ドラッグストアで液体ミルクを手にした私。それを見ていた義母に、楽をしていると言われ落ち込みます。そんな気持ちを吹き飛ばしてくれたのは、意外な人物でした。
義母と買い物へ
義実家へ遊びに行った時のことです。義母がドラッグストアへ行きたいと言うので、ドライブがてら一緒に行くことに。「私も買いたいものがあるし丁度良かった」なんて思いながら車へ乗りましたが…。これが事件の始まりでした。
お店へ着いた頃には生後6カ月の娘は寝ていたので、夫と車に残ってもらうことに。何かと口うるさい義母と2人で店に入るのは憂鬱でしたが、義母はおすすめの洗剤を聞いてきたり、愛用している掃除用品を教えてくれたり。2人で和気あいあいと買い物を楽しみました。ところが、そんな和やかなムードが一変する出来事が起こるのです。
「苦労をしてこその育児」?
私が何気なく液体ミルクを手にした時
「それは何?」と不思議そうに聞いてきた義母。この頃液体ミルクは発売されたばかり。
「これ液体ミルクなんです! 持ち運べるし、このまま飲ませられるから便利なんですよ」私は少し興奮気味に言いました。すると義母は
「最近の人は楽ばかりするのね。昔はそんなものなかったから大変だったわ」とため息。義母は何かあるごとに昔と比べ、
「私の時はこうだった、今の人は楽をしている」と昔話ばかり持ち出します。
「今は紙オムツだってあるじゃない? 私は布おむつを使ってたわ。今は楽ね」何かと楽をしていると決めつけられ、楽しいと思っていた時間は、一気に地獄へと変わりました。
早く帰りたいと思った私は、ごちゃごちゃ言っている義母を尻目にレジへと急ぎました。しかし義母は、レジを打っていた50代くらいの女性店員さんに話しかけます。
「うちの嫁ね、そんな液体ミルクなんか買っちゃって。ほんと恥ずかしい」義母は私を小馬鹿にしたように笑って続けます。
「最近は便利なものばかりですね。若い人は楽ばかり考えて。苦労しなきゃ良い子も育たないのに」私は恥ずかしさと苛立ちでいっぱいで、ただ俯いているだけでした。
すると店員さんが口を開きました。
「ほんと便利になりましたよね。液体ミルクなんか私達の頃にはなかったですもん」店員さんはニコニコしており、この人も義母と同じことを思っているんだと思うと涙が出そうでした。義母は自分に同調してくれているのだと思い嬉しかったのか
「私たちの頃は大変でしたよね。若い人はもっと苦労しなきゃいけないのに!」段々声も大きくなっていきます。
しかし
「お義母さんは、お嫁さんに同じ苦労を味わって欲しいんですか?」という店員さんの突然の言葉に、一瞬張り詰めた空気が流れました。
店員さんの言葉にスカッと
「液体ミルクってどこでも飲ませられるし、常備できるし、栄養も考えられてるし。良いこと尽くめなんですよ。便利なものはどんどん使えば良いんです。わざわざ苦労を選ぶことはないと思いますよ!」店員さんは私の方を見て微笑みました。私は嬉し涙が出そうで、頷くことしかできませんでした。
「なーんてね。他人のおばさんがごめんなさいね」とお茶目に笑う店員さん。義母は少し気まずそうに笑っていました。
今も義母の小言は続いていますが、液体ミルクについては何も言われなくなりました。液体ミルクを使いはじめたときには、私は楽をしているのかなと背徳感もありましたが、店員さんのあの言葉で心が軽くなりました。皆が笑顔でいられることが1番だと思い、便利なものはしっかり活用して、育児を楽しみたいと思います。
(ファンファン福岡公式ライター / こんぺいとう)