家族から褒められると嬉しいものですよね。しかもそれが自分に対してストレートに言われるのではなく、他人を通じて聞いたり、みんなの前での発言だったりすると尚更くすぐったいような喜びがこみ上げてきます。
今回の夫がまさにそうだったのです。後日あのオチを聞くまでは…。
人を褒めることが少ない夫
私の夫は、口に出して人を褒める事が少ないタイプでした。
付き合っている頃から、良く手料理をふるまっていましたが「おいしいね」「これどうやって作ったの?」なんて言う事も無く、もりもりと食べていました。
私も、そんな夫の様子を特に気にする事もなく「沢山食べるってことは、おいしいという事だ」と解釈していました。
それは結婚後の現在も同じで、黙々とではありますが毎日沢山食べてくれる夫に満足していました。とはいえ、たまには一言でもいいから褒めてほしいなという気持ちはありましたが…。
授業参観で、夫がまさかの発言
息子が小学生になり、初めての授業参観の日。初めてという事もあり、参加している保護者の自己紹介の時間がありました。
保護者1人1人が自分の名前を言ったあと、担任の先生がランダムに選んだ質問カードに対して答えていく、という内容です。例えば、「趣味は?」「好きな色は?」「好きな動物は?」といった具合です。
私は「好きな色は?」という質問に「オレンジ色です」と回答。次は夫の番です。質問は「好きな食べ物は?」でした。
「好きな食べ物は、お母さんの作った料理全部です!」表情を変えることなく、さらりと答える夫。
それまで保護者の回答にリアクションなど無く、比較的静かだった教室が
「おおー!」という(子ども達というよりは主に保護者たちの)どよめきで盛り上がりました。
「仲の良い夫婦ねえ」、「きっとお母さんお料理が上手なのねえ」、といった嬉しい小声まで聞こえてくるではありませんか!
普段、人を褒めることが少ない夫からの、予想外の発言に私は驚きました。ふと席に座っている息子を見ると、息子も「おかあさんよかったね」とでもいうようにニッコリ笑っているのでした。
授業参観は無事に終わり、3人で手をつないで帰路につきました。私は、スキップしたいような誇らしい気持ちでした。
後日知った、まさかのオチ!
しかし後日、息子の口から衝撃の事実を聞かされることになります。
ある日、夫が仕事から帰る前のことでした。息子と私で洗濯ものをたたんでいると、息子がハッ! と思い出したような表情で言いました。
「ねえねえ、おかあさん、知ってる? この前おとうさんが言ってた『おかあさんの料理がおいしい』っていうの、アレおばあちゃん(義母)の事だったらしいよ!」
私はあまりの衝撃で、何も言う事ができませんでした。
どうやら、夫はこっそり息子にだけ打ち明けていたようなのです。
みんなの前で褒められ、スキップしたくなるほど嬉しかった、あの気持ちは何だったのでしょう。
そして、「お母さん」とはまさかの「義母」だったとは…。
確かに義母は料理上手なので、全部おいしいと言いたくなる気持ちは理解できます。でも嬉しかった気持ちが覆り、フツフツと静かな怒りがこみあげてくるのでした。
夫が褒めてくれる日は来るのか?
とはいえ「お母さん」=「自分」だと勝手に勘違いしたのは私です。
怒りを夫にぶつける訳にもいかず、恥ずかしい気持ちも湧いてきました。息子にばれないように下を向き、一人顔を真っ赤にする私なのでした。
褒められる、ということはとても嬉しいものです。しかし、それが自分じゃないとわかった時の衝撃といったら…! その後も、淡々と、しかしおいしそうに毎日ごはんを食べてくれる夫。私を褒めてくれる日はいつ来るのでしょうか…。
(ファンファン福岡公式ライター / きまこ)