食欲の秋と読書の秋をいっぺんに満たす! 一石二鳥本特集(後編)

 少しずつ過ごしやすい気候の日も増え、身近に秋を感じる機会も多くなってきました。今年はまだコロナ禍の影響もあり、「食欲の秋」を外食で感じることは難しいですが、それなら「読書の秋」で食欲を満たしてみませんか? 古今東西の作品に出てくるグルメを「読んで」おなかいっぱいになれる「一石二鳥本」11冊を紹介します♪(後編)

今回紹介してくれたのは…

ジュンク堂書店 福岡店 副店長 彌益陽子さん
実用書担当 出口直美さん
同担当 高木優一郎さん

目次

父ちゃんから息子へ向けた「ボロネーゼ」

『父ちゃんの料理教室』辻仁成/著 大和書房(1,500円+税)

 作家・辻仁成が17歳の息子に向けた、語り口調でつづったレシピ付き料理エッセー。表紙にもなっている「ボロネーゼ」は、ひき肉のうま味と野菜の甘味、ワインの香りが一体になったパスタ。もちもちの麺とソースを少しずつ絡ませながら食べるところを想像するだけで、今にもおなかが鳴りそうです。普段料理をしない人でも作ってみようかな、という気持ちが湧く、食への思い、息子への思いにあふれた1冊です。

老舗餅店の “もたもたもた”としたやわらかな「三色餅」

『MOGU MOGU 食べ歩きくま②』ナガノ/著 講談社(1,000円+税)

 イラストレーター・漫画家のナガノさんが描く、おいしいものを自由な空気感で食レポするコミック。おすすめは、仙台へ遊びに行った際出合った「村上屋餅店」の「三色餅」。「くるみ」、「づんだ」、「ごま」の3種類が味わえます。絶妙な咀嚼(そしゃく)音の描写が特徴的で、つやつやと輝いた餅は、想像以上にやわらかく、“もたもたもた”とした歯ごたえ。箸休めに漬物の“しょっぱみ”を味わって。

「ポテトサラダ」は「マヨネーズたっぷり」で

『おいしいものでできている』稲田俊輔/著 リトルモア(1,600円+税)

 「自称変態料理人」の稲田俊輔さん初のエッセー集。“おいしいものを食べること”が常軌を逸して好きな人物のつづった本著は、情熱にあふれていて「本当においしいもの」に対する描写がとにかくうまい! 「ポテトサラダ」に対する「ヘルシーではだめ、マヨネーズたっぷりがうれしい」という一文には、食事に対する大きな愛を感じ、読後はじんわりと幸せな気持ちで満たしてくれます。

ファンファン福岡編集部おすすめの“おいしい本”

 編集部員がチョイスした6冊もご賞味ください!

『彼女のこんだて帖』角田光代/著 講談社文庫(620円+税)

 調理過程や香りの描写が細やかで、失恋したばかりの女性が自分のために作る肉汁たっぷりの「ラムステーキ」が印象的。連作短編集なので自分に似た主人公を探しながら読むのも楽しい1冊です。

『3月のライオン 8巻』羽海野チカ/著 白泉社(486円+税)

 将棋を題材にした人気漫画ですが、出てくるご飯全てがとにかくおいしそう。その中でも「川本家の豚バラのせ丼」はトロットロの角煮と半熟卵に喉が鳴ります。手間暇かけて作られた、家族のための1杯です。

『泣きたくなるような青空』吉田修一/著 集英社文庫(520円+税)

 ANA機内誌連載をまとめたエッセー。著者行きつけの中華料理店を描いた一編「中華料理店の王さん」がおすすめ。“町の中華料理店”の良さが存分に描かれ、自分にとっての「王さんの店」を見つけたくなります。

『たのしいムーミン一家[新版]』トーベ・ヤンソン/著、山室静/訳 講談社(1,500円+税)

 シリーズの中でも特にこの作品は、「きいちごのジュース」や「マメルク(架空の巨大魚)の丸焼き」など、出てくる食べ物がおいしそう。最後に村を挙げての大パーティーがあるのも楽しいポイントです。

『その「おこだわり」、俺にもくれよ‼ 1巻』清野とおる/著 講談社(650円+税)

 スーパーの「ポテトサラダ」と「金麦」の相性の良さに魅了された男性。箸の先端につけたポテトサラダを口に入れ、金麦を3口飲むという黄金律を発見。読後気づけばまねしてしまう、吸引力のある1冊です。

『マスカレード・ナイト』東野圭吾/著 集英社文庫(890円+税)

 一流ホテル「ホテル・コルテシア東京」を舞台にしたミステリー。大みそかの夜開かれる仮面舞踏会で用意された黄金色のシャンパンタワーは、一度は味わってみたいと思わせる華やかさです。

ジュンク堂書店 福岡店

住所 中央区大名1-15-1 天神西通りスクエア1~3階
電話 092-738-3322

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※この記事内容は公開日時点での情報です。

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「ファンファン福岡/サブクリップ」(福岡都市圏内配布、福岡市地下鉄駅駅設置)紙面に掲載した話題、編集部員が突撃取材した話題などを紹介します!

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