赤ちゃんが生まれると、家族の喜びもひとしおですよね。私の義両親も初孫フィーバーで浮かれ、出産後すぐに赤ちゃんを見にきてくれました。ところが、そこで義父が放った思いがけないひと言に場の空気は一変…。あまりにも非常識なその言動に、私は言葉を失ってしまったのです。
喜ばしい出産

結婚する前から義両親との関係はとても良好でした。結婚後は近距離別居でしたが、義両親はどちらも常識的で、私たち夫婦のことも程よい距離感で見守ってくれていました。結婚して2年が経った頃、私が妊娠したことを伝えると義両親は「初孫だ!」と大喜びでした。
親戚をはじめ友人知人に「初孫が生まれる」と言って回るほどの初孫フィーバー振りを見せていましたが、私たち夫婦には妊娠中も過干渉な言動は一切ありませんでした。
「何かあったら言ってね」と声をかけてくれ、たまに作り置きのおかずや果物を持ってきてくれる程度。おかげで、私もリラックスしてマタニティライフを過ごすことができ、無事に男の子を出産しました。
初訪問で高まる義両親のフィーバー

退院して自宅に戻り、初めての子育てがスタートしました。不安もありましたが、夫と2人で「子育て頑張ろうね」と励まし合いながら、慣れない生活に少しずつ順応していく日々。
そんな中義両親が「赤ちゃんに会いたい」と、さっそく訪ねてきてくれました。玄関先から「おめでとう、おめでとう」と嬉しそうな表情の義母と義父。リビングに入り、ベビーベッドで眠る赤ちゃんを見て義母は涙ぐみ「まぁ、かわいい」と目を細めていました。
義父も終始にこやかで、ビデオを撮っていました。義両親はかわるがわる赤ちゃんを抱っこして赤ちゃんが目を開けただけで喜び、あくびをすると拍手までして、とにかくメロメロといった様子でした。
義父の非常識な発言

和やかな時間が過ぎる中、赤ちゃんの授乳時間が近づきました。私は母乳で育てているので、授乳をするためにリビングの隣の和室に行こうと立ち上がったそのとき、驚くべきことが起こったのです。清浄綿や授乳クッションを用意して赤ちゃんを抱き隣室に入ろうとすると、なんと義父が私の後ろからついてきたのです。
私は「授乳をする」と言ったことが義父には分かっていなかったのかと思い
「お義父さん、すみません。これから授乳なので」というと、
「それは分かっている。わざわざ和室に行く必要はない。リビングのソファでお乳をあげなさい」と言ったのです。
私は一瞬、耳を疑いました。けれど冗談ではないらしく、義父は真面目にそう言っていたのです。
「えっと… それは、ちょっと…」とやんわり断り、リビングに戻ってくれるよう頼んだところ、なんと義父は
「嫁の乳が見たいわけじゃない。孫が元気にお乳を吸うところが見たいんだ」と、声を荒らげながら地団駄を踏んだのです。
大の大人の地団駄を見て、私も夫も義母までもがその場でフリーズ。その時の私は、授乳シーンを見せるのは絶対嫌だけれど、かといって義父にどう言えばいいのか分からずオロオロするばかりでした。
いち早く我に返ったのは夫で、真っ赤な顔で
「親父、バカなことを言うな。見せるわけがないだろう」と声を荒げ、義母も
「ちょっと何言ってるの。そんな非常識なことを」と注意。
それでも義父は
「見たい。見たい」と駄々をこねていたのですが、夫と義母に冷たく怒られて、その後はしょんぼりと黙り込みました。その隙に私は隣室で授乳を行いました。
距離感を見直すきっかけに
授乳を済ませ、私と赤ちゃんがリビングに戻った時にはリビングの空気はすっかり重たく、早めにお開きとなりました。翌日、義母から「昨日はごめんね」と連絡がありました。
義父も「そんなに怒られることだと思わなかった」と反省していたとのこと。夫も
「家族でも超えていいラインとダメなラインがある。嫌なことはきちんと言ってくれ。距離感は大事にしよう」と言ってくれ、この人が夫で良かったと思いました。
それ以来、義両親の初孫フィーバーもやや落ち着き、こちらが驚くようなことを言われることも、もうありません。訪問や連絡の頻度もほどよくなりました。家族だからこそ、遠慮がなくなりすぎることもありますが、やっぱり大事なのは「節度」と「程よい距離感」なのだと実感した出来事でした。
(ファンファン福岡公式ライター/蕗野薹子)


