福岡を拠点に役者や歌手として活動する岸田麻佑さんが、2023年に立ち上げた演劇プロジェクトきしPこくーんの第2回公演「拝啓おふくろさんとDEVILちゃん」(脚本:安藤亮司)を6月25日(水)~29日(日)、ぽんプラザホール(福岡市博多区)で上演します。九州を拠点にする女性の俳優やタレントが活動できる場がまだまだ手薄なことから、自分たちで「場」をつくろうという同プロジェクトは、同ホールでの旗揚げ公演「冥土inシェアハウス」、ライブハウスで昨年開催した朗読劇「ワンサイド。」に続く3作目で劇場本公演としては第2回。「ジェットコースターのようなハートフルコメディー」(出演者)となっている今作などについて、初日が迫った稽古場でプロデューサーの岸田麻佑さん、ダブル主演する結城美優さんと柏木優茉さん、元HKT48の安陪恭加さんの4人に話を聞きました。
ダブル主演の化学反応

岸田さんと結城さんは「いつも、同じ夢を見ていたい」(2019年)で初共演、結城さんが主演を務めた「璃色(あきいろ)リベリオン~反逆の乙女達が奏でる策謀と裏切りのハーモニー~」(2021年)でも共に舞台に立ちました。
岸田さんは「結城さんの稽古に取り組む姿勢、主演としての座組のつくり方を見て今回の主演をオファーしました。昨年、出演していただいた朗読劇では稽古に参加できたのは3回ほどでしたが、あっという間に中心的な役割を果たしてくれました。その姿は福岡の俳優やタレントの刺激になると思っています」。

柏木さんは、岸田さんがオリジナルメンバーとして活動している女性エンターテインメントユニット「トキヲイキル」でサポートメンバーとしても活躍中。岸田さんは「いつかは岸Pの舞台で主演をしてほしいと思っていました。結城さんのようにぐいぐい引っ張るタイプではありませんが、しっかりとした軸を持っています。結城さんに刺激を受けて一皮むけてほしい。それに、この2人が主演することでいい化学反応が起こると直感的に思いました」。

また安陪さんについては「福岡とゆかりがあり、演技ができる人を探していました。安陪さんはHKT48の1 期生。私もLinQの1期生でしたので、親近感があり出演を依頼しました。(関東に拠点を移した)安陪さんの活躍を福岡にいるファンに間近で見てほしいとの思いもありました」と話しました。
作品を磨き続けていく

作品の仕上がり具合について結城さんは「今までお芝居に満足したことはありません。この作品も現時点である程度の完成度に達していますが、ここから出演者一人一人が作品について深く考えることと、さらに公演を通じてお客さまからの刺激を受けることで、最後の瞬間まで作品を磨いていきたいです」とし「作品自体がジェットコースターのような展開です。観客の皆さんにも『おおっ』『うわっ』という感覚を味わってほしいです。またダンスシーンは、かっこよく、きれいで、圧巻ですので楽しみにしてほしいです」。

大学生で出演した舞台以来、約7年ぶりの主演となる柏木さんは「不安というか、どこかそわそわしています」と緊張した面持ち。「作品はありふれた日常を交えたハートフルコメディー。観客の皆さんが親しみやすい作品になっています。岸田さんが声で出演するDEVILちゃんが作品にどう影響を与えているのか、注目してほしいですね」。
安陪さんは「定食屋や酒屋、商店街。日本のいいところだけれど消えつつあるものが描かれている、昭和の香りがする素敵な作品です。コメディーなのでクスリと笑えますし、最後はほろりと泣けてくる心温まる作品です」と話し「舞台の定食屋、主演2人との関係性を見てほしい役柄です。自分の思いをぶつけるシーンが多いですね。その『思い』を深めていくために、物語には描かれていない部分まで自分なりに関係性を想像し紙に書き出して、深掘りしてきました」と役作りについても明かしてくれました。
「愛」の種類はたくさんある

「今回、脚本を依頼するにあたって『愛をテーマにしたい』とリクエストしました」と岸田さん。「親子愛、家族愛、友人や自分自身への愛。いろんな愛を書いてほしいと。届いた脚本は、思った以上にコメディーがちりばめられていてテンポいい印象を受けました。そして、『愛』という言葉だけを聞くと、私たちも皆さんも、どうしても『男性』を思い浮かべがちですが、女性だけで演じる作品でもこんなに『愛』を描くことができることに驚きました」。
結城さんは「作品では、たくさんの種類の『愛』が描かれています。観客の皆さんが登場人物を自分に置き換えられる部分があると思っています。『どこか自分と重なる』『あ、その気持ちよく分かる』。そう感じる瞬間を楽しんでほしいです」。

柏木さんは「テンポがいいので話がどんどん展開していきます。置いていかれないように舞台から目を離さないでください」と注意喚起。安陪さんは「キャラが豊富なのでいろんな角度から楽しめると思います。一度ではなく何度も劇場に足を運んでほしいですね」と笑顔を見せました。
岸田さんは「心温まる作品になりました。仕事の疲れを癒やすぐらいの気持ちで足を運んでいただいても、温かい気持ちになって劇場を後にできると思います」と来場を呼びかけました。
きしPの夢を支える人々

「福岡では演技のお仕事が少ないイメージがあり、『芝居をするなら東京』と思っていました。こうやって演技ができる場を作ってくださることはありがたいですし、(プロジェクトが)広がっていくとうれしいです」(安陪さん)、「東京でも岸田さんの若さで舞台をプロデュースする人は少ないですし、俳優活動を続けながら、というのはすごいと思います」(結城さん)と「きしPこくーん」の挑戦を評価します。そのプロジェクトは「福岡での舞台プロデュースはまだまだ大変。だからこそ近くで支えたい」と語る、旗揚げから出演している柏木さんのような「思い」を持った人たちが支えています。

先日、結婚と妊娠を発表した岸田さん。
「東京にはガールズ演劇で名が通る劇団は複数あります。同じように『きしP』はガールズ演劇の福岡代表を目指しています」と夢を語る姿には旗揚げ当初より確信めいたものを感じました。
人生の新たなフェーズに入った「きしP」こと岸田麻佑さんの夢への挑戦は、共鳴する人たちを巻き込みながら力強さを増していくのかもしれません。

ライター:重村誠志

