「ぶ、ぶつかる!」道路が凍結した朝の運転は命がけ<雪国の宿命>

関東から新潟に移住して4年、毎年冬が近づくと憂鬱になることがあります。それが雪道の運転。どうしても必要な時以外は乗らないようにしているのですが、毎日の保育園の送迎は欠かせません。これは雪国生活4年目にして私が初めて経験した、とある日の恐怖の体験です。

凍結している道路

 大雪が降るというときは、大体ニュースになり身構えるのですが、この日は予想に反して雪は積もっていませんでした。「よし! ラッキー! これで今日の運転も乗り切れる!」と、一安心で朝の準備を進めました。出発時間になり、テレビを見ている子どもを急かして外にでます。

 マンションの玄関を出ると、「おや…?」雪は積もっていないものの、地面が凍結していることに気づきました。一度安心した気持ちはなくなり、私にはまた雪道運転の不安が襲ってきます。とはいえ、出発しないわけにはいきません。軽自動車のうえ、四駆ではない私の車。乗用車5台分ほどの車間を空けて最高速度20キロで慎重に運転していきます。

 こんな日でも雪道に慣れている車は速度が速く、車間を詰められてしまうこともありました。ですがほとんどの車はかなり慎重に運転しているので、私も気持ちを落ち着かせてゆっくり自分のペースを貫きます。

効かないブレーキ

写真AC

 慎重に慎重を重ねて運転し、なんとか保育園前の大きな交差点にたどり着きました。目の前の信号は赤。「凍結しているかもしれないし、そろそろブレーキを踏み始めよう。」余裕をもってゆっくりとブレーキを踏みましたが速度は落ちません…。

 そして「ゴゴゴゴゴ」という音を立てながら、前の車に向かって超低速で前進を続けます。前には黒いワゴン車。もう頭の中はパニック。ブレーキを全力で踏んでも、一向に停まる気配はありません。

ぶつかる覚悟を決める

写真AC

 これは数秒の出来事なのですが、当時はとてもスローに感じました。「ハンドルを切ると対向車にぶつかるかな」「最悪ぶつかっても大事故にはならないスピードだよな」「車から飛び出して手で止めるべき?」などと、意味の分からないところに思考が向かうほど、冷静さを欠いていたのをはっきりと覚えています。

 そして最後には、「ぶつかっても擦るくらいだろうから、最悪謝ろう」と、ぶつかることを前提に覚悟を決めていました。

き、奇跡が…

 相変わらず低速で前進し続ける私の車。前に停まっていたワゴン車が、私の車が近づいていることに気づいて前の車との車間を詰めるため少し前進しました。とはいえその前にも車がいるので、進めるのは数十センチ~1メートル程度。

 「お願い! お願い!」何かにすがるような気持ちで、全体重を乗せてブレーキを踏み続けます。
 「やばいやばい!」わたしの声に、娘も異変に気付きます。
 「ママぶつかるよ!」娘も慌て始めますが、それに構っている暇などありません。その間も車は前進し続けます。

 ここで、まさかの奇跡が起きたのです…! 目の前の信号が青に変わり1台目の車が前進、前のワゴン車もそのまま流れで前進。「えっいける? いけた? セーフ…?」間一髪、本当にギリギリで衝突を回避できました。

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 「よかった! 危なかったー! ぶつかるかと思ったー!」と、安堵から独り言が止まらない私に、
 「何やってるのママ」と呆れている娘。全身に冷や汗をかき、ブレーキを踏んでいた足はプルプル状態。やっとの思いで保育園の駐車場に停車しました。

 その後は一旦落ち着くまで待ち、ブレーキを使わなくても停まれるくらいアクセルは最小限に踏み、さらに慎重に運転して無事帰宅しました。それ以降この件がトラウマとなり、晴れている日でも「ブレーキ効くよね…?」と毎回少しビビりながら運転しています。

 雪道の運転は命がけ。4回目の冬でも慣れないのだから、きっとここで暮らす限り私は凍結の恐怖に怯えることになるのでしょう。

(ファンファン福岡公式ライター/aoyama)

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