受験に必要なのは子どもの学力だけではありません。家庭環境や夫婦の考え方、金銭的な問題など、デリケートな要素が絡んでいます。だからこそ、いくら友達でも簡単に口を出せない問題だと思うのですが、私のママ友には1人、ゴリゴリに受験を勧める「お受験アドバイザー」がいたのです。
教育ママの余裕をうらやましく思っていたけれど…
娘の保育園時代に知り合ったママ友Aは、当時から教育熱心でした。
「今日は幼児教室だから」
「今から英会話だから」など、毎日忙しそうにバタバタ走っていたイメージです。
私はそんなAを「余裕があっていいな」と眺めていました。というのも、習い事は親の負担が大きいですよね。月謝はもちろん、送り迎えや宿題の見守りなど、時間もかなり取られます。
わが家は時間的にも金銭的にも余裕がなく、娘が保育園の時に習っていたのは週に1回のピアノだけでした。他にもいろいろ経験させてやりたいと思いながらも、あの頃はピアノだけで手一杯でした。
それでも私が卑屈にならずにいられたのは、おそらく余裕がなさ過ぎてママ友とのランチやお茶に行く機会がなかったから。その事実に気付いたのは、娘が小学校1年生の時でした。
小学校の入学式から2カ月後、私は初めて、保育園時代からのママ友宅で開かれる飲み会に参加することになりました。保育園と違って送迎不要の小学校では、ママ友と顔を合わせる機会がほとんどありません。Aほか、久しぶりに3人のママ友に会えるのがとても楽しみでした。
保育園時代の懐かしい思い出や小学校生活の悩みなど、思いっきりママトークをするつもりでワクワクしていた私、しかし残念ながら、その期待は裏切られてしまいました。
楽しいはずの飲み会で“お受験ススメ”が大爆走!
その日、私がちょっと遅れて到着すると、その場はAの独演会と化していました。私は、Aの子どもが保育園の頃から塾ざんまいだったので、てっきり小学校受験を目指しているのだと思っていました。しかし、実は中学受験に向けての足場作りだったというのです。そしてAは私たちに、中学校受験をする気があるかどうか尋ねました。
私は、娘は小学校に入学したばかりで中学なんてまだまだ先だと思っていたし、他のママ友も
「まだ考えていない」
「できたらいいけど」と、全員あいまいな反応でした。
すると、Aはいきなり
「そんな気持ちで合格するわけがない!」と私たちを一喝。そして自分が子どもの教育にどれだけ時間を割いているか、複数の塾に通わせどれだけ費用を掛けているかを語りだしたのです。
私が
「そんな時間もお金もないわ」と思わず言ってしまうと、Aは
「高校受験でいいと思ってる? 今からそれじゃあ○○高校にすら入れないわ!」と言い放ちます。
あまりの言い方に、私は腹が立つより、あきれてしまいました。もう会話に参加する気にもなりませんでした。 他のママ友が話を変えようとしても、Aはヒートアップする一方。ついには、わざわざ自宅まで戻り、持ってきた教材を
「これを寝る前に毎日30分必ずやること!」と私以外のママ友に配り、場を凍り付かせたのでした。
不合格の烙印(らくいん)を押されて教材をもらえなかった私ですが、その夜1人リビングでビールを飲みながら「いくらリッチで余裕があっても、人の気持ちを分かろうとせず、自分の考えを押し付ける人にはなりたくないな…」と、しみじみ思ったのでした。
(ファンファン福岡公式ライター/あいちー)