福岡の書店員さんに福岡ゆかりの本を紹介してもらうファンファン福岡の「福岡キミスイ本」シリーズ。37回目は猫本専門書店「書肆 吾輩堂(しょし わがはいどう)」(福岡市中央区)の大久保京さんを訪ねました。あわせて、この時期に読みたい話題の7冊を紹介します。
福岡市の猫本書店「書肆 吾輩堂」が初出版した絵本
「暦売浮世情」 ユカワアツコ著
―静かな住宅街にある「書肆 吾輩堂」に来ました。こんにちは!
こんにちは。当店は“猫本”を専門に古本、新本を5,000冊ほど扱っています。2013年にネット書店をオープンした後、18年に実店舗を構えました。猫好きのお客さん、特に大人の女性が多く来られます。
―今回、大久保さんが紹介するのはどんな本ですか。
当店が11月に初めて出版した書籍で、江戸の「暦売」の話を描いた「暦売浮世情(こよみうりうきよのなさけ)」(2,200円、税込み)です。作者は、鳥などの細密画を描くイラストレーターのユカワアツコさん。ユカワさんが2019年からインスタグラムに投稿していた連載をまとめた絵本です。
―内容は。
動物たちを擬人化した物語です。江戸では年末に暦を売り歩く「暦売」がいたそうです。暦売の猫たちが仕事後に、川魚料理店に集って繰り広げる出来事が描かれています。ユカワさんが手掛ける動物の描写がとても面白くて。店主“ ゴイサギ のおやっさん”が客のけんかの仲裁なんかをするのですが、そのキャラクターが好きですね。
―「暦売浮世情」を書籍化したきっかけは。
以前、当店でユカワさんの個展を開催した縁から、インスタグラムに上がっているだけではもったいないと思い、書籍化を持ち掛けました。和とじ風のデザインで、表紙は浮世絵と着物の柄です。装幀(そうてい)は福岡のデザイナー、川村晃子さんにお願いしました。
―猫本の書店は珍しいですね。どんな思いがありますか。
昔、猫を飼ったときに、猫の本を読みたい、猫の書店があったら面白いなと思っていたんです。美術館の学芸員の仕事を経て、書店のことを一から勉強しました。読み応えがあり、自分が読みたい本を置いています。本には作者、デザイナー、職人の意図があります。実際に手に取って、その計算された思いを感じ取ってもらえたらうれしいです。
―猫の雑貨などもそろっていて、わくわくする空間でした。ありがとうございました!
続けて話題の7冊を紹介します。
「星を掬う」【中央公論新社】
町田そのこ著/1,760円(税込み)
千鶴が夫から逃げるために向かった「さざめきハイツ」には、自分を捨てた母・聖子がいました。他の同居人は、娘に捨てられた彩子と、聖子を「母」と呼び慕う恵真。「普通」の母娘の関係を築けなかった4人の共同生活は、思わぬ気づきと変化を迎え―。町田そのこ、2021年本屋大賞受賞後第1作目は、すれ違う母と娘の物語。
「らんたん」【小学館】
柚木麻子著/1,980円(税込み)
「女が手を取り合えば、男はいつか戦争ができなくなる」。大正時代最後の年、一色乕児は、渡辺ゆりにプロポーズ。ゆりが出した受諾の条件は、シスターフッドの契りを結ぶ彼女の師・河井道と3人で暮らすこと。明治、大正、昭和―、女子教育の黎明(れいめい)期、ふたりの女性が世界を変える。著者、構想5年! 満を持して放つ女子大河小説!
「つくおきの“悩まない”おかず」【光文社】
nozomi著/1,210円(税込み)
ブームとなったレシピ集「つくおき」シリーズ最新刊。111万部超の売り上げを誇る人気シリーズで、今回は、mizkan(ミツカン)と初のコラボです。市販の3本の調味料をベースに味付けするため、失敗知らず。「ぶりの甘酢照り焼き」など下味をつけて冷凍しておくだけのレシピも充実。
「いつまでも消えない「痛み」の正体」【青春出版社】
牛田享宏著/1,584円(税込み)
腰痛、肩こり、ひざ痛…日本人の5人1人が悩んでいる慢性痛。なかなか治らない慢性的な痛みは、実は「脳」が作り出しているのです、と本書。「痛み治療」の名医が、慢性痛のメカニズムや、脳に働きかけて痛みを克服する方法を紹介します。
「今日のごはん、これに決まり!Mizukiのレシピノート決定版!500品」【学研】
Mizuki著/1,650円(税込み)
大人気ブロガーMizukiさんのブログ掲載レシピを総まとめ! 2014年からはじめたブログレシピの総数は3,000以上。その中からよりすぐりの500レシピを掲載。毎日のおかずはもちろん、これからの季節にうれしい鍋や、ハレの日のごちそうレシピ、お菓子まで、これさえもっておけばもうごはんに迷う心配はゼロです。
「タイムスリップしたらまた就職氷河期でした」【双葉社】
南綾子著/803円(税込み)
タイムスリップしたら、また就職氷河期だったけど、なぜか世直しに関わることに⁉ 2019年、“アラフォー非正規”の凛子は人生に絶望。就職氷河期世代のための再就職セミナーに向かうと雷が落ち、1999年にタイムスリップ。就活中に出会い仲が良かった鶴丸とも再会。2度目なら人生をやり直せるかもしれない、と2人はもくろみます。
「どう考える?『みどりの食料システム戦略』」【農文協】
農文協編 1,100円(税込み)
2050年に向けて、農林水産業のCO2ゼロエミッションの実現、農薬の50%削減、化学肥料の30%低減、有機農業の面積を25%(100万ha)に拡大、といった思い切った目標を掲げる農林水産省。日本農政の大転換か、机上の空論か。識者の分析で戦略を深掘りします。消費者団体代表や農家の歯に衣着せぬ提言も。
いかがでしたか。この冬を一緒に過ごす本を探してみては。