ココイチ九州第1号店で大食い失敗の思い出 ~久留仁譲二の小市民だより~

 気軽に外食できるカレーの代表格だったCOCO壱番屋さんもこのところ、「すぐ千円超える」といわれるようになりました。以前はポークカレーは300円台だったような気が。まあ、なんでもかんでも値上げ値上げで福岡のまちなかと言わず郊外でも千円で済む昼食が珍しくなくなりつつあります。

 そのココ壱番屋(ココイチ)の九州上陸最初のお店、大野城市御笠川にある「福岡南バイパス店」だったと記憶しています。

 36、7年前開店してまもなく、カレー好きの私はすかさず行きました。上の写真は現在の様子ですが、当時はその界わいももっとさびしく外食のお店も少なかったです。

 私は、近くにある三省(さんしょう)製薬という会社に仕事でおじゃましての帰途、たしか午後3時頃だったと思いますが、最初から行こうと思っていた「九州初上陸」のお店に向かいました。

 米不足の今からすると信じられない話ですが、当時のココイチは「ごはんの量が1300グラムのカレー」を20分以内に平らげたらタダになる、という企画を常時やってました。その代わりに食べきれず残したり、20分以上かかったら、当然その分のお金を支払うしくみです。

 27歳か28歳と若かった私はカレーに限らず、早食い大食いの部類でまずまず自信があったので、無謀にも挑戦を決めました。

 この企画(サービス)の良いところは、ライスの量1300グラム(要するに1.3キログラム)さえクリアすれば、カツだのハンバーグだののトッピングやライスもなんなら2キロでも良いという、ちょっとありえない「気前の良さ」でした。

 でしたが、私はさすがに初挑戦でありますし、基本のポークカレーの1300グラムと一番無難なやり方を選びました。失敗したら、払う金額も高くなるし。

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 写真が無くて残念ですが、出てきました。ライス1300グラムカレー。当然ルーの重みも加わるので、1350か1400グラムはあったでしょうね。足りなくなったらルーかけてくれるそうです。

 最初は勢いよくパクついていきました。その日昼食抜きだったか腹は減っているので、半分くらいまではスムーズに進みました。「これはイケるかも」と思ったのも束の間、だんだんとスプーンを口に運ぶ手が鈍くなっていきます。

 「ああ苦しい」と水を流し込んだのがよくなかった。さらにイヤな満腹感が増してきて、もうどうにもこうにもたまりません。

 20分近くまで粘りましたが、普通の大盛り一杯分くらいまだ残ってます。もうダメ。モームリ。

「これ食うくらいなら金払ってラクになったるわい」と、ギブアップしました。

 店員さんは笑ってました。てか最初注文したときから、半笑いでした。サラリーマンが仕事中に来て、1300グラムカレーにトライするなんて、よっぽどの変わり者と思われたんでしょう。全く否定できません。

 息も絶え絶えになりながら、「これやる人いるんですか?」と聞いてみました。

 「まだあんまりいません」とのご返事。オープンして日が浅いからですね。

 成功すると、無料になることに加え、ポラロイドカメラで撮った写真を店内に貼ってくれるそうです。たしかにまだそれはありませんでした。

 気持ち悪くなりながら、本来の値段(たしか千円ちょいでした)を支払って、うなだれながら、会社に向かいました。

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 後日談がありまして、その後ココイチは福岡でもあちこちに店舗を広げていきました。

 先の馬鹿げた挑戦後、「二度とあんなことはやるまい」と決意を固めていた私ですが、その1年か2年後でしょうか。日曜日、家族を車に乗せて城南区の福大通りを東に向かい家に帰っていました。すると、牧のうどんの隣にココイチの新店舗が出来てるではありませんか。午後1時半くらいだったでしょうか。またしても昼ごはん抜きだった私は猛烈にカレーが食べたくなりました。そして、ハンドルを右に切り、ココイチの駐車場に入って行きました。妻は食事していたので、「すまん、ちょっと待ってて」と言い残し、単身お店に乗り込みました。

 店内に一面に貼られたポラロイド写真。そうです。1300グラムカレーを征服した猛者たちです。なんか若い女性とかもいます。ゴツい男子はあろうことか2200グラムのカツカレーとかをやっつけてるではありませんか。ムラムラと闘志が湧いてきました。

 「よっしゃ、リベンジや」。心の中が関西弁になりました。「行てもたる」。

 きょうは成功しそうな気がしたんです。迷わず「1300グラムお願いします」と標準語で頼みました。でもやはり基本からはみ出さず、トッピングとか無しです。

 前回の教訓は「水を飲まないこと」「20分といわず、大至急満腹中枢に信号が行く前にかき込んでしまうこと」の二点です。

 もう、味を感じることもなく、ひたすらスピード加速して流し込みました。「カレーは飲み物」という言葉、キライですが、そのときの私はそれに近い完食でココイチに向かいました。

 で、やり遂げましたよ。10分かかってません。7、8分くらいでしょうか。

 しかし、達成感にはほど遠く、「意味のないことをしてしまった」という後悔と胸やけに襲われ、カウンター席で呆然としていました。

 店員さんが写真を撮ってくださいましたが、できれば貼ってほしくない気分でした。だって、恥ずかしいじゃないですか。

 成功したので、勘定もせずに店を出ましたが、車に戻ると胃がびっくりしたのか、気分が悪くぐったりしました。今度こそ「二度とこんな大食いチャレンジには関わらん」と決意しました。

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 その後もしばらく、COCO壱番屋さんは「1300グラムカレー食べたらタダ」企画続けてましたが、たしか1993年に起こった「平成の米騒動」(今以上にお米が足りなくなり、タイとかから米を緊急輸入した)で、さすがに続けられなくなって取りやめになったかと思います。

 COCO壱番屋の創業者の宗次徳二(むねつぐとくじ)さんは、のちに1300グラムカレーについて、「お客様サービスと思ってやりましたが、今にして思えば(食べ物を大切にしていないという意味で)良いことでなかった」と反省されていることをネット記事で読みました。

 で、もう一回後日談があるのですが、二回目の「もうやらん」決意をしたはずの私、どこのお店か忘れましたが、さらにもう一度1300グラムカレーを無料で食しました。ほんとは「チャレンジは全店舗で一回限り」なんですが。

 ほんとうにごめんなさい。懺悔してこの回を終わります。

 次回は、COCO壱番屋のパチモンだった「GOGO壱番館」の話を書きたいと思います。

※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

米国の本家と同い年のシニアブロガー。毎晩長いときは30分に及ぶ歯磨きを欠かさない。最近覚えたメルカリへの出品にはまっている。
17年乗った作業用の軽トラックをカッコいいカーキ色の新車に買い替えた。

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