【インタビュー】HelloYouth副リーダー、藤咲まりなさんが27日卒業ライブ―[下]

 10月27日に開催されるライブ「余るくらいかわいいって言って?」をもってアイドルグループHelloYouth(ハローユース)を卒業する藤咲まりなさん。これまでの2回は送り出すメンバーとプロデューサーの想いをまとめてきましたが、最後は藤咲まりなさんご本人に語っていただきました。

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アイドルになる夢、諦められず

HelloYouthのメンバーと発表された時の藤咲さん  提供:HelloYouth

 AKB48が好きでアイドルには憧れていました。自分のビジュアルは好きでしたし「私ってかわいくないということはないよね」と正直思ってもいました。高校卒業後は福岡に数多い芸能関係の専門学校で技術や照明、PAを学びたかったのですが、実家が堅く「とにかく四年制大学に行きなさい」と。
 入学した福岡の大学は、モデルやサロンモデルなどをしている学生がいて華やか。その雰囲気に影響されて私も何かしたいなと思い始めました。やっぱりアイドルだよね、と。(契約行為に)親の承諾が必要なくなる二十歳(成人)になるのを待って挑戦を始めました。ある時カラオケに行ったら、今の事務所のオーディションのCMが流れていて。ラインでも応募可能だったのでその場で応募しました。

トキヲイキルpresents「ヨルヲイキルMidnight Party vol1」(2019年9月)  撮影:重村誠志

 選考期間も終わりに近づいた頃、「アイドルではなくタレントとして(ガールズエンターテインメントユニットの)トキヲイキルに入らないか」と誘われました。仲が良かった(大島)向葵や(田仲)笑茉たちと一緒に活動できないことが悲しかったけれど結果発表当日、蓋を開けたらHelloYouthに選ばれてすごくうれしかったです。

モチベーションの違いがつらかった時期も

コロナ禍では無観客ライブの配信も経験した(2020年5月)  撮影:重村誠志

 グループ結成初期やコロナ禍の頃は他のメンバーとのモチベーションとの違いに戸惑いました。私は就活をけってアイドルに賭けていましたが、グループの中には中高生もいました。彼女たちは家族に養われていることもあり、「アイドル」を仕事だけれど仕事として意識しなくてもいい。一方で私は仕事として自立しなくちゃいけない。「仕事」に対する意見の違いや熱量の差がありました。その「差」は1期生とは感じなくなりましたが、3期生には正直まだ少し感じます。

厳しい世界、残った子が強いだけ

ワンマンライブ「早弁ユース」リハーサル(2020年7月)  撮影;重村誠志

 1人抜けました、2人抜けました、ってことは東京のアイドルグループを見ているとよくあることで驚くことではないかな。アイドルは皆さんが考えている以上に大変。「やめた子が悪い」とか「やめた子が弱かった」じゃないんです。「残った子が心臓強かった」と思った方がいいぐらいに厳しい世界です。

 個人的にはメンバーの脱退より3期生が加入して9人に増員された時の方が悩みました。グループの人数が大きく変わると「見え方」「見せ方」が変わり、ファンの見方も変わります。そこにどう対応したらいいのか…。その頃、何人かのファンに「なんだか苦しそうだね」って声をかけられたほどです。

5大都市ツアー「青春ライブ宣言〜HelloYouthの課外授業〜」(2021年5月)  撮影:重村誠志

 この1年ちょっとで3期生は大きく成長しましたが、自分で考える力がまだ足りない。考えているかもしれないけれど、それが一番身近な私たちに伝わっていない。

 結局、大切なのはアクション。ファンを増やす、ファンを減らさない、実力をつけたい、人気になりたい…思っているだけではなく、ちゃんと考えてアクションをおこせるようになったら(大島)向葵が話していたように3期生がグループの主流になります。頑張り方は人それぞれだけれど、「こういうアプローチがあるよ」と3期生に具体的に伝えられなかったことは、心残りです。

理想のHelloYouthを追い求め

「HelloYouth × MAGICAL SPEC 2MAN LIVE」(2021年12月) 撮影:重村誠志

 「なんで私がここまでやらなきゃいけないの」と思うこともありました。でも結局は、私自身がやりたいからなんです。「HelloYouthをこういうふうにしたい」という強い想いがあったから。「大人たちの声」があっても現場を動かすのは私。練習を通して「もの」を作り出すときもこだわりました。やりたいことをやらせてもらったと思います。とにかくHelloYouthに関することで「どうでもいい」「なんでもいい」ということは全くなかったですね。そこにみんながついてきてくれたことには「本当にありがとう」と伝えたいです。

