「家を建てる際の土地選びのポイント」といえば、立地や治安、学区や便利さなどが思い浮かびます。でも見逃せないポイントがもうひとつ。それはズバリ「お祭り事情」。今回は、わが家のお祭り体験談をお話したいと思います。
丘の上でスタートした新生活

わが家は、丘を切り拓いた土地に建売住宅や注文住宅が並ぶ、いわゆる新興住宅地にある一軒家。
近くに駅や公園もあり、学校も徒歩圏内という便利な立地です。
そして、丘の下には代々この地に暮らしている方々が立派なお宅を構えています。子どもと散歩をしていると
「持ってって~」と畑の野菜や果物を頂くことも。みなさん
「子どもが増えて嬉しいわ」
「賑やかでいいね」とニコニコです。
ところが、頂く野菜が夏野菜から秋野菜に変わる頃、お喋りの内容にちょっとした変化を感じるようになったのです。
住民たちのお祭りへの高揚感

「お子さん1年生? 乗り子だね!」
「あら1年生? お神輿楽しみね!」
「氏子さん頑張って!」地元の人がほぼ100%口にするワード、「お祭り」「お神輿」そして「乗り子」に「氏子」…。どうやらこの地域では、年に一度各地区それぞれがお神輿を出す一大イベントが行われるらしいのです。知らなかった!
急いで同じ丘に住むママ友に
「丘の下とは自治会も別だし、参加は自由よね?」と尋ねると、
「それがさ、子ども会に入ったじゃん? 子ども会はお祭り強制参加で、特に1年生はお神輿にのって太鼓叩くんだって」
準備は1週間前から始まり、お祭りの2日間は子どもたちは朝から夜まで友達と一緒に過ごし、大人たちは神輿を担ぎながら宴を楽しむようなのです。
驚きの「暗黙のルール」

お祭りの約1週間前に
「1年生ママ達〜、これ読んでおいてね!」と先輩ママから子ども会ノートを渡されました。そこに記されていた『謎のルール』に私たちは戸惑うことに。例えば
・乗り子の親はジュースとビールをケースで差し入れする
・お揃いのTシャツと足袋を作る
・男の子の髪型はツーブロックかソフトモヒカンで統一
内心、突っ込みながら一緒にノートを見ていたママ友たちと顔を見合わせます。さらに驚いたのが食事準備のルールとその理由。
・食事は手作りで既成のお弁当禁止→手作りは心がこもっている
・おにぎりの中身は鮭・昆布→歴代そうしてきた
・煮物の野菜は3×3×3cmに切ること→見栄えがキレイ
・男性と子どもの食事が先、女性は最後にキッチンで立って食べる→お酌やお世話のため
・当日朝は4時半集合でお米を炊く→ご飯の炊き加減を均一にする
ノートを読み終え、
「こんなのやれるかー!」となった1年生ママ。みんなで対策を話し合い、お祭り前日の集まりで、役員ママの
「明日の本番よろしくね。何か質問ある?」という言葉に被せる勢いで
「あります!!」と手を挙げました。
「食事についてみんなの負担が減る方法に変えていきませんか?」とジャブ。
「みんな仕事もありますし… 土日どちらか1日をお弁当頼んで、一緒に食事すると片付けも早く終わりますね」とママ友A。
一瞬凍りつく空気を感じながらも、
「野菜も多少不揃いでも火が通ってれば食べられますし」
「なんならもう各自10個ずつ好きな具材でおにぎり作ってきちゃいます?」とママ友B・Cが続きます。
「… っていうのを来年に向けて、今年から少しずつ変えませんか」と牽制。凍りついた空気でしたが、「来年に向けて」の一言で和み始め
「確かに食中毒の心配もあるし」
「早く解散だと助かる~」
「今年はみんなで食事して、2日目お弁当頼む?」と先輩ママ達のまんざらでもない様子を見て、1年生ママ達はひと安心。
楽しむためにはどう向き合う?

今回の一件でわかったように、地域のお祭りには楽しさだけでなく独自のルールや負担となる代々の習慣があります。しかし、うまく交渉することでお互い気持ちよく、かつ1年生ママたちの要望もある程度聞き入れてもらうことができました。
幼い頃、友達と一緒にお祭りの出店を回ってお面やりんご飴を買ったり、お神輿に乗った思い出は、子どもにとって一生の宝物です。地域の文化を尊重しつつ、意見を交わし、お互い納得出来る方法に改良や改善をし、理解を深めることが地域で楽しく暮らすことに繋がることを学びました。
(ファンファン福岡公式ライター/さくらえ)


