活躍の背景に迫っていきたいと思います!
人生の選択肢を増やすことに繋がる“世界史データベース”
草野さんについて詳しく聞いていくうえで、まずご質問したのは“ご自身が掲げるミッション”について。
草野さんの人生のミッションは『ひとりひとりの心に豊かさと想像力をもたらす』というもの。
まずは、このミッションについて詳しく教えていただきました。
草野:「ミッションにある言葉はそれぞれ定義しています。例えば“心の豊かさ”というのは“心の中に選択肢を持ち、それを選び取れる”こと。心の中に選択肢を持つというのは、僕自身の経験にも基づいているものです。
実はコテンに入社する前、前職をコロナの影響で解雇されるという経験をしました。同時期に、コロナ破局、コロナショックなど一通り経験しました。
それでも顔を上げて、前を向いて歩いて行こうと歩み出した瞬間に人生最大級の犬のフンを踏んだり(笑) これらの経験って、端からは“災難”に見えると思うんです。
ただ、僕は“次に大きく飛躍するためにしゃがんでいるだけなんだ”と捉えていました。今は、辛いかもしれないけれど、これは幸せへのバネになるものなんだと捉えていたんです。
辛いことをただ辛いことだと捉えてしまうと、災難になる。そうではなくて、辛いことは“人生のバネだ”と捉えてみる。そうやって解釈の選択肢を持っていると、一見すると“災難”だったことを、ポジティブな出来事に再解釈することができます。
このように、選択肢を持つことが、人の心の豊かさに繋がると考えています。」
確かにイヤなことがあった時や、何かミスをしてしまった時、“自分ってなんてダメな人間なんだろう”と捉えてしまうことがあります。
ただ、人生の選択肢を多く持っていると、“イヤなこと”、“ミスした経験”を前向きな出来事として捉えられる。そして、これが“心の豊かさ” に繋がるという草野さんのお話でした。
“自分はネガティブな人間だ”と捉えがちな方もいらっしゃいますが、それは人生の選択肢の数が関わっているのかもしれませんね。
お話ししてもらった草野さんのミッションとコテンのミッションに共通するところがあったことがコテン入社へ繋がったと草野さんは言います。
どんなところに共通点があったのでしょうか。
草野:「コテンのミッションは“人類が、人類をより深く理解することに貢献する”というものです。このミッションを達成するものの一つに、現在、僕がプロダクトマネージャーとして携わっている“世界史データベース”があります。
世界史データベースは言わば歴史情報における世界規模の標準規格みたいなものだと自分は捉えています。例えばISO規格(国際標準化機構が定める規格)がありますが、国家間でISO規格のような共通の標準規格を採用することによって、あらゆる分野における世界貿易と産業が促進されてきました。
同じように、未だ規格がない世界の歴史情報を整理しデータベース化することによって、これまで無価値と思われてきた歴史情報があらゆる個人や産業に流通し、応用され始めると考えています。
歴史上の人物はこんな社会環境や出自で、こんな選択をしたことで、こんな結果になった、というケーススタディを個々人が有益な形で切り出し、自身に取り入れたり比較したりできるようになる。
つまり、世界史データベースは、人生の選択肢を増やすことに貢献する事業になると思っています。
この点が僕のミッションに繋がっていると考えて、深井さんの弟子募集に応募したんです。」
歴史のデータベースを活用することで、歴史上の様々なケースを応用することができるというお話は、これまでのコテンリレーでも書いています。
ですが、歴史上の様々なケースを自身に応用することができ、それは人生の選択肢を増やすこととなり、結果として心が豊かになるというお考えは草野さんならではのものでした。
「やりたいことベース」で決めた、コテンへの入社。
では、草野さんが掲げる人生のミッションですが、どんなことがきっかけで作られたものだったのでしょうか。
草野:「このミッションは昨年の夏に考えたものです。この時の僕は、前職を解雇になり、ニート期間中でした。この期間中は、コピーライティング講座に通ったり絵を描いたりしていました。
明確にやりたいことがなかったので、とにかく“できること”を増やしていたんですね。前職に就いた際も、“できることベース”の判断でした。
高校卒業と同時にアメリカの大学に留学し、2年間勉強をしていましたが、事情が重なり中途退学し帰国することを決めました。
帰国してからは、とにかく一日でも早く復学したいという思いと、生活を安定させなければという思いから、当時自分にあった“プログラミング”、“英語を話せる”という二つの“できること”から仕事を探しました。
その後、社内語が英語の人材系スタートアップでソフトウェアエンジニアになりましたが、コロナウイルスの影響でエンジニアチームは解散、解雇という運びになってしまったんですね。」
ミッションについておうかがいする前に、草野さんのこれまでのキャリアが印象的すぎて、質問を見失いそうになりましたが、ではなぜ、“できることベース”の思考から草野さんのミッションが生まれてきたのでしょうか。
草野:「昔から漫画が好きなこともあって、僕の憧れは『ONE PIECE』のルフィや『NARUTO』のナルトなんです。ルフィやナルトに憧れる部分は共通していて、何かひとつ使命や曲げられない目標を持っているところです。
彼らは“できること”をベースにした思考はしていなくて、“やりたいこと”をベースに行動していました。
