ワンオペ育児の最大の敵、それは子どもの病気です。夜間、突然止まらない子どもの嘔吐に見舞われたわが家。夜間救急に行くのもやっぱりワンオペです。それも元気な他の兄弟も全員連れて。果たして私たち家族は無事に家に帰ってこられたのでしょうか?
夕方6時のチャイムは、悲劇の合図

そろそろ夕飯の準備に取り掛かろうとしていた、夕方6時。小学4年生の長男・小学1年生の二男・そして2歳になったばかりの三男と自宅のリビングでゆったりと過ごしていました。
楽しそうな笑い声を耳にしながら私がキッチンに向かった直後のこと。何の前触れもなく、唐突に二男が嘔吐しました。もちろん受け止める準備は誰にもできていなかったので、リビングは阿鼻叫喚の惨状。何も分かっていない三男だけがポカンとその場に立っていました。
私の脳内は、凄まじい速度で今一番すべきことは何かと回転します。とにかく三男を遠ざけなくては! 長男に「三男と一緒に別の部屋に行って、出てこないでほしい」とお願いをして、二男にバケツを持たせます。
二男はそれまでの元気が噓のように、数分のうちに嘔吐を繰り返していました。二男も心配ですが、まずはリビングをどうにかしないといけません。二男を着替えさせ窓を全開に開け、吐しゃ物の処理にあたりました。
止まらない嘔吐

簡単にリビング掃除をした後も、二男の様子は悪くなる一方です。
さらに三男が部屋から出してほしいと泣き始めました。しかし、もしもこれが感染性のウイルスだとしたら…? リビングに連れ戻したら感染する可能性が高いです。というより、まだリビングも表面上ふき取っただけなので、消毒などはできていない状況。
私の頭はまたもフル回転。何からすればいいのかと悩みながらも気がつきました。リビングを消毒する係・二男の看病係・三男の面倒を見る係。どう考えても3人は必要です。それなのに、今この家にいる大人は私のみ。夫に電話… したとしても、単身赴任中の夫が帰ってくる頃には日付が変わっていることでしょう。
1時間の間に二男の嘔吐回数は13回を超えました。止まらない嘔吐に、スマホを手に取り電話をかけた先は夜間救急病院です。状況を説明すると、受診した方が本人も楽だろうとのことですぐに病院に行くことになりました。
誰か! 私をもう3人連れてきて!

病院に行くといっても、二男だけ連れて行くわけにはいきません。時刻は夜8時。小学4年生の長男をどうするか迷いましたが、何時に帰ってこられるのかも分からないので、連れて行くことになりました。
4人で車に乗り込みます。もはや歩くのも精一杯の二男がバケツを手に助手席に。何も分かっていないけれど眠くなりだした三男をチャイルドシートに。長男は保険証などが入ったリュックを膝に抱えて、夜の国道を車を走らせます。
ようやく着いた病院は、小さい子やぐったりしているお子さんでベンチが空いていない状況でした。三男をおんぶ紐でおぶり受付をしている間も、二男の嘔吐は止まりません。赤ちゃんを連れている男性が二男にベンチを譲ってくれました。お子さん1人に対してご夫婦… かたや私は、男の子3人を連れて1人。
なぜ、私は1人なんだろう…? と考えても仕方がないことを考えてしまいました。
私を襲った、最後の災難
少しの待ち時間の後、病室に通された二男は吐き気止めの座薬を入れてもらいました。すると、嘘のように嘔吐が止まりました。
「辛かったね。よく頑張ったね」という先生の言葉に、なぜか私が励ましてもらったような気持ちになってしまいました。二男はようやくにこりと笑いました。
予備用の座薬と飲み薬を処方されて自宅に向かいます。車内は全員無言と思ったら、二男も三男も眠っていました。
帰宅してからそれぞれを抱っこして布団に運び、長男と「大変だったね」と互いを慰めながら布団へ。リビングの消毒をしなくてはという気持ちもありましたが、ドッと疲れていたようでウトウトしていました。
ハッと目を覚ましたのは何時ごろだったのでしょうか。とにかく深夜です。強烈な吐き気が私を襲いました。
「次は、私の番か…!」まだやることはたくさんあったのに、どうやらここまでのようです。
ワンオペ育児の最大の敵は、子どもの病気ではなく親子共倒れでした。
(ファンファン福岡公式ライター/本田すのう)


