女性は年齢や環境の変化によって心身ともに変化が起こりやすく、それには女性ホルモンが大きく関係しているといいます。ファンファン福岡の読者で40歳代の2人に、女性ならではの体調についてや日ごろ気になることを聞き、野崎ウイメンズクリニック(福岡市中央区)の野崎雅裕院長に、健やかに毎日を過ごすヒントを教えてもらいました。※取材は新型コロナウイルスの感染予防対策のもと実施しました。
【野崎雅裕先生プロフィル】 女性医学の専門医として九州大学病院や九州中央病院で不妊治療、ホルモン療法、漢方療法など女性の心と体に関する医療に従事。2010年に野崎ウイメンズクリニック開院。女性が生涯を通じて深くかかわる女性ホルモンを上手にコントロールするアドバイスやケアに力を入れる。
健康や美容に関係深い女性ホルモンのこと教えて!
野崎ウイメンズクリニック 院長 野崎雅裕先生に聞きました
<斎藤さん>最近はどのような相談が多いですか?
<野崎先生>体の不調を訴えられる⼥性が増えているように感じます
⾃粛⽣活や新しい⽣活様式、働き⽅の変化が影響しているのか、相談に来られる⽅が増えているように感じます。ほかにも、いろいろな原因があると考えられますが、 それは⼥性ホルモンが関係しているかもしれません。
<阿比留さん>女性ホルモンが少なくなると何が困るのでしょうか
<野崎先生>気分の落ち込みや健康問題が現れやすくなります
閉経の時期をはさんだ前後10年間、一般的には45~55歳頃を“更年期”といい、この時期に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減ってホルモンバランスが崩れ、心や体にさまざまな不調が現れる人がいます。女性ホルモンのバランスの乱れが精神神経症状などを引き起こすこともあります。 また、子どもの自立などで母親としての役目が終わり、夫婦関係など人生の中でも喪失体験が多く出現し、ストレスを受けがちです。加えて、この度の新型コロナウイルスによる日常生活の変化が重なり、抑うつや不安をきたしやすくなる人が増えています。
<斎藤さん>ほかにも女性ホルモンの影響はありますか?
<野崎先生>エストロゲンは肌や指の変形にも働きかけます
エストロゲンが減少すると体内のコラーゲンも減り、皮膚が薄く乾燥しやすくなります。日常的にかゆみや炎症を引き起こし、「手湿疹」に悩む人もいます。 また、手指の関節の腫れ、痛み、しびれ、変形が第一関節に起こる症状を「ヘバーデン結節」、第二関節に起こる症状を「ブシャール結節」といいますが、更年期の女性に多いことから、女性ホルモンに関係していると考えられています。 粘液嚢腫(のうしゅ・ミューカスシスト)と呼ばれる水ぶくれが生じ、骨が変形することも。自己免疫疾患の一つ「関節リウマチ」と症状が似ていて一見、見分けがつきにくいため、専門医に診断してもらいましょう。
<斎藤さん>救世主の成分があるって本当ですか?
<野崎先生>大豆由来のエクオールが注目されています
「エクオール」とはエストロゲンとよく似た働きをする成分で、大豆イソフラボンが腸内細菌の力で変換されて生まれます。大豆製品を食べると大豆に含まれるイソフラボンの一種である「ダイゼイン」が腸内細菌によってエクオールに変化し、 体内に吸収されるのです。 エクオールを1日約10㎎摂取することで、ホットフラッシュ(顔のほてり)などの更年期症状の改善、 骨密度の低下抑制、女性のメタボ改善など、さまざまな効果があると研究で報告されています。 更年期の女性ホルモンの減少はくい止められませんが、自分に合った対策で症状をやわらげることはできます。 対策の一つに「エクオール」の摂取が注目されています。
<阿比留さん>「エクオール」について、もっと教えて!
<野崎先生>体内で作り出せる人は2人に1人といわれます
実はエクオールを作る腸内細菌を持っているのは、日本人女性では5割程度。2人に1人は、大豆イソフラボンを摂取しても、体内でエクオールを作ることができません。 腸内細菌のバランスは、食生活に深く関わりがあるとされます。さらに、若い人になるとエクオールを作り出せる人の割合が2割程度にまで減少するとの報告もあります。エクオールを作りだせる人でも大豆を毎日食べ続ける必要があるので、サプリでの摂取が手軽でおすすめです。
野崎先生から読者へメッセージ
女性ホルモンによる心身の変化は、誰にでも訪れるものです。ご自身だけで解決するのではなく、ぜひお近くの産婦人科に相談してみることをおすすめします。