子どもの偏食、原因や影響は?”きらい”や”苦手”を克服するための工夫も解説

7歳・9歳の息子を持つママライター、永野栄里子です。

幼児期に限らず、幅広い年齢の子どもの偏食に悩む家庭は一定数存在するのではないでしょうか。しかし、”きらい”や”苦手”を思うのには、何かしらの原因があるかもしれません。

今回は、子どもの偏食の原因や、心身への影響を解説します。克服に向けた工夫も知り、楽しい「食育」を実現しましょう。

偏食の特徴

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まずは、「偏食」の定義を確認しましょう。どのラインからが偏食なのか、好き嫌いとの違いはあるのかを知ると、「うちの子、偏食ではないのかも…?」という新たな事実に気づくかもしれません。

偏食とは

「偏食」とは、特定の食品ばかりを好んで食べることをいいます。苦手なもの、食べられないものが多く、決まったものしか口にしない状況が一定期間続いている場合は、偏食だといえます。

偏食の特徴

偏食の特徴はさまざまですが、偏食の人に多く見られる特徴には以下のようなものがあります。

・苦手なものを吐き出す、口に入れるとえずく
・特定の食品に強い拒否反応を示す
・咀嚼や飲み込むことが難しい
・新しい食べ物に抵抗感がある など

このような状況が続くと、保護者も「食べられるものだけを食べさせておこう」と考えてしまうかもしれませんが、偏食が続くと心身に悪影響が及ぶこともあるため注意が必要です。具体的な影響については、後述します。

偏食と「好き嫌い」は違う?

「偏食」と「好き嫌い」は同じだと思われがちですが、「好き嫌い」は単なる好みです。単純に「苦手」「好きではない」と感じる程度で、我慢すれば食べられるという場合は、偏食ではなく好き嫌いだといえます。

また、苦手に感じる食品が数種類の食品に限られる、何度か食べるうちに慣れる、成長とともに食べられるようになるというのも、好き嫌いの特徴です。

一方の偏食は、食べられるものが限られており、それ以外のものを受け付けないことを指します。多くの食品を避けることで、食事全体のバランスが極端に偏ってしまうため、好き嫌いよりも状況は深刻だといえるでしょう。

偏食とは?原因や特徴、対策例などを解説します(https://junior.litalico.jp/column/article/052/
おしえて!『偏食』『好き嫌い』何が違うの?(https://www.soramame-sky.com/column/osietehenshokusukikirai/

子どもの偏食の原因

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食べられる食品の数には個人差があり、食べられるものが極端に少なく悩む保護者もいるでしょう。しかし、子どもの偏食にはどのような原因があるのかを知れば、食事の時間に少しでも心にゆとりを持てるかもしれません。

口がうまく動かせない

口腔機能が未発達な子どもは、食べるときに口をうまく動かせません。そのため、新しい食材を口にすることに抵抗感を持ち、同じ食材ばかりを好んでしまいがちです。

舌触りのよい滑らかな食感のものばかり食べる、硬いものや繊維質のものをいやがる場合は、口腔機能の発達による偏食かもしれません。

食器がうまく扱えない

離乳食が始まったばかりの頃は、大人に食べさせてもらうのが基本です。成長するにつれて自分で食器を使うようになりますが、うまくできない子どもは、手づかみで簡単に食べられるものを好んで食べる傾向にあります。

食感やにおい、見た目が苦手

子どもは大人よりも味や食感に敏感なので、口に入れたときに不快感を抱くと、その食品を拒絶することがあります。また、においが強いのも、「食べられない」と感じる原因の1つです。

さらに、見た目が原因で子どもの偏食を引き起こしているケースも見られます。形がそろっていない、彩りがよくないなど、些細なことで口に入れる前から拒否反応を示しているかもしれません。

触覚防衛反応

人間は、毒や腐敗したものなど、身体に入れてはいけないものを本能的に認識する力があります。筆者も子どもの頃、「苦いものは毒、酸っぱいものは腐っていると感じるんだよ」と、母にいわれたことを思い出しました。

この感覚は、「触覚防衛反応」といいます。大人にも備わった力ではありますが、特に幼児期にはこの力が働くことで、苦みや酸味のある食べ物を避ける子どもが多いです。

感覚過敏

五感の感じ方の大きな偏り、つまり”感覚過敏”があるのも、子どもの偏食の原因です。発達障害がある子どものなかには、感覚過敏が見られることも少なくありません。

感覚過敏の子どもは特定の感覚・刺激を過剰に受けるため、「揚げ物の衣で口のなかに痛みを感じる」「咀嚼音が不快」「つぶつぶした食べ物が気持ち悪い」といった感覚で、食べられるものが限られてしまう可能性があります。

