結婚後、初めて妻の実家へ帰省する時は夫だって緊張するもの。妻としては、家族に夫の良いところをアピールしてもらいたいと願います。うちの不器用な夫も、良いところを見せようと頑張りますが…。「ガレージの屋根の修理をしたい」という父の手伝いをしていると、まさかの事態が起こるのです。
初めての帰省、ひたすら気配を消す夫
結婚して初めての年末年始のことです。夫は初めて私の実家に帰省することになりました。両親に会ったのは、結婚式を含めて3回だけ。不器用な夫は、
「変なことをしてしまったらどうしよう」と不安な様子でした。
沢山の手土産を用意して、特急電車で2時間ほど離れた実家へ向かいました。到着すると、夫は
「ご無沙汰しております!」とガチガチで挨拶。その後も緊張した様子ではありましたが、積極的に仕事の話などをして、しっかりした夫を演じた、滞在初日でした。
次の日。私の姉家族も帰省してきました。人数が増えた安心感からか、この辺りから夫が気配を消し始めます…。
食事中も自ら会話を振ることなく、ニコニコ微笑み、モクモク食べるだけ。積極的に動くことはなく、微笑んでたたずんでいるだけ。
しかし夫の人柄の良さか、嫌味無く、不快感も与えず、180cmの長身でありながら上手に気配を消しており、その能力には私もびっくりしました。しかし、そんな能力に感心している場合ではありません。
ダメ夫、活躍のチャンス到来!
「ちょっと、気配消すグランプリで優勝するために来たんじゃないよ。初めての帰省なんだから、もうちょっと積極的に動いていこう!」と、私はまるで中学部活の顧問のように、夫に声を掛けました。
そんな時、父から
「ガレージの屋根の修理をしたいのだけど、〇〇君は背が高いから、手伝って欲しい」と声がかかりました。これぞ長身を生かすチャンス! 夫も
「頑張らせて頂きます!」と気合の入った返事です。
夫は梯子に登り、父の指示に従い、作業を進めます。しかし、なにせ不器用な夫。波板の裏表を間違えたり、隙間があいていたり、スムーズに進みません。私の父も苦笑いを浮かべます。
そんな時、出掛けていた私の姉が戻ってきました。
「みんなで屋根の修理してるの? 私も手伝おうか?」言うと同時に、猫のようにさっとガレージ横のブロック塀に飛び乗りました。
そして、状況を知らない姉は
「〇〇さんは休んで下さい。続きは私がしますから!」と言って、夫の手から波板を取り、ぱぱっと綺麗に並べてしまいました。続いて、金具で手際良く波板の固定も行い、あっという間に仕上げてしまいました。
そして
「工具片付けとくね、みんなお疲れ様~」と言い残し、風のように去って行ったのでした。
夫は梯子に登ったまま、ビックリした表情で、再び気配を消していました。父は
「○○君もありがとうね」と少し気まずそうに声を掛けます。夫は
「お義姉さん、すごいですね! お役に立てずすみません」と申し訳なさそうに答えたのでした。
姉も悪気が無かっただけに、仕方ないのですが、夫は見事にお手柄を持っていかれてしまったのです。
家族からの評価は?
最終日。夫は私の母から
「〇〇君って、大きいけど、狭い部屋でも全然圧迫感を感じないわ~、すごいね!」と気配を消す能力を褒められていました。
「ありがとうございます!」と夫も嬉しそう。
帰りの電車の中で、夫は
「屋根の修理、お義姉さん、ほんとにすごかったなぁ~。恥ずかしかったわ~」と、思い出して笑っていました。夫は活躍できませんでしたが、私の家族から好かれたようなので、これで良しとした帰省の思い出です。
(ファンファン福岡公式ライター / やすさき きょうこ)