ある日、車のドアポケットに入っていた一枚の紙。それは、見覚えのないネットバンクの利用明細でした。「もしかして、夫の秘密口座…?」動揺しながらも、ふと、自分にも思い当たる“ちょっとした秘密”が頭をよぎり…。思いがけない展開を経て、夫婦の距離が少し縮まった出来事です。
きっかけは、車のドアポケットのレシート

久しぶりにひとりで車を運転して出かけようとしていたある日。運転席に座ると、ドアポケットからレシートが何枚もはみ出していました。片づけようと手に取ると、その中には見慣れないネットバンクの入金明細レシートが。わが家は共同口座で家計をやりくりし、夫が使っている口座は給料用と、独身時代のゆうちょ口座の2つだけのはず。
「あれ、わが家にこんな口座あったっけ…?」何度見返したけれど、間違いなく夫の名前。しかも、同じような金額の入金明細が何枚も。「これってもしかして内緒の貯金?!」思いがけない発見に、胸がざわつきました。
勝手にモヤモヤ、でも実は私も…

「私に口座のことを言えない理由でもあるのかな?」と不安がよぎりました。「何に使ってるの?」「まさかギャンブルとか…」と妄想はふくらむ一方。
でも、ふと冷静になって、私にも”秘密口座”があることを思い出しました。パート代の大半は共同口座に入れているけれど、少しだけ秘密口座に移していたんです。目的は推し活。
推しているのは韓国の5人組男性アイドルグループ。ライブやファンミーティングに参戦し、グッズも集めています。夫は私が推し活をしていることは知っていますが、資金源について夫から聞かれたことはありません。まさか推し活のための秘密口座まであるとは思っていないはず。でも、これって私も夫と同じように隠し事してるってことになる…?
思い切って秘密口座について尋ねてみたら…

数日後、子どもが寝静まった夜に意を決して夫に切り出しました。
「この間、車で見つけちゃったんだよね。ネットバンクの利用明細。そんな口座持ってたっけ?」と尋ねると、少しの沈黙のあと夫がポツリと一言。
「あー、バレたか」照れくさそうで、どこかホッとしたような表情でした。
「実は、俺も推し活してて。グッズとかファンクラブとかに使ってた」と夫。まさかの“推し活”仲間だったなんて!? 夫が推し活をしているとは予想外でしたが、思わず笑いがこみあげました。
「そうなの!? 誰推してるの?」
「最近ハマったアニメの声優さん。動画とか見てると、けっこう元気出るんだよね」
「なんで隠してたの? グッズあるなら見せてよ!」
「最初、君が推し活してる姿に、引いたリアクションしちゃってたでしょ? だからなんか気まずくて。グッズはクローゼットの奥に隠してある」
夫は照れ笑いしつつ、うれしそうに教えてくれました。そこからは一気に空気が和み、2人で推し活の話で盛り上がりました。夫を疑ってしまったことのモヤモヤは、すっかり吹き飛んでしまいました。
“秘密”のおかげで、夫婦の関係がより楽しく

わが家の家計は管理できていて、毎月「家計内の貯金」もできています。私の推し活費用は生活費から出していると思っていた夫。私も自分の秘密口座の存在を打ち明けると、「ちゃんとやりくりしてて偉いよね」と、むしろ褒め合う展開に。
それ以来、夫婦で最近の推し活状況について気軽に話をするのが当たり前に。買ったグッズを見せ合ったり、「この動画見てみて」とおすすめしあったりして、夫婦の会話の時間が増えて楽しくなりました。
結婚して7年。夫婦といえども、お互いにまだ知らない一面がある。また1つ、大好きな夫のことをより深く知れたことがうれしくて、くすぐったい気持ちになりました。ネットバンクの明細を見つけたあの日ドキッとしたけれど、その「秘密」のおかげでふたりの距離がちょっと近くなった、そんな出来事でした。
(ファンファン公式ライター:Sasaki)


