お金の勉強はいつから?どうやって教える?子どもへ伝える“投資教育“大作戦!

前回はFP(ファイナンシャルプランナー)坪倉さんに登場いただき、「教育資金の育て方」についてお伝えしましたが、続いて「お金と子育て」のもう一つの側面からお話を聞いてみましょう。

ずばり、「親として、“お金”についてどのように教えるのか?」 私たちはお金の価値や活用法について、子どもにどんなふうに伝えればいいのでしょうか? 坪倉さん曰く、そこにも“投資”という考え方が生きてくるんですって。ライターの大内 理加さんがお聞きしました。

目次

金融教育は高校の必修科目!お金との付き合い方を学校でも学ぶ時代に

▽金融庁が発表している中高校生向け「基礎から学べる金融ガイド」より
https://www.fsa.go.jp/teach/kou3.pdf


皆さんは幼い頃に家で「ムダ遣いせんと!」「貯金ばせんね!」なんて怒られたことはありますか?もしくは、もらったお年玉を使うことなく親に貯金させられたとか…。

私も経験がありますが、こういった幼少期の思い出がお金に対する苦手意識の始まりのような気がします。「お金って、使っちゃいけないモノなんだ」と。

こうした刷り込みは、大人になってからの経済活動にも大きな影響を及ぼします。お金を貯め込むこと自体が目的になってしまったり、反動で使い過ぎてしまったり。もちろん、大人になれば経済活動は自己責任ですから悪いことではありません。でも、もっと人生を楽しみながら、お金といい関係を築ける方法があるはずです。

そのひとつが、今まで学んできた“投資”、つまり、先々の利益のためのお金の使い方ではないでしょうか?

金融庁が発表している中高校生向け「基礎から学べる金融ガイド」より

実は、学校でも“お金の教育”について変化が訪れようとしています。

2022年4月から、高校での金融教育が必修化。金融リテラシーを育てるためのカリキュラムが導入されるのです。今までも家庭科でお金に関する授業は実施されていましたが、そのほとんどは家計管理など消費者目線だったそうです。これからは金融商品や保険など、資産形成の知識も学べるとか。

各学校での取り組みはこれからの話ですが、金融庁では、金融教育を担う家庭科教師に「つみたてNISA」を体験してもらうシンポジウムや意見交換会を開催。

22年以降は、金融庁の職員による出張授業も予定されています。さらに、「日本証券業協会」といった金融業界も、指導案や教材の提供などで学校をサポート。官民が一体となった、新しいお金の勉強が始まるのです。その前に家庭でも下地を作っておけば、高校からの授業もより親しめるのではないでしょうか。

▽参考:「金融経済教育について」金融庁
https://www.fsa.go.jp/kouhou/kurumaza/aomori20191213/03.pdf

▽「体験して学ぼう!金融・経済・起業 金融クエスト」日本証券業協会
https://www.jsda.or.jp/gakusyu/edu/curriculum/quest.html

身の回りのツールを活用して、お金への質問を引き出す

小学生の平均的なお小遣い額。

▽参考:知るぽると 金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査」(第3回) 2015年度調査https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/kodomo_chosa/2015/pdf/15kodomo.pdf

子どもにとっての一番身近な経済活動と言えば、まずお小遣いの運用ですよね。坪倉さんのお子さんはおうちでお手伝いをして“資金”を稼ぎ、それを賢く“運用”されているようです。一般的にも、自分で買い物ができるようになったくらいの年齢、つまり低学年時には7割を超える子どもが両親や祖父母などからお小遣いをもらっています。

さらにお年玉が加わると、子どもには高額な金額が手元に残りますよね。こうした自分のお金について、親としてどのように指導するべきなのでしょう。

坪倉さんは、子どもたちに「お金は貯めておきなさい」とは決して言わないんですって。

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坪倉さん:「私は、単に貯金という考えを植え付けるのは教育ではないと考えています。お金を使うことで得られるもの、さらに稼ぐとはどういうことか、お金の循環にも関心を持って欲しいんです。

また、お金は投資を説明するためのツールでもあると考えています。お小遣いで好きなマンガを買ったとして、それで自分の生活が豊かになれば無駄遣いではないんです。自分の心の成長に役立てるために、お金を投資したのだと考えることができます。これって、“お金”を“時間”や“勉強”に置き換えることもできますよね。

将来なりたい職業のために勉強をするとか、目標に向けて何を“投資”すれば自分の利益になるのか。それを考えることができるようになる。」

ーなるほど!投資の考え方が身に付けば、いろんな局面で役に立つわけですね。それなら、子どもに伝えるのは何歳ぐらいが適切なのでしょうか?

