大阪のインテリア・DIY企業「友安製作所」が福岡・冷泉町にカフェを構えた理由とは?

大阪府八尾市でに本社を置き、インテリアやエクステリア、DIY商品を中心としたEC事業のほか、工務店事業やレンタルスペース事業など幅広い事業を展開する「友安製作所」。

2015年には東京・浅草橋に、2017年には大阪・阿倍野にインテリアとDIYとカフェが融合した複合カフェをオープンするなど、オリジナリティあふれる取り組みが注目を集めている。

その「友安製作所」が、2021年6月、3店舗目となる複合カフェを福岡・冷泉町にオープンさせた。東京、大阪の次に福岡を選んだ理由や狙いなどについて、ライターの寺脇 あゆ子さんが代表取締役社長の友安啓則さんに話を聞きました。

目次

実店舗をオープンさせることで、DIYマーケットを拡大させる!

大阪・八尾市を拠点に国内外を飛び回る友安啓則さん

1963年に設立し、現在は3代目の友安啓則さんが社長を務める「友安製作所」。アメリカの高校・大学・大学院で学びMBAを取得した友安さんは、現地の商社で働き、会社を継ぐことを考えていなかったそう。

けれど、お父様が体調を崩したことがきっかけで帰国。当初はお父様から反対されたものの、同社で働くことを決め、自社ブランド「Colors(カラーズ)」を立ち上げ、インテリア商材の企画・販売事業をスタートさせた。

現在、EC事業は売上の65%を占めるまでに成長したが、友安さんは次なる手として、インテリアとDIYとカフェが融合した複合カフェをオープンさせたのだ。

友安:「当社は『Add Colors to everyone’s home 全世界の人々の生活の一部に自社製品を。』をミッションとして掲げています。このミッションをコンプリートするには、EC事業だけではできないのです。

となると、リアル店舗が必要です。インテリアショップは敷居が高く気軽に入りづらいもの。老若男女が気軽に利用できるのはカフェだと考え、オンラインショップで販売している商品を使った内装のカフェを開くことにしました。」

カフェであれば、これまでDIYに興味を持っていなかった客層にもDIYの魅力を伝えられるため、マーケットの拡大にもつながるという想いもあったという。

2015年、東京・浅草橋にオープンさせた「友安製作所Café」

2021年6月、東京、大阪に続き、「友安製作所とハンバーガー」を福岡・冷泉町にオープンさせた。気になるのは、そのユニークな店名だ。

友安:「私たちはビジネスにおいて“違和感”が大切だと考えています。“友安製作所”と“ハンバーガー”という組み合わせって、違和感を覚えませんか? 

店舗の前の通りを歩いていて、3回目くらいで気になって、7回目くらいでググってもらえたら大成功です。この店の存在を知ってもらえることになりますから。店名だけで存在を知ってもらえるのは、広告費に換算するとかなり大きいものです。」

そして、ハンバーガーだった理由は、友安さんがハンバーガー好きだったから。長年、アメリカで暮らしていたというのもあったのだろう。2015年にカフェ事業をスタートさせた当初からハンバーガーを提供しており、その味は高く評価されている。

友安:「いろんな国でハンバーガーを食べてきましたが、日本のハンバーガーがいちばん美味しいんですよ。アメリカはバンズがあまり美味しくないですし、パテは美味しいけどソースが大味だったりします。

その中で、当店では素材にこだわり食い道楽の私が本当に美味しいと思えるハンバーガーを追求してきました。バンズも大阪で焼き福岡に送っています。

また、うちのようなコンセプトカフェって、料理に対してあまり期待されていない感じがするんです。私自身、食べることが好きですし、期待されていないというのが凄く悔しくて。“何を食べても美味しい”と言っていただけるよう、料理のクオリティもしっかり追求しているんですよ。」

お客様は通りすがりではなく、目的意識を持って来店する

櫛田神社や冷泉公園の近くに「友安製作所とハンバーガー」はある

東京や大阪の企業が福岡に進出するとなると、大名や今泉など人が集まるエリアを選ぶケースが多い。けれど、「友安製作所とハンバーガー」は、博多区冷泉町に店を構えた。

そして、そもそも東京、大阪に続き、福岡にカフェを開くことになったのは、どのような理由があったのか。

友安:「2019年、あるイベントに登壇するために福岡を訪れました。福岡はプライベートを含め4、5回しか来たことがなかったのですが、その日は半日ほどしか滞在しなかったのに、福岡のまちに大きなエネルギーを感じたんです。

また、当社のコンペティターの企業が、福岡に進出しようとしてうまくいかないケースをたくさん見てきました。DIYやインテリアの企業が1年ほどで撤退してしまうんです。そのような市場で自分がやってみたらどうなるんだろう?というちょっとした冒険心もありましたね。」

福岡進出がうまくいかなかった企業と友安製作所には、フィロソフィーの違いがあると友安さんは言う。

多くの企業は「商品を購入してほしい」と考えて出店するが、友安製作所の場合、「私たちの商品を使うことでお客様のライフスタイルが変化したらいいな」というフィロソフィーで店づくりを行なっている。

