ある日の夜、自宅の階下で大きな音がするので、様子を見に行く私。そこには泥酔した夫がいました。千鳥足で、意味不明な言葉を絶叫している夫。その後は豪快なしゃっくりをして就寝。出会って以降、初めて見る夫の醜態に驚きつつも、そこで起きた惨劇?をお話しします。
普段は物静かな夫
夫は180cmの長身で中肉中背。学生時代はスカッシュ、今はマラソンが趣味のスポーツマンです。見た目はあっさりとした特徴のない目鼻立ち。夫の特徴を説明するとき、いつも
「マッチ棒に似ています」とか
「モヤシ似ですね」などと揶揄しているのは内緒のこと。
夫は出会ったときから口数が少ない人で、マシンガンのように話す私とは対照的。交際中は夫のことを「聞き上手」と思っていたのですが、結婚後に「ただ口数が少ないだけの人」だと気付きました。
義父も無口で、義実家を訪れても、義父と一言も会話せずに帰宅するのはいつもの習慣。義母のマシンガントークを聞きながら、「なるほど、夫婦ってバランスが大事なんだ」と妙に納得するのでした。
飲んでも酔わないように心がけ
夫が言うには学生時代の飲み会で、一度ひどく泥酔したことがあったそうです。それ以来、酒席では、節度をわきまえた飲酒を心がけているとのことでした。実際、私が知る限り、多少飲みすぎたとしても決して乱れることのない酔っ払い優等生が、わが夫なのです。
以前から夫に「この日は飲み会」と予告されていた日のことです。子どもたちが寝静まってしばらく経った頃、自宅の階下からドタン! バタン!と大きな音が聞こえてきました。
夫が帰宅したとすぐにわかったのですが、大きな音は止まりません。何ごとかと思い、寝室から出て様子を見に行くと、千鳥足でななめに歩いている最中な夫の姿がありました。
見たことのない夫の姿
「ちょっと、大丈夫!?」と問いかけると、
「だいじょぶ… ではない。うふふ」しまりのない顔で、にやけています。
風呂場へむかった夫の無事を見届けてから、私はひとまず寝室に戻ることにしました。と間もなく、浴室から叫び声が聞こえました。
驚いた私は再度、階下へ様子を見に行きました。すると、
「おぅけぃ!」
「おおおぅうげぃ!」などと、あらゆるアクセントの「OK」を、夫が浴室で絶叫しています。
その様子に私はあ然とするばかり。そこにいたのは、いつもの冷静沈着な夫ではなく、突き抜けて陽気な「OKおじさん」だったからです。
恐れをなした私は、再度寝室に避難し、時間が過ぎるのを待ちました。夫は
「おぅげぃ!」を叫びながら浴室からトイレへ移動し、しばらくすると急に静かになりました。
すると、今度は大音量のしゃっくりが始まりました。数秒おきに繰り出されるそのしゃっくり音は、ドシンドシンと壁にぶつかりながら、階段を上ってこちらに近づいてきます。
何か良からぬことが起きるのではないかと緊張が走る中、夫は向かい側にある自室へと入っていったのでした。そして、そのあと10分ほど大音量しゃっくりが続いたあと、やっとわが家にも静寂が訪れたのでした。
完全なるヤバい人?
夫が静かになったのが深夜だったので、早寝早起きの私はすっかり寝不足。あの夫の様子だと、しばらくはベッドから起き上がれないだろうと思いましたが、予想に反して夫はいつもの時間に起きてきました。具合が悪そうな様子でリビングまでやって、おそるおそる私に
「おれ、昨日なにかした…?」と聞いてきます。
帰宅してから寝るまでの一部始終を詳細に説明すると、夫は
「え!?」と驚いたような顔をしてから
「そ、それ、完全にヤバい人でしょ…」と激しく動揺するのでした。
うろたえる夫に向かって
「悪霊が憑依したのかと思って、恐怖すら覚えたよ」と追い打ちをかけます。すると、この夫婦の会話を横で聞いていた小3の長男と年長の次男が
「なにそれ! おとうさん! やばい!」と大爆笑。
日々の疲れか、ストレスか… 毎日大変なのだろうと察して、泥酔のわけを問い詰めるのはやめました。そして、この事件以降、長男と次男は、夫のいないときに
「おとうさんのマネ~」といって、酔っぱらったふりをしながら
「おぅけぃ!?」と連呼して喜ぶようになってしまいました。
夫が「父の威厳」を回復させるまでは、しばらく時間がかかりそうです。
(ファンファン福岡公式ライター/ダイワ エノ)