坪倉さん:「子どもが興味を持ち始めた時がベストでしょう。私の家でも同様ですが、子どもって、こちらから一方的に教えた内容は頭に入らないんですよ。だから、自分の欲しいものができたタイミングとか、一緒に買い物に行ったタイミングとか。向こうから質問が来るのを待ちます。」

ー確かに、頭ごなしに言われると反発する気持ちが出てくるものですよね。でも子どもの気分次第となると、親としてはヤキモキしてしまいそうです。お金について興味を持たせる良い方法はありますか?

坪倉さん:「そこで、「マンガ本大作戦」なんですよ!うちの子はマンガや本が好きなので、目につく場所にコソッと置いておくんです。」

ーいわゆる“好きなモノトラップ”ですね(笑)ちなみに、おすすめの作品はありますか?

【坪倉家がハマった!マネーを学べる本3選】
① コミック版 日本の歴史 戦国人物伝シリーズ(マンガ) https://www.poplar.co.jp/comic-rekishi/
歴史上の偉人を一人一冊にまとめたシリーズ。誰でも知っている有名人からちょっとマニアックな人まで、幅広くカバーしているのも人気の秘密。

「最近のマンガは時代背景もしっかり出ているので、当時のお金を知るツールとしてもぴったり。お気に入りの織田信長の巻は、武将としてもかっこいいんですけど、“楽市楽座”とか“関所撤廃”とか、今で言うイノベーションで経済的に成功している。そのあたりの仕組みは、マンガで勝手に学んでくれました」

② インベスターZ(マンガ)三田紀房 http://morning.moae.jp/lineup/291
「ドラゴン桜」など数々の有名作品を手がける三田紀房による株式投資学園マンガ。2017年に全21巻で完結。翌年にはドラマ化されています。
「中学生や高校生が投資を実践するストーリーで、子どもにはとっつきやすいみたいです。内容的には、大人にも十分学びになるクオリティー!」

③ 笑えて、泣けて、するする頭に入る!超現代語訳 幕末物語(本)房野史典 https://www.gentosha.jp/series/chogendaigoyaku_bakumatsumonogatari
歴史マニアであり、お笑いコンビ「ブロードキャスト!!」のツッコミ担当でもある房野史典の著書。幕末を舞台にしていますが、裏話や笑えるエピソードも満載でマンガのように読みやすいと話題の一冊です。

「お笑い好きな子どもは最初からハートを掴まれていましたね。幕末を舞台に、インフレや財政破綻についても紹介されているので学びに最高です」

坪倉さん:「この3冊は中学校の長男だけでなく、小5の次男も一緒になって楽しんでいます。まずは歴史にハマり、お金や投資、社会の仕組みに興味を抱く。トラップとしては大成功です(笑)。
最近では子どもたちに「コテンラジオ」を聞かせたところ、見事にハマり、朝食を食べながら自主的にほぼ毎日聞くようになりました。親としても歴史と投資の勉強はつながるところがあり、とても重要なものだと考えています。」

投資教育の一番の近道は家庭内のコミュニケーションにあり!

好きなものトラップの他にも、坪倉さんは日頃から子どもの興味を引き出す仕掛けをいろいろと用意しているそうです。

坪倉さん:「実は以前、子どもに100兆ドルのお札をあげてみたんです。といっても、100兆“ジンバブエドル”。アフリカのジンバブエ共和国のお札なのですが、ここではハイパーインフレが起こって、2009年頃には日毎に物価が倍になる事態になりました。

その中で100兆ドル札が発行されていたんです。100兆というとすごい大金に思えますが、日本円に換算すると約2500円なんですよ(2009年2月デノミ時点、最終的には約0.3円になり、2015年に廃止)。
子どもも面白がってくれて、このお札をきっかけにインフレや海外の物価について説明することができました。」