こだわりが強い

「毎日同じものを食べたい」「特定のメーカーのものしか口にしたくない」「最初の違和感がぬぐえず、二度と口にできない」など、強いこだわりが子どもの偏食を引き起こしている可能性もあります。

偏食になるほどのこだわりの強さも、発達障害の特性の1つです。

小食、食に興味がない

食べられる量が少なく、好きなものばかりを優先して食べ、お腹がいっぱいで新しい食品にチャレンジできないという子どももいます。子どもが小食だと保護者も心配になるため、「とにかく食べられるものを」と思うあまり、慣れている食べ物ばかりを与えがちです。

また、「食べる」という行為に興味がない子どもも、偏食になりやすいといえます。食事自体が楽しくない、新しい食べ物に挑戦しようという気持ちがないと感じると、子どもは遊びやテレビなどに夢中になってしまいます。

いまは食べることが大好きな筆者も、幼少期は非常に小食で、食事にもおやつにもあまり興味がありませんでした。そのため、大人たちは「少しでも多く食べられるように」と、好きなものをメインに食事を作っていました。

当時を振り返ってみると、「見た目が無理」「食感が受け付けず吐きそうになる」といったことも多くありました。自分は単なる「好き嫌いがめっちゃ多い人」だと思っていましたが、もしかしたら好き嫌いが多かったというより、偏食だったのかもしれません。

しかし、いまは「好き嫌い」(といっても、普通の人よりはかなり”きらい”が多いですが…)と呼べる程度になっているので、子どもの偏食も成長とともに改善する可能性があると身をもって証明しているように感じます。

子どもの偏食や好き嫌いはどうする?解決策を管理栄養士が解説(https://boshieiyou.org/hensyoku-sukikirai/

子どもの偏食が続くとどうなる?

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子どもの偏食により、「食事を作る」「食べさせる」のが苦痛になってしまう保護者は少なくありません。大人の精神的な負担を少しでも軽減するためには、「子どもが好むものだけを出す」のが得策ですが、極端な偏食を続けていると、子どもの心身に深刻な影響を与えかねないので注意が必要です。

栄養不足

食品によって、含まれる栄養素は異なります。たとえば、タンパク質は魚や肉、卵、大豆などに多く含まれており、炭水化物はご飯やパン、麺類、ビタミンは野菜や果物から摂取します。

そのため、「毎食パンだけ」「納豆ご飯ばかり食べる」など、特定の食品ばかりを口にしていると、栄養不足に陥るかもしれません。

エネルギーの過剰摂取

栄養不足とは反対に、必要以上のエネルギーを摂取してしまう恐れがあるのも、子どもの偏食に潜んだ危険性だといえます。たとえば、「毎日唐揚げばかり食べる」「お菓子だけ食べている」のがよいことかどうかは、一目瞭然ですよね。

エネルギーを過剰に摂取すると、子どもでも肥満や生活習慣病のリスクが高まってしまいます。

発育不良

子どもの偏食により成長に必要な栄養が補えないと、発育にも影響を及ぼします。体重の増え方が悪い、身長がなかなか伸びないだけでなく、身体が子どもから大人へと変化するスピードも遅くなってしまうかもしれません。

免疫力低下

免疫力を高めるには、バランスのよい食事で栄養素をまんべんなく摂取することも大切です。そのため、子どもの偏食で栄養不足が起こると、免疫力も低下してしまいます。

免疫力が低いと、風邪や流行病にかかりやすく、完治までにも時間がかかる可能性があります。

便秘

バランスよく栄養を摂ると、腸内環境が整います。反対に、極端な偏食は腸内環境を悪化させる原因となり、便秘になってしまうこともあります。便が溜まると食欲も出ないので、子どもの偏食の改善がより難しくなるかもしれません。

精神への影響も…?

ビタミンやミネラルが不足すると、集中力や協調性が低下したり、不安感を覚えたりと、精神面に悪影響を及ぼします。偏食が原因で、怒りやすくなる、反対に何事にも興味が持てない、気力が出ないということもあります。

集団生活を円滑に送ったり、興味・関心を持って何事にも積極的に取り組んだりするためにも、バランスの取れた食生活は重要です。

子供の偏食は成長に影響があるの?(https://www.ns-seikeigeka.com/qacolumn/seichouki/2943.html

子どもの偏食解消に向けてできる工夫

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偏食の原因を知ると、「改善は難しいかも」と諦めてしまう保護者もいるかもしれません。しかし、少しの工夫で子どもの偏食を改善できることもあります。

