私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
小学三年生の秋、祖母に誘われ椎の実を拾いにS山へ出かけた。
秋晴れの気持ちの良い日で午前中だけでもかなりの収穫があった。
お昼は大きな岩の上で祖母が作ったおにぎり。
急いで食べ終えると
「ちょっとその辺見てくるね!」と言い残し一人で“探険”に出かけた。
この辺りの池にイモリがいると友達に聞いていたからである。
山道を登り、二又の道を右に折れると教えられた池に出た。
風は全く吹いておらず水面は鏡のようだった。
それらしい所を探しながら池の周りをぐるっとまわってみたが、イモリどころか何も動くものがいない。
あまり待たせると祖母が心配するので探索を切り上げ、来た道を戻ろうとしたとき妙なものが目に入った。
二本の大木が全く隙間なくねじり合わされたようになっている!
不思議な光景に見入っていたら祖母が山道を登って来た。
「おばあちゃん、この木変わってるねえ」
「本当だね……さあ、今日はもう帰ろうか」
そう言うと先にたって足早に下っていく。
慌てて後を追った。
その晩、煎った椎の実を食べていると、祖母が次のような話を聞かせてくれた。
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祖母が七歳くらいの頃、村に住むOさんという若い衆がいなくなった。
数日前に山に茸(きのこ)を採りに行ったまま帰って来ない。
総出で山を探していると遠くから助けを呼ぶ声がする。
声が聞こえた方に駆けつけると、Oさんがねじれた二本の木の間に挟まっていた。
不思議なくらいぴったりと挟まっており、数人がかりで引っ張っても抜け出せない。
隙間に笹の葉を入れて滑りを良くし、金棒を突っ込み皆で力を合わせてなんとか助け出した。
「突然大風が吹いて気がついたら木の間に挟まっていたんだ。山の神の日に茸採りに行った罰だ」
村に帰る道々、Oさんはすまなさそうにそう言った。
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「山の神の日?」
「神様が木を数える日。キリの良いところまで数えたら二本の木を捻って目印にするそうだよ。Oさんはそこにいたから挟まれたんだね」
そう言うと祖母は椎の実を頬張った。