「怪談ナイト」福岡公演が待ち遠しい、稲川淳二さんインタビュー

 稲川淳二さん(72)の全国公演「怪談ナイト」福岡公演が10月9日(金)~11日(日)、福岡市・天神の都久志会館で開催されます。新型コロナウイルスの影響で公演が中止になった会場もある中、福岡公演への意気込みや怪談に対する思いについて聞きました。

―「怪談ナイト」は28年目を迎えます。  怪談の魅力を一言で表現するのはすごく難しい。笑えるし感動するし泣ける。怖いだけじゃないんです。ジェットコースターのようなものですね。誰かの「キャーッ」という悲鳴につられて声を出して楽しむといったような。  こういった時期ですがお客さんと一緒に楽しめる、お客さんに「今年も帰ってきたなあ」と思ってもらえる時間にしたいですね。  このツアー自体は28年目ですが、もっと昔、小さい資料館みたいなところでやっていた頃は「怪談って大人数でやるものじゃない」と思っていました。クラスの何人かで集まって、修学旅行の夜とかに盛り上がるようなイメージですね。大きな会場でできるのかなと思ったこともありましたが、それがやってみたら怪談はどこでもできる。

出典:スリーオクロック

―怪談とは?  マスコミの皆さんから“稲川怪談”と呼んでもらうことも増えたのですが、私がお話するのは怖いだけの話じゃない。優しい話も多いんです。怪談はホラーとは違う。誰も今では「ジャパニーズホラー」とは言わなくなったでしょう? ホラーって脅かすだけなんですよ。怪談は優しい。

―これまでで印象に残っている公演は。  プロ野球・千葉ロッテマリーンズの試合が終わった後に怪談をするというイベントがあったのですが、なかなか印象深かったです。試合が終わって花火もバーンと上がって盛り上がっているところに自分が登場する。千葉ロッテの選手たちも、負けたんですけど残って聞いてくれているんですよ。こんなに大人数いるのにシーンとなって、いつもと同じ感覚で話を聞いてくれて、うれしかったですね。  ロックフェスとかでも話しますが、(自分が)出てきた瞬間はワーッと盛り上がるのに、怪談が始まるとシーンとなるのもいい。怖い話だけじゃなく、優しい話や感動する話があるから、すすり泣く声なども聞こえてきます。

出典:スリーオクロック

―稲川さんが怪談にハマったきっかけは。  よく聞かれるのですが、ハマってはいないんですよ。子どもの頃から怪談の中にいたんです。祖母や母が怪談がうまくって!  昔は今ほど娯楽が多くなくて、近所の人間が家に集まると、どこからともなく怪談が始まるんです。「わー怖い!」って近所のお姉ちゃんとかがワーワー騒ぐのが楽しかったなあ。怪談って誰しも2、3個は知っているでしょう? 「耳なし芳一」とか。それは怪談が生活の中にあるから。血がドバーッとかそういう怖さじゃない。「ホラー」とは違います。もっと民俗学的で人類学的です。日本人が持っている思いみたいなものですね。

出典:スリーオクロック

―福岡にまつわる“怪談”はありますか。  「犬鳴峠」の話は有名ですよね。実は私が本で紹介して、そこから一気に有名になったんです。私自身何度も訪れてるのですが、あそこは「本物」です。  テレビ局のスタッフと訪れた時はタクシー事故に逢いました。その話を知り合いのプロデューサーにすると、結構本気のトーンで怒られましたね。「あそこは本当に行ったらだめよ」って。「なんで」って聞いたら、彼の友人がね、犬鳴トンネルの中で変死してるんですって。

出典:スリーオクロック

―知り合いに起こった実際の話として聞くと、より一層怖いですね。  でもそうやって、人がいるから怪談が生まれるんですよ。人を介して広がっていく。さっき怪談は民俗学といったけど考古学みたいとも言えますね。掘れば掘るほど出てくる。発掘作業とかも最初は「なんだこれ?」って破片が、掘っていくごとに出てきて、つながっていきますよね。「これは壺だったんだ!」って。私が話をまとめるときもそういう感じで、断片的に聞いた話をどんどんつなげていく感じです。そのうち、いろんなところで聞いた不気味な話が実態を持ちだす。この現象を起こしていた正体はこいつだったんだ、みたいなね。

―今この状況で怪談がもたらす効果とは。  時代や社会状況が変わっても怪談は変わらない。根底にある心が変わらないから、みんな懐かしく感じます。シチュエーションは公衆電話から携帯電話に変化しますけどね(笑)。  今回の自粛期間中、皆さんからの手紙がすごくうれしかったですね。自分の身内が自分のことを心配するのは分かるけど、見ず知らずの他人の心配までしてくれるなんてね。だから自分はいつも通り、みなさんが夏祭り気分になれるような公演を届けたいと思います。

出典:スリーオクロック

―今年の怪談について。  去年披露した話は自分でも褒めたくなるほど良い話でした。周りの皆さんも絶賛してくれて。だから「今年は超えられないかもしれない」と思っていたんですけど、893. 5倍くらい良い話ができちゃった。この話を聞いたら、きっと幼い頃の自分をいとおしく思うような、そんな優しくて味のある話です。夏休みの夜に、おじいちゃんの家の縁側で聞いているみたいな気持ちで来てください。  福岡の公演がある10月の夜は、すごく怪談向きですよ。真夏の夜よりも夕方くらいから涼しくなる、どこか寂しい気持ちにもなる秋の夜、お待ちしています。

※この記事内容は公開日時点での情報です。

目次
閉じる