どのような方法があるのかを知り、日々の生活に取り入れられることから始めてみてはいかがでしょうか。

苦手だと思う理由を把握する

「なぜ苦手なのか」を知ると、子どもが拒絶する食品の共通点が見えてくるかもしれません。「苦みが強い」「噛みにくい」「発酵臭がいやだ」など、具体的な理由がわかれば、どのように工夫すれば少しでも食べられる可能性があるのかも、考えやすくなるでしょう。

味付けを変える

普段とは異なる味付けにすると、食べられる食品が増えるかもしれません。甘みを加える、カレーのような強い味付けで、素材の味がわからないようにするなど、味付けの方法はさまざまです。

食感がよくなるようにする

噛む・飲み込むのが大変で食べるのを拒否している場合は、食感を変えてみるのもよいでしょう。たとえば、野菜はポタージュにしたり、溶けるほど煮込んでカレーに入れたりするなどの方法があります。

原型を留めていないので、子どもの偏食を根本的に解消することにはつながらないかもしれませんが、栄養不足を補う効果は高いでしょう。また、「実はこれ、○○(苦手なもの)が入っているんだよ」と話すと、「こんなにおいしいんだ」「自分も食べられるんだ」と、ポジティブな感情が芽生えるかもしれません。

好きなもののなかに混ぜる

好きなメニューに苦手なものを紛れ込ませるのも、1つの方法です。細かく刻んだりすりつぶしたりして、カレーやハンバーグ、スープなど、子どもが好きなものに入れると、すんなり食べられることもあります。

わが家の次男はかなりの偏食で、2歳頃には「毎食カレーしか食べない」という恐ろしい生活をしていました。しかし、小さく刻んでカレーに混ぜれば比較的どんな野菜も食べたので、当時は野菜をたくさん入れて食べさせていました(笑)。

いまも好き嫌いは多いものの、「スープならOK」という変わったスタイルで、ほかの調理法ではいやがる葉物野菜も、なぜかスープだとモリモリ食べます。

なかには、どのような工夫をしても食べられないという子どももいるでしょうが、「好きなものに混ぜる」という方法は、一度は試してみてもよいかなと思います。

一緒に料理をする

食に興味がない子どもは、一緒に買い物や料理をすると、「こんなふうに作るんだ」「こういう食材を使っているんだ」と、食べることに少しずつ興味を示すようになることがあります。

完成して目の前に出されたものよりも、自分で作ったもののほうが「食べよう」という気持ちが芽生えるかもしれません。一緒に料理をするなかで親子のコミュニケーションが深まったり、「お手伝い」の習慣がついたりもするので、一石二鳥です。

「食」に興味を持つアクションをする

「食べる=楽しいこと」だと思わせることも、食への興味を引き出すためには重要です。保護者がおいしそうに食べている姿を見ると、「自分も食べてみたい」と思うかもしれません。

特に子どもが小さいうちは、作ること、食べさせることは本当に大変ですが、笑顔でおいしそうに、楽しく食べる姿を見せることも、意識してみてください。

強要しないことも大切!

子どもの偏食がひどいと、「栄養は大丈夫だろうか」と心配になりますよね。また、一生懸命考えて作ったものを拒否されると、ストレスになることもあります。わが家も前述の通り偏食ボーイがおり、しかも食に興味がなかったのか、3歳近くまで自分で食べることすらしなかったので、食事の時間はそれはそれは苦痛で仕方がありませんでした。

しかし、苦手なものを食べることを強要したり、子どもの偏食を叱ったりすると、子どもは「食事が楽しくない」と感じてしまいます。食事の時間がお互いにストレスになると、悪循環に陥ることもあるため、ある程度許容し、見守ることも大切です。

などといいつつ、当時は筆者も必死で、子どもを叱ってしまったこともあります。

ただ、それで息子の偏食が改善されたわけではありません。偏食は非常に悩ましい問題ですが、最優先したいのは親子で楽しい食事の時間が送れることなのではないでしょうか。

発達障害の子どもの「偏食」|原因とサポート方法(https://happy-terrace.com/column_data/picky_eater/

子どもの偏食は心身への影響も。ゆっくり克服しよう

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子どもの偏食の原因はさまざまですが、成長とともに食べられるものが徐々に増えていくケースは多いです。偏った食生活は心身への影響も懸念されるため、保護者は「なんとかしたい」と考えますが、無理に改善しようとするとお互いに食事の時間が苦痛になってしまいます。

1つずつ食べられるものが増えるような工夫を取り入れながらも、「食事を楽しむこと」も忘れず、長い目で見守りましょう。

※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

大学・大学院にて日本語学を専攻し、修了後は日本語学校に非常勤講師として勤務。2018年よりウェブライターに転身し、さまざまなメディアで記事を手がける。2人の子を持つ「ママライター」として、日々育児に仕事に奮闘中。