じゃあ、当時の僕はどうだったかというと“できること”をやり続けていただけだったんですね。
当時の自分と憧れの存在とのギャップに気がつき、それでは自分が“やりたいこと”はなんだろうと考え抜いた結果、今掲げているミッションが生まれたんです。」
僕も『ONE PIECE』や『NARUTO』を読んだことがあり、主人公の二人がどんな生き方をしているのかは知っていました。
確かに、二人の主人公は、常に自分ができることを駆使して課題を解決しているというよりも、大きな目標があって、そこに届くかどうかはわからないけれど、仲間と力を合わせて努力するというような姿を見せてくれています。
決して、二人の主人公は“ひとり”で戦っているわけではなく、信頼できる仲間と共に突き進み、話の中でもたくさんの人を助けています。
草野さんのミッションは、“ひとりひとりの心に豊かさと想像力をもたらす”。
決して、“自分の心に豊かさと想像力をもたらす”というものではありません。
なぜ、自分だけではなく、自分以外の人を対象としているのだろうと考えましたが、そこにもやはり、漫画の主人公二人に対する憧れが含まれているのではないかなと思いました。
草野:「これまでのキャリアと憧れから、自分の“やりたいこと”を考えてみた結果“ひとりひとりの心に豊かさと想像力をもたらす”という人生のミッションが生まれました。自らのミッションとコテンの事業が同じ方向を向いていたので、コテンで働くことを決意しました。」
人が歩み寄る世界を目指して
現在は、“世界史データベース”のプロダクトマネージャーというお仕事をされている草野さん。
前回のインタビューで、コテンの才能博士、たかちんさんから草野さんのご紹介をしていただいた際に、
たかちん:「陽夏(草野さんの下のお名前)はデータベース事業に強い思い入れがある。」
と話してくれました。
ここまでお話をうかがってみて、草野さんが掲げるミッションとコテンのミッションや事業が共通しているからこそ、世界史データベース事業に強い思い入れがあるのかなと考えました。
また、草野さんについて、たかちんさんは
たかちん:「陽夏はめちゃくちゃいいやつで、誰が陽夏と会ってもいいやつと言うと思います。とても、素直で正直で真っ直ぐな人なので信頼を勝ち取る力もすごいんです。」
とも言われていました。
誰からも好かれるなんて、草野さんの“才能”なんだろうなと思いましたが、なぜ誰からも好かれることができるのか、純粋に気になったので尋ねてみました。
草野:「そんなことを言ってくれていたんですね、たかちん。嬉しいです。
人間関係において、誰からも好きになってもらえるとは思っていなくて、むしろ、人間が分かり合うことはとても難しいと思っています。
ただ、分かり合うことは難しくても、歩み寄ることはできるという考えを持っています。龍之介さんも“死ぬまでに人間が分かり合えるかどうかなんて分からないけど、分かり合えるまで諦めないことは死ぬまでできる”とよく言うんですね。
このような考え方から、相手の言動の裏側には何があるんだろうとか、この人の背景にはどんな出来事があったんだろうとか、歩み寄る努力はするようにしています。
また、人とのコミュニケーションにおいても世界史データベースは活用できます。ヘレン・ケラーとアン・サリヴァン、ガンディーとその家族など、歴史上の人間のコミュニケーションを知り、見習ったり反面教師にしたりできます。」
歴史上で起こったケースを、人とのコミュニケーションにも応用することができるという草野さんのお話は、確かに納得するものでした。
草野さんは、“人生の選択肢が増えること”が“心の豊かさに繋がる”とお話してくれましたが、“人生の選択肢が増えること”が“人とのコミュニケーションを活発にさせること”に繋がり“結果として心が豊かになる”のではないかと考えました。
言い換えるならば、“人生の選択肢が増えることで生きやすくなるから心が豊かになる”ということ。
そして、コテンの世界史データベースは、人生の選択肢を増やすことに貢献するものであり、人々が生きやすくなることに貢献するものでもあるのかなと考えました。
コテンの事業はひとりひとりに多くの選択肢を与えるものであり、人に心の豊かさをもたらすものだからこそ、草野さんは“やりたいこと”と捉えてご活躍されているのではないかと感じたインタビューになりました。
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今回は深井さんの弟子としてコテンに入社し、現在は“世界史データベース”のプロダクトマネージャーを担っている草野陽夏さんにインタビューをしました。
様々な経験が、自身のミッションを掲げることに繋がり、さらに掲げたミッションとコテンのミッションが繋がり、現在はご自身のやりたいことをベースに活動することができているという草野さん。
ミッションやご自身の考え方からブレることなく、真っ直ぐに進み続ける草野さんのお姿から、“自分が何を大切にしたいのか”考えることの重要性を学びました。
草野さんは、
草野:「やりたいことや人生の目標を必ずしも持つ必要はないと思っています。目標に向かって進み続ける生き方は、たくさんある選択肢の中の一つに過ぎません。それよりも、自分にとって幸せなことは何かを考え、明らかにしていくことが大切なのかなと思います。」
と言います。
僕自身も、自分にとって大切な思いを明確にしたいと思うと同時に、草野さんの姿を見て、応援しつつも、これからもたくさんのことを学んでいきたいと思いました。
文=砂畑龍太郎