他にも、すっかり身近になったキャッシュレスサービスを利用したこんなアイデアも…。

坪倉さん:「PayPayの“ボーナス運用サービス”で投資を体験させるのも効果的でした。これはPayPayボーナスを、コースを選んで投資できるPayPay証券株式会社の投資の疑似サービスで、実際の投資商品の値動きに連動してポイント数が増減する仕組みです。

未成年でも参加できるので、子どもに投資のシミュレーションを体験させるのにうってつけ。スマホ一つあればできるので、親子でチャレンジしてみると盛り上がりましたね。」

坪倉さんはもうひとつ、子どもの興味を引き出す仕掛けを用意しているそうです。それは、夫婦の会話の中に気になるワードを忍ばせること。

坪倉さん:「子どもって家庭での会話をよく聞いているものなんですよ。そもそも言葉の習得自体も、最初に親が話していることから身に付けるでしょう。聞いて学ぶという流れはとても自然なんです。だから、日頃から夫婦でお金や投資について話しています。私の方が詳しいから妻に解説することもありますが、どちらか一人ではなく必ず二人で取り組むようにしています。」

ー夫婦間の会話が増えるので、家庭内のコミュニケーションも深まる気がします。逆に、親としてこれはNGという行為はありますか?

坪倉さん:「お金のことでケンカするシーンは絶対に見せない。子どもにとっては、お金のせいで言い争いになるとポジティブなイメージは持てないでしょう。そうすると質問や興味は生まれないですよ。ケンカ自体はしょうがないけど、子どもの前ではお金のケンカはダメです。」

小学生〜高校生までの家庭の会話テーマに関するデータ。親の職業はどの年代でも気になっている様子。特にFPである坪倉さんにとっては仕事の話も、お金の勉強の入り口になる。

▽参考:知るぽると 金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査」(第3回) 2015年度調査https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/kodomo_chosa/2015/pdf/15kodomo.pdf

ー家庭内で質問しやすい空気をつくることが重要なんですね。けれど、もしお金の使い方を間違ってお小遣いを無くしたり、後悔したり、失敗してしまった場合にはどうすればいいのでしょうか?

坪倉さん:「我が家では、お小遣いの使い道は本人に任せています。母親の意見は違うかもしれませんが、私はむしろ今のうちに失敗して欲しいんです。子どものお小遣いのメリットって、自分が持っている分を超える損失は出ないことですよね。

大人なら、ローンやクレジットがあるから、持っている額以上の損失が出る可能性がありますけど。だから子どもが後悔しても、私たちが補填することはしません。

ただし放置するわけでは無いんですよ。困った時にこそ、子どもたちがいつでも相談できる関係性が生きてくるんです。」

参考:知るぽると 金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査」(第3回) 2015年度調査

小学生〜高校生までのお小遣いの使い道。成長するにつれて交際費など用途が広がっている。

ー社会に出る前に、お金の失敗を経験できれば、それも学びにつながりますね。

最後に、中高校生になると、コミュニケーションもより複雑化しますよね。これから家庭内に取り入れようと考えているものはありますか?

坪倉さん:「ネット上で遊べるブロックチェーンを活用したゲームを教えようかな。私自身はゲームをしないのですが、子どもの興味あることにつなげて経済の仕組みの話ができそうだと思って。ブロックチェーンって何?仮想通貨って何?とかそういう質問が来るのを期待しています。そうすると、自然な流れで経済やお金についての話ができるので。」

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マンガや日常会話、ゲームまで、お金を学ぶきっかけ作りは、日頃家族が好きなモノを知っているからこそ準備できるもの。何より、「子どもは親の背中を見て育つ」という格言そのままに、両親が金融についての知識を増やそうと努力している姿が一番の刺激になるのではないでしょうか。

■株式会社えんメディアネット 代表取締役 坪倉 伸一
地場不動産のパイオニア「えんホールディングスグループ」の子会社として「株式会社えんメディアネット」を設立。WEBメディア「フクリパ」を通して福岡のトレンド情報を発信し続けている。一方で、ファイナンシャルプランナーとして資産運用に関わる活動にも力を入れている。

文=大内 理加

※この記事内容は公開日時点での情報です。

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