初めての子どもの、初めての誕生日会。子どもが生まれてから何もかもが初めてづくしの新米ママにとって、1歳の誕生日はひとつの節目でもあり特別なものです。「子どもが喜ぶ誕生日会にしてあげたい!」と、ママの力が入るイベントでもあります。そんな中、息子のために頑張って作った誕生日ケーキを見て義父が衝撃の一言を…
誕生日ケーキどうしよう?

誕生日といえば、思い浮かぶものはご馳走と誕生日ケーキ。
「幼い息子が口にするものは、安心安全なものがいい!」と、当初の私は人一倍気をつけていました。息子がアレルギーがあったわけではありませんが、なるべく腸に負担がかからないものやオーガニックで添加物が少ないものをと必死でした。
そんな私は「1歳になったばかりの子どもに、生クリームたっぷりのショートケーキはまだ早い!」 と思い、1歳児が食べられるケーキはないかと調べていました。15年前なので今とは違いネットの情報も少なく、調べれば調べるほど答えが見つからない。どこに行けば息子が安心して食べられるケーキが買えるのか分からなかったので、息子のために安心して食べれるケーキを「手作り」することに決めました。
全力投球! 息子のために頑張った母

そして、ついに息子の誕生日会当日。
私は朝から息子のために唐揚げ、ポテトサラダ、ちらし寿司などご馳走作りに奮闘しました。そして、自分の中の大本命「息子用の誕生日ケーキ」も作りました。ネットで米粉と豆乳を使ったレシピを見つけ、それを一生懸命作りました。生クリームの代わりに豆乳を使い、デコレーションも頑張りました。
プロでも器用なほうでもなかったので、市販のものみたいな華やかさもない素人丸だしの「カップケーキ」に仕上がりました。
それでも私は、息子の初めての誕生日に手作りでケーキを頑張って作った「良いママ」という達成感でいっぱいでした。
いざケーキのお披露目をしたら…!?

息子の1歳の誕生日会は、主人の両親・私の両親・主人と私とアットホームな雰囲気で始まりました。息子のひとつひとつの行動でみんなが喜び、息子が
「おいちー♡」と言えばみんなの頬が緩む。そんな幸せいっぱいのときに、事件が起こりました。
いざ、本命の一生懸命作った手作りカップケーキを息子の前に出した瞬間でした。息子はカップケーキに向かって覚えたての拍手をして喜んでいたのに、 義父が発した一言。
「可哀そうに… (普通の)ケーキはないんか…」憐れむような目をして、ボソっと言いました。
一瞬耳を疑いましたが、私は平然を装いながら、
「アハハハ…」と愛想笑い。今だったら舌打ちのひとつぐらいできたかもしれませんが、当時のウブなママだった私は涙をこらえるのに必死でした。私の達成感と「頑張ったママ」のプライドはボロボロに崩れ落ちました。
私の崩れ落ちたプライドはお構いなしで、さらに義父は
「可哀そうだから、わしがケーキを買ってやる」と言ってきました。
当時の私は
「結構です」も「3歳になるまで私が作りたいです」も言えませんでした。ただ、ママとして認めてもらえない疎外感だけが増しました。
あれから16年、誕生日ケーキは義父の○○から

当時ボロボロになった私のプライドは、子どもたちが増えるにつれて気にならなくなり、やがてどうでもよくなりました。年月とともにきれいに浄化していき「子どものために手作りケーキを作る!」という気持ちも心地よく手放すことができました。
なぜかというと、
「可哀そうだから、わしがケーキを買ってやる」と言った義父があれから、子どもたちの誕生日ケーキを毎年買ってくれているからです。誕生日の子を連れてケーキ屋さんに行き、その子が選んだケーキを予約するというルーティンが16年経った今でも続いています。ボロボロになった私のプライドより、目の前の子どもたちとわが家の財布事情が優先になりました。
誕生日ケーキ3人分の家計の負担を思えば、本当にありがたい話です。16年を経て、私は3人のママとして随分図太くたくましくなりました。そして、義父の孫への愛情とお財布に心から感謝しています。今年も義父と子どもたちが選んだケーキで、素敵な誕生日になりそうです。
(ファンファン福岡公式ライター/雪花菜)