友安製作所の人気アイテムの一つ、カーテンレールも種類豊富に揃えている

友安:「福岡の人々には、私たちのフィロソフィーの方がマッチしていると感じています。DIYの文化を広めたいという想いもありはしますが、私たちはその文化を押し付けるのではなく、この空間で感じ取ってもらえたらいいなというくらいで。

1つのアイテムを販売するにも『この商品を買ってください』ではなく、『この商品を買うとこんな空間になるよ』と、提案の方法が違うんです。」

そして、その場所としてふさわしいと選ばれたのが、この冷泉町のビルの1階だった。

友安:「東京は浅草橋ですし、大阪は阿倍野にあります。私たちのお店には、目的意識があって来てくださる方が殆どなんですよね。通りすがりに来店される方は比較的少ない方です。
私たちは目的を持って来てくださるお客様を大切にしたいと考えていて、このコロナ禍であってもお客様は増え続けています。

そのため、人が集まるエリアではなくてもいいという考えがあって、糸島や大濠公園周辺なども行ってみました。

だけど、どこもピンとこなくて。冷泉町に立ったとき、人通りは少なかったけど、近くには冷泉公園や櫛田神社など、魅力的なコンテンツがいくつかあり、この物件の佇まいがカッコいいって思ったんです。

50年ほど前に建ったビルですが、当社の商品を使ってリノベーションをすれば、魅力的な空間に生まれ変わると確信しました。」

店舗内装の殆どをスタッフが行ない、DIYの楽しさを実感!

入り口にはカウンターがあり、テイクアウトにも対応している

店舗内装の殆どは、同店のスタッフが手掛けたという。それも、DIY経験の少ないスタッフが中心になって店づくりを行なったという。

友安:「カフェとしてスタッフを募集し、そのスタッフにインテリアのことを教えていきました。壁紙を貼ったり壁を塗ったり。お客様から質問されても、実体験に基づいた対応ができることは大きいですよね。」

慣れない作業で大変なこともあったものの、スタッフたちは皆、「DIYって楽しい!」と実感したという。

そして、一人ではできない作業を協力して行なうことで、スタッフ間の連帯感も生まれた。DIY初心者だったスタッフたちは、店内のちょっとした修理なども自分たちで行なえるほど、DIYの腕も上がっているという。

タイルやウィンドウフィルムのほか、暮らしを豊かにする生活雑貨もズラリ!

通りに面したカフェスペースでは今後、ワークショップも開催予定というが、周辺の街づくりにも関わっていきたいと友安さんは言う。

友安:「私たちは気軽にインテリアを変えてほしいと考え、それに伴う活動を行なっています。

ワークショップのテーマは、壁紙の貼り方やペンキの塗り方、カーテンの選び方などさまざま。

ワークショップを開催するのは手間もかかりますし大変ですが、そこに参加してくださるお客様がロイヤル顧客となってくださるので、福岡でも定期的に開催していきたいと考えています。

また、冷泉町は博多祇園山笠などもあり、地域の繋がりが強いエリアでもあります。地元の集まりには積極的に参加し、地元の人々と繋がりを持って、新しいイベントなども行なっていきたいと想いますね。

リノベーションビルとして知られる冷泉荘の吉原さんとも、一緒に街づくりをしましょうという話をしているんですよ。

飲食店をしたり、インテリアの実店舗を持ったりというのは、社会的意義が大きなものではありません。

自分たちの存在や活動によって、街全体が変わっていくことが面白いですし、社会的意義も大きいと思うんですよね。ここ冷泉町で面白いことをしたいですし、街を変えていきたいと考えています。」

最後に。友安さんに福岡の魅力を訊いてみた。

友安:「まずは人がいいです。福岡の人はフレンドリーなので、東京や大阪ではやらないけど、この店舗では店先で声をかけたりもするんです。

それがきっかけでお店に入ってくださる方も多いんですよね。次に街のサイズ感が素晴らしいですね。どこへでもバスやタクシーで行けて、非常に生活がしやすい街だと感じています。

そして、多くの人が言うと思いますが、やはりご飯が美味しい! どこで何を食べても美味しいですよね。」

昔ながらの下町風情が残る冷泉町には、ここ最近、ホテルをはじめ新しい施設のオープンが続く。新旧の魅力が融合し、新たな価値が生まれていくことに期待が高まるが、その中で「友安製作所とハンバーガー」は大きな役割を担うことになるのだろう。

文=寺脇 あゆ子

【友安製作所とハンバーガー】
住:福岡市博多区冷泉町8-17 まるじんビル1階 [MAP]
TEL:092-273-0120
営:11:00〜22:00
休:第1月曜
公式サイト:https://tomoyasucafe.com/hakata/

※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

成長する地方都市 #福岡 のリアルな姿を届けます。福岡のまちやひと、ビジネス、経済に焦点をあて、多彩なライター陣が独自の視点で深掘り。 「フクリパ」は「FUKUOKA leap up」の略。 福岡で起こっている、現象を知り、未来を想像し、思いをめぐらせる。 飛躍するまちの姿を感じることができると思います。 https://fukuoka-leapup.jp

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