私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
「霧の深い夜、船にいると正面から向かってくる別の船の影が見えることがある。面舵を切るとそちらに、取舵を切るとまた同じ方向に進んでくる。それは幽霊船だから下手に避けようと舵を切ると座礁する。真っすぐ進むと無事に抜けられるんだ」
幼い祖母は、若い頃に船に乗っていた親戚のおじさんから、そんな話を聞かされていた。
それから十年くらいたったある日、祖母が山向こうの村から帰る途中、急に濃い霧が出た。
このうえ日が落ちると道が分からなくなる…
祖母が急ぎ足に細い山道を進んでいると、誰かが霧の中をこちらに向かって来る。
道が狭いのでやりすごそうと右に寄るとその人影も同じ方向に寄る。
逆に寄るとまた同じ方に動く。
大きく避けようとしたとき、おじさんに聞いた話が頭に浮かんだ。
「このまま行こう。もしぶつかってもあやまればいい!」
嫌な予感がした祖母は心を決め、真っすぐ道を進んで行った。
あと少しでぶつかるところまで近づいたとき、相手は大きく横にずれ、そして消えた。
消える直前、霧の中にうっすら自分と同じくらいの女の子が見えた。
はっとして相手の消えた方を確かめてみると、そこは道が崩れ、崖になっていた。
冷や水をかけられたような気がして家路を急ぐ祖母の背後から声が聞こえた。
「かしこいな〜かしこいな〜」
祖母が語った不思議な話・その肆拾陸(46)「杣人の話」
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