HelloYouth アルバム発売記念ライブ「Nuff said.(ナフ・セッド)」(2022年2月)  撮影:重村誠志

 頑張ってきたのは自分が目指してきた「理想像」に近づくためでしたが、9人になってから「今をアップデートしていく」ことが目的になりました。3期生加入当初に比べて10段階はレベルを上げられたかなと思っています。これから8人になっても、30段階は上に行くと信じています。そのための基礎づくりに少し時間が掛かるとは思うのでファンの皆さんには変わらず後押ししてほしいです。メンバーが常に「売れたい」「盛り上げたい」と強く思って、ファンが同じぐらいの熱量でライブを盛り上げてくれて、ステージとフロアがお互いを高め合える、それが理想です。

自分たちがライブを楽しむ

「青春狂騒曲 in Fukuoka」(2022年5月)  撮影:重村誠志

 公言したことはなかったですが、結成した時に「5周年ライブは単独でZepp Fukuoka」がグループの大目標でした。でもコロナ禍を経てお客さんも減り、口には出さなくなりましたが1期生は心の中では思い続けていました。

 3期生加入後は一つ一つの小さな目標に向かって一歩一歩進んできました。例えば「集客を頑張ります」と公言し、ファンもついてきてくれて、その結果、今夏のアイドルフェスでメインステージ出演を果たせました。その積み重ねが8人体制を完成させていくと思っています。この1年間、ファンの皆さんに盛り上げてもらい、その盛り上げに私たちも「負けないぞ」の気持ちで頑張って、お互いに高め合えたことをメンバーには忘れないでほしいです。

HelloYouth4周年記念ライブ「cheerful beach」(2022年7月)  撮影:重村誠志

 有名なアイドルフェスに呼ばれ、当たり前にメインステージに出演し、東京のアイドルからの認知度も高く、もちろん九州ではナンバーワン。そのくらいの高みを目指してほしいな。そして絶対に忘れてほしくないのは「ファンにライブでニコニコになって帰ってほしい」という気持ちと「自分たちがライブを楽しむ」こと。楽しそうに演じるのは「あり」だし、そんなグループもあるけれど、それは観客に伝わってしまう。HelloYouthでいる以上は自分が楽しむ姿勢を持ち続けてほしいです。

うーん、85点かな

「IQプロジェクライブ in FUKUOKA」(2024年9月)  撮影:重村誠志

 HelloYouthに対する姿勢や取り組み方は自分自身の行動で示せたかなとは思っています。「HelloYouthの藤咲まりな」はよくやったと思います。点数は、うーん、105点と言いたいけれど85点かな。この半年のスパートでの熱量を、結成時から全員が持って頑張っていたら、どこまでいけていたんだろうと、ふと思います。

左端から見える景色を守りたかった

「IQプロジェクトLIVE〜HALLOWEENスペシャル〜」(2024年10月)撮影:重村誠志)

 最初から自分はセンターじゃないことは分かっていました。個人として人気が出るとも思っていなかったです。(大島)向葵、(田仲)笑茉、(小嶋)ひよりの3人が突出していて、追いつけるとも思っていませんでした。
 ある時、端っこにいるメンバーでも存在感があるグループがあることに気がついて「私もそうなりたい」と。アー写の立ち位置はずっと左端。その左端から見るメンバーたちの景色を守りたいと。一番よく見える位置で、みんなを引き立たせる役回りをしながら、そんな私を見てくれている人がファンになってくれて人気者に…という理想を叶えられました。真ん中じゃなくても自分の役割を見つけて、たくさんのファンに応援してもらえました。私にとってうれしい結果です。

 卒業ライブは6年強頑張ってきて初めて主人公になれる時間です。「わぁ、まりまりかわいい」「推してきてよかった」と感じてもらえる時間にしたいです。

【取材後記】

 「突出していた」と藤咲まりなさんが挙げた3人の中で今も残っているのはリーダーの大島向葵さん。大島さんは熱いパフォーマンスで今のHelloYouthを体現しています。直向きな努力に頭が下がりますが、その感覚は天才かもしれないと取材などを通して感じることがあります。天才には支える人が不可欠。ホンダの本田宗一郎には藤沢武夫が、ソニーの盛田昭夫と井深大には太刀川正三郎がいたように、神の配剤として大島向葵さんには藤咲まりなさんがいたのではないか…そんな妄想もよぎります。

 「左端からの景色」を守るため妥協を許さなかった藤咲さんは、有無を言わせぬ絶対的な女帝としてメンバーの目に映った瞬間があるかもしれませんが、ゼロから立ち上げたグループの基礎づくりには必要不可欠な存在でした。

 3期生は長足の進歩を遂げました。グループの勢いも過去最高です。藤咲さんが最後にブースターとして加速させた置き土産でしょう。その余勢を駆ってさらなる高みを目指し飛び立つ8人はいずれ、イカロスのごとき光芒を放つはずです。その姿こそ、HelloYouthが掲げる「青春」。無謀か否かは誰にも分からないのです。

 藤咲まりなさん、約6年3カ月お疲れさまでした。

ライター:重村誠志

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