食欲の秋と読書の秋をいっぺんに満たす! 一石二鳥本特集(前編)

 少しずつ過ごしやすい気候の日も増え、身近に秋を感じる機会も多くなってきました。今年はまだコロナ禍の影響もあり、「食欲の秋」を外食で感じることは難しいですが、それなら「読書の秋」で食欲を満たしてみませんか? 古今東西の作品に出てくるグルメを「読んで」おなかいっぱいになれる「一石二鳥本」11冊を紹介します♪(前編)

今回紹介してくれたのは…

ジュンク堂書店 福岡店 副店長 彌益陽子さん
実用書担当 出口直美さん
同担当 高木優一郎さん

目次

命も縮めかねない悪魔的なうまさ「バター醤油ごはん」

『BUTTER』柚木麻子/著 新潮文庫(900円+税)

 週刊誌記者の町田里佳は、殺人犯・梶井真奈子との面会を取りつけますが、そこで梶井からバターのおいしさを理解するように命じられます。梶井が里佳に語る料理の描写は滑らかで官能的。特にシンプルな「バター醤油(しょうゆ)ごはん」の描写にはたまらず口の中が潤います! 命を縮めかねない悪魔的なうまさ、そして物語のおもしろさをぜひ味わってみて。

「新聞紙でくるんだ弁当」は想像だけで既にうまい!

『かぼちゃを塩で煮る』牧野伊三夫/著 幻冬舎文庫(580円+税)

 画家・牧野伊三夫さんの食エッセー。コンビーフのホットサンドやとろとろの粥(かゆ)、おでんなど、体に染み入るようなうまさが詰まった1冊ですが、特に印象深いのは「飯やソーセージなどを詰めた弁当箱を新聞紙でくるみ、ぱちんと輪ゴムでかければ妙にうまそうに見える」というエピソード。弁当を新聞紙でくるんだ経験はなくとも、想像した瞬間「わかる!」とつい膝を打ってしまいます。

ビストロで味わう身近なミステリーと「フレンチ」

『タルト・タタンの夢』近藤史恵/著 創元推理文庫(700円+税)

 小さなフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」を舞台にした、“人が死なないミステリー”。テンポよく読める連作短編集で、「常連の西田さんが体調を崩したわけ」や「彼女はなぜ最低のカヌレを作ったのか」など、悩める人々の謎をシェフが鮮やかに解いていきます。知らない料理が出てきても味を想像しながらあっという間に読み終えてしまいます。

「根深汁」の素朴なおいしさが、ぼくとつとした青年とマッチ

『剣客商売』池波正太郎/著 新潮文庫(630円+税)

 「根深(ねぶか)汁」とは、具がネギだけのみそ汁のことで、ぼくとつとした青年・大治郎があつあつの根深汁をふぅふぅ言いながら食べているシーンは印象的。想像するだけで喉が鳴ります。マネしてネギのみそ汁をおかずに白飯を食べると、いつも食べているはずの味も特別おいしく感じられますよ。

宇宙の中心でビッグバン見物のお供に「ハンバーガー」を

『宇宙の果てのレストラン』ダグラス・アダムス/著、安原和見/訳 河出文庫(850円+税)

 ある日突然やってきた宇宙船団が「銀河ハイウェイ建設工事の立ち退き期限が過ぎたので、工事を開始する」という理由で地球を破壊。数少ない生き残りの地球人・アーサーが着いた「宇宙の果てのレストラン」では、未来へ行き宇宙の終末を見ながら料理を味わえます。反対に“宇宙の中心”にあるのは、過去に戻りビッグバンを見ながらハンバーガーが食べられる「ビッグバン・バーガーバー」。壮大過ぎる状況でのハンバーガー、一体どんな味がするのでしょう!

大量発生の蜂と「ジャムサンド」の関係とは!?

『ジャイアント・ジャム・サンド』ジョン・ヴァーノン・ロード/作・絵、安西 徹雄/訳 アリス館(1,300円+税)

 大量発生した蜂をつかまえるため、村の人々が考えたまさかの方法とは…!?(※虫が苦手な人はご注意を!)
 小山のように大きな食パンに、トラクターを使って塗りたくられた、たっぷりのバターと真っ赤なジャム。思わず読み上げたくなるような小気味のよい文章も楽しい、大きな食べ物好きをわくわくさせてくれる、夢のような絵本です。

いつまでも食べられそうな「常夜鍋」

『いのまま』オカヤイヅミ/著 芳文社(600円+税)

 夜中にフルーツサンドを作ったりホットケーキを焼いてみたりと、窮屈な毎日の中でふと、“大人であることの自由さ”を思い出させてくれる食エッセーコミック。おすすめの「常夜鍋」は、ホウレンソウと豚バラスライスだけのシンプルな鍋。さっと湯にくぐらせたホウレンソウと豚バラを、大根おろしとごま油、しょうゆ、または、しょうゆとレモンのたれで味わいます。ああ、いつまでも食べ続けてしまいそう!

登山のための「オリジナル行動食」はどこで食べてもうまい

『山と食欲と私③』信濃川日出雄/著 BUNCH COMICS(520円+税)

 単独登山を愛する主人公の鮎美が山で食べているご飯が最高においしそうで、(山の上でのご飯目的で)登山したくなります。新田次郎作「孤高の人」に出てくる「甘納豆とから揚げの乾し小魚を交互に出してぼりぼり食べ」るシーンに触発され、登山時のカロリー補給に必要な「行動食」をオリジナル(食べたい菓子の全部入り)で作るエピソードは、オチも最高。山に登らずとも、ついまねして作りたくなる1袋になっています。

ジュンク堂書店 福岡店

住所 中央区大名1-15-1 天神西通りスクエア1~3階
電話 092-738-3322

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