福岡市公式インスタグラム連動企画「#fukuokapeople」。福岡市で魅力的な活動をしている様々な方にフォーカスを当て、プロジェクトの内容はもちろん、活動の裏側や熱い思いを伺います。今回は、“花いけ”のパフォーマンス集団「DENKO-SEKKA(伝巧節花)」の代表・猪俣悟さんにインタビュー! 見る人の心を奪い、息を飲むダイナミックな“花いけ”を繰り広げるDENKO-SEKKAの活動の真意とは? パフォーマンスに込めたメッセージや今後の展望も伺いました。
福岡市の花業界を盛り上げたいという、純粋な思いから全ては始まった
「DENKO-SEKKA(でんこうせっか)」は、フラワーデザインショップ『ダブルクラウン』の代表・猪俣悟さんを筆頭に、福岡市内で花屋を営むフローリスト5名で構成された花のプロフェッショナル集団。全員が“花いけ”のパフォーマーでありながら、状況に応じて花業界の広告塔になったり、アンテナショップ的に振る舞ったり、独創的なフラワーアレンジメントも注目を集めています。普段はフローリストとして各々忙しくする中、なぜDENKO-SEKKAを結成したのでしょうか。
猪俣:「例え話ですが、飲食店だと新しいメニューを作り、革新的な仕掛けやサービスを導入するなど、多くのお店が様々な施策を盛んに行っていますよね。けれど花屋に関しては、そういった動きが極端に少ないのが実情です。また福岡は花の生産量が全国上位なのですが、福岡市は生花の消費量が全国で下の方。花の業界全体が低迷していることに危機感を覚え、どうにか上向きに変えられないかと考えていました」
日々花を扱う者として、福岡の花業界を少しでも盛り上げたいという思いが強くなったと語る猪俣さん。そんな熱い志のもと、2016年に“花いけ”パフォーマンスグループ・DENKO-SEKKAを立ち上げたのです。
“生け花”ではなく“花いけ”。独創的なパフォーマンスに懸ける思い
2016年にグループ結成後、年に1〜2回のペースで自主公演を開催し、まちのイベントや商業施設の催事にも招かれ、ゲストパフォーマンスライブを多数実施。また福岡市が展開する「一人一花運動」キャンペーンにも参加し、警固公園や百貨店の装花監修も務めました。公式サイトで過去の作品やパフォーマンスライブを観ることができ、臨場感溢れる佇まいが画面越しから伝わってきます。
猪俣:「僕らがパフォーマンスを行う最大の目的は、花に関心がない人にも『デザインがカッコいい!』『花ってこんなに面白いんだ!』など、花の魅力に気づいてもらうことです」
伝統的な“生け花”が花の美を追求する静的な作品だとしたら、DENKO-SEKKAの“花いけ”はスタンスも趣旨も全く異なります。三味線奏者や和太鼓奏者、ダンサーと共演しながら、音と光に合わせてスピーディーかつダイナミックに展開され、数分間の一曲の中で奇想天外なフラワーアートが作られるのです。その躍動感と世界観に魅了される人が続出!
猪俣:「どんなにハイレベルで美しい生け花を展示しても、見る人が花の品種や技法を知らなければ作品の理解が難しいですよね。一般の方も『この作品のなにがすごいかわからない…』と思うのではないでしょうか。DENKO-SEKKAは子供から大人まで、多くの関心を集めたいと考えているので、美を追求した玄人向けの作品ではなく、誰もがハッとするようなパフォーマンスを心がけています。ユニークな動きやインパクトのある演出を盛り込んでいるのは、そういった狙いもあるんです」
凛とした姿、朽ちゆく姿、生き返る姿を見て、花を命の力を知る。
DENKO-SEKKAのステージでは、パフォーマンス中にあえて茎を折ったり、葉をちぎったり、時には花を投げ放ったりと、アクロバティックな演出が印象的。一見すると過激なパフォーマンスと捉えられそうですが、そこには花の生命力を知ってもらいたいという本質的な願いが込められているのです。
猪俣:「僕たちが伝えたいのは花の命です。実際に舞台の中で花を痛めつけるような演出がありますが、花の傷ついた姿や死にゆく様も含め、花のいろんな表情と、その裏側に宿る生命力を感じてもらいたいと思っています」
日頃の花のふれあいについても、少し角度を変えてみてほしいと猪俣さんは語ります。
猪俣:「花を買いたいと思ったら、まずは道端に生えている野花に目を向けてください。触れてみるとわかるのですが、お店の切り花と、地に生えている花とでは、茎の温度が違うんです。生きている花のあたたかさに気づくはず。子供たちにも野生の花にどんどん触れてほしいな。実際に引っこ抜いたり、葉ごと握りつぶしたりしながら、どうすると花が朽ちるのか、どうやったら花が生き返るか、植物を通して「命」について学んでもらいたいですね」
花への関心度を高められるよう、新たな取り組みにもチャレンジ!
コロナ禍に入る前は大阪や東京からのオファーが相次いでいたDENKO-SEKKA。今は福岡市を中心に、各種イベントや商業施設のフラワーアレンジメントを手がけながら、新たな試みについてもビジョンを膨らませているそうです。
猪俣:「2020年にチーム内で一つ大きな約束事をつくりました。それは『“花いけ”のパフォーマンスは、暗転・明転が効くステージのみで行うこと』。これは、演目のクオリティーと世界観を最優先する決意表明のようなものです。もちろん、今後も花関連のイベント装飾に関わりながら花業界に貢献したいですし、さまざまな手段で花の魅力を伝播していけたらと思います」
また、男性をターゲットにした取り組みも積極的に行いたいとか!
猪俣:「男性が花に触れられる機会をつくり、男性の方々に花の魅力を伝えていきたいです。花に興味がない人をいかに引き込むかが花業界の明暗を分けると思いますので、その層の関心を上げられるよう働きかけていきたいです。子供だけでなく、男性向けの花のワークショップもいいですね!」 花を通じ、今まで味わったことのない驚きや感動を提供し続けるDENKO-SEKKA。猪俣さんの中で温められている新しい取り組みの実現が楽しみですね。パワーアップし続けるパフォーマンスにも期待を寄せつつ、イベントの開催を心待ちにしましょう。これからもDENKO-SEKKAにご注目ください!