【ほっこりする話】難しい引越しの挨拶 貰ったゴーヤはお返しなのか?

引越しの時の挨拶、皆さんはどうしてますか? 感染症や不審者など、気を使うご時世になり難しいですよね。これは私が引っ越した時に悩んだ挨拶のお話です。

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引っ越しと挨拶

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 ことの始まりは夫の転勤でした。
 「来月から都内に異動が決まったんだ」と聞き、生後半年の息子を抱えて家族3人で地方から東京の端の方へ引っ越すことになりました。物件も無事に決まり引っ越し当日、日曜のお昼過ぎに新居へ到着。

 子どもが小さく迷惑をかけるだろうと、両隣と下の部屋へ挨拶へ行きました。食べ物だと好みがあるので無難な洗剤を手に向かいます。下の部屋、右隣の部屋の人は
 「うちも子どもがいるから気にしないで」と言ってくれ、優しげな印象。

 最後に左隣の部屋のピンポンを鳴らすとおばあさんが出てきました。
 「越してきた◯◯と申します。子どもがいるのでご迷惑をおかけしますが、何かあればすぐ仰ってください」と挨拶をすると
 「あらどうも」とだけ言い洗剤を受け取ってそそくさとドアを閉めました。あまり子どもが好きじゃないのかも、迷惑をかけないように騒音に気をつけなきゃと気を引き締めて部屋に戻りました。

突然おばあさんがやって来る

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 後日荷解きが終わった頃、家のチャイムがなりました。宅急便かな? と出てみると左隣のおばあさんの姿が。バタバタしてうるさかったかなと焦って出てみると
 「これどうぞ」と袋に入ったゴーヤを2つくれました。

 「あの、これって…」と顔を上げるとバタンと左隣の部屋のドアが閉まりました。お礼を言う間もなくその時は帰ってしまいました。

お返しを買うべきか…

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 自分の畑で取れたような、形は少し歪だけど太くて青々しい立派なゴーヤ。これはこの前のご挨拶のお礼をわざわざくれたのだろうか。それともお裾分けのようなものなのだろうか。後者の場合、お礼をするべきだが…。と迷いました。

 次の日、何も渡さないよりは良いだろうと車で30分ほどの百貨店に行くことにしました。部屋を出ると階段の下で、先ほどのおばあさんと同じマンションであろう人が話していました。
 「こんにちは」と声をかけるとおばあさんは会釈、もう1人は
 「こんにちは〜」と返してくれました。

 百貨店に到着し何軒かお店を見てみても、いまいちピンとくるものがありません。あまりセンスがないものを渡して変な噂が流れても嫌だし…。と結局何も買えずに帰りました。翌週、遠出をする機会がありこれはチャンスとお土産ショップに駆け込みました。ここでもやはり悩みましたが、夏だったこともありお高めのフルーツゼリーを購入。

 隣のおばあさんの家を訪ねます。「ピンポン」勝負を挑むような気持ちで鳴らしたインターホン、しばらくしておばあさんが出てきました。
 「こ、こんにちは! 先日いただいたゴーヤとても美味しかったです、ありがとうございます!! これはささやかなお礼なんですが良かったら受け取ってください!!」捲し立てるようにおばあさんにゼリーを押し付けました。おばあさんはこちらをチラッと見ると袋を受け取り中を覗きました。

まさかの反応が?!

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 すると突然、「ふふっ」とおばあさんが笑い言いました。
 「この前のゴーヤはご挨拶のお礼だったのよ、これじゃあお返しのお返しじゃないの」そっちだったかー! と心の中で叫びつつも、無愛想だと思っていたおばあさんの笑顔に安心し緊張が解けました。

 おばあさんはかなり人見知りということがわかり、これを機にお互いの部屋でお茶会をする仲になりました。今でもお返しのお返しは笑い話になっています。

 こんなご時世なので引っ越しのご挨拶って余計に難しいですよね。それでも初めての東京暮らしだった私たち家族は、地域の行事情報などたくさんのことを教えてもらい、楽しく新生活を過ごすことができています。ご近所付き合いはいつの時代も大事だなと思った出来事でした。

(ファンファン福岡公式ライター/「もずく」)

※この記事内容は公開日時点での情報です。

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