イヤイヤ期怪獣こと2歳息子のハル君との帰省。なんてったってイヤイヤ期、なんでも嫌だしなんでも自分でやりたいお年頃です。色々な人に助けられながら帰省した、ハル君と母の2人旅の一部始終をお届けします。
友人の結婚式のため帰省
「地元で結婚式を挙げます」友人からそんな一報が入ったのは約1年前のことでした。
ついでに実家に孫の顔を見せようと、息子と車での帰省を決めました。
ところが式の1カ月前に夫から
「ごめん、出張で車をどうしても使わなきゃいけなくて…」と悲報が。自宅から実家までは車で約1時間半、公共交通機関を利用すると約3時間、倍も違うのです。私は腹を括り、公共交通機関で帰省する準備に勤しみました。
バスに大興奮!やってくる誘惑
帰省当日、まずは自宅からバスに乗ります。
「ママ、バスきた!」私は大きくうなずき息子の手を取ってステップを上りました。幸い車内はガラガラ、ほっと胸を撫で下ろし席に座りました。
息子はじっと窓の外を眺めます。まもなく終点に到着という時
「ピンポンおす」ボソッと声がしました。
「降りるのは終点だからピンポンは押さないよ」乗る前にした会話は覚えているはずもなく
「ハルくん、ピンポンおす!」と引きません。
必死に宥めていると、前の方に座っていた年配の方が運転手さんに
「押して平気ですよね?」と聞いてくれたのです。
運転手さんも
「ピンポン押していいよ」と車内放送で伝えてくれました。息子はパッと笑顔になり小さな指でボタンを押しました。「ピンポン、次停まります」助かった、と噛み締めるように聞き、年配の方と運転手さんにお礼をして無事に降車しました。
息子と電車と運転手
そしてついに、電車の駅のホームに到着です。乗り物好きな息子のために電車を何度か見送り、
「乗ろうか」と声をかけると
「こわい」と息子。どうやら一つ前に通過した特急列車が速くて怖くなったよう。
「ハル君が乗るのはもっとゆっくりで楽しいよ」
「見て! あそこのお友だちもかっこよく乗ってるよ!」とイヤと言う前に私の乏しい語彙力で話しかけ続けます。
息子がうーんと考えている隙に大好きなおもちゃ作戦で追い込みです。この日のために準備した新しいトミカや、連結できる手持ちサイズのトーマスと仲間たちが満を持して登場しました。おそらく後者が決め手でしょう。両手におもちゃで乗車、電車は無事出発しました。
ガタンゴトンとスピードを上げる電車に息子は上機嫌、先ほどの怯えはどこへやら。
「ふみきり! こうえん!」と一瞬の景色の中に何かを見つけては大声で反応するため、母はヒヤヒヤです。
「小さい声でね」と幾度となく繰り返し乗り換え駅の到着を祈るばかりでした。
乗り換えはベビーカーがあるためエレベーターを利用します。同じくベビーカー連れの父母に勝手に共闘している気持ちを抱きながら、何度か乗り換えを繰り返し最後の電車に乗り込みました。運転手さんが目の前の車両、息子の盛り上がりはピークに達します。
「うんてしゅさん!」と目を輝かせ自分も運転しているかのように真剣に前を見つめます。
ついに終点、帰省先の最寄駅に到着です。長旅ももうすぐ終わりだと思っていると…
「おりたくない」の一言が。息子はしゃがみ込み石の如く動きません。
「ばあばが待ってるよ」と降りるよう促しますが、素直に来てくれません…。
すると私の背後から
「ぼく、ちょっとおいで」と声がかかりました。先ほどまで前にいた運転手さんです。息子は驚きつつも手招きされた方へと下車します。運転手さんの手には鉄道会社のマスコットキャラのシールが。
「これあげるからね、また乗りにおいで」と息子の頭にポンと手を置き、颯爽と去って行きました。
「うんてしゅさんありがとう!」と息子が手を振るとこちらを振り向き、仏のような笑顔で手を振ってくれました。
戦いは終わらない
たくさんの人に助けられ私と息子の長旅は幕を閉じました。友人の結婚式には無事に参列し晴れ姿を見ることができ、とても幸せな時間を過ごすことができました。実家にも半年ぶりに息子を連れて帰ったため、実母と実父もとても喜んでいました。
しかし、うちに帰るまでがなんとやら… 今から帰りの電車が待っています。私と息子の戦いはまだまだ続くのでした…。
(ファンファン福岡公式ライター/「もずく」)