福岡市の博多座のすぐそばにある、帽子をデザインした赤いテントが目印の老舗喫茶店「珈琲のシャポー 土居町本店」(福岡市博多区)が、5月18日(日)をもって閉店します。約40年にわたりこの地で親しまれてきた同店。閉店の知らせを聞き、連日多くの人が最後の一杯を求めて訪れています。
博多の街に40年、老舗の喫茶専門店

シャポーは1967年、博多駅前の福岡交通センタービル(現在の博多バスターミナルビル)地下に創業。現在は「土居町本店」と「アクロス福岡」の2店舗で営業しており、この土居町本店はオープンから約40年となるそうです。

新開盛弘社長(82)によると、土居町本店の閉店は入居ビルの建て替えによるものとのこと。閉店の知らせを聞いた常連さんたちが連日店を訪れており、「これからどこに行けばいいと?」「寂しくなるね」と惜しむ声が次々と寄せられています。新開社長は「お客様とゆったりとお話したり、くつろいでもらったり。ここにしかない店の雰囲気や空間がなくなってしまうのは、やっぱり寂しいですね」と振り返ります。
変わらない「シャポーらしさ」が愛される理由

深いブラウン系で統一されたヨーロピアン調のインテリア、きれいに磨かれた床。クラッシックが流れ、昭和の香りもどこか残している温かい雰囲気の中、ネルドリップで丁寧に淹れられたコーヒーをゆっくりと味わうことができます。

シャポーの創業当初からのこだわりは、「手作りの味」。中でも、コーヒーに添えられるのは、ミルクではなくホイップクリーム。しかも、このホイップは純生クリームを手で泡立てられたものです。また、大倉陶園や源右衛門窯、深川製磁のカップとソーサーで提供されるのも、目でも舌でも楽しめるシャポーならではの体験です。

創業当時からあるホットサンドや、人気メニューのワッフルも、注文を受けてから焼き上げるスタイル。最近は、新鮮なフルーツ3種とホイップクリームを挟んだ「フルーツワッフル」は、若い人たちにも人気だそう。

「シャポーらしさ」は接客にも。スタッフの多くは20~30年勤続のベテランで、80代の方も接客に立ちます。博多弁での飾らないちょっとした会話や、「目配り、気配り、心配り」を大切にしたおおらかで親しみやすい接客も、多くの方に愛されてきた理由の一つです。

また、モーニングやランチは提供せず、終日喫煙可というスタイルも、時代の流れとは一線を画す「シャポーらしさ」となっています。
土居町本店の開業当初から働く友重三枝子さん(75)は、「ほかの店を真似しないのが、シャポーの良さ。お客様にとって『昔から変わらない場所』であり続けることを大切にしてきました」と話します。
「100年続く喫茶店」へ

昭和、平成、令和と、三つの時代を駆け抜けた珈琲のシャポー 土居町本店。ここで初めてコーヒーを飲んだ人、デートをした人、プロポーズをした人…数え切れない人生の瞬間が詰まっています。
新開社長が目指してきたのは「100年続く喫茶店」。福岡の街並みが大きく変わっていく中でも、「欲をかかずに真面目にやる」「いつの時代でも基本は一緒」と新開社長は語ります。

土居町本店の閉店後は、天神の「アクロス福岡店」がリニューアルされて本店となり、新たな一歩を踏み出します。アクロス福岡店は、6月5日(木)頃から約1週間改装工事に入る予定ですが、シャポーらしい落ち着いた雰囲気はそのままに引き継がれるとのことです。
珈琲のシャポー 土居町本店
住所:福岡市博多区下川端町1-3
営業時間:午前10時~午後9時半
定休日:不定休
※2025年5月18日(日)の営業をもって閉店
博多の街に根差した喫茶の文化を紡いできた珈琲のシャポー 土居町本店。最後に足を運んでみてはいかがでしょうか。


