チョビが「さくら猫」になってやって来た【サ日記】

 こんにちは。ブログ猫のサニです。ここ何年か出しているおれの年賀状を欲しい読者さんを募ったら、もう15人ほどのご希望をいただいてる。常連さん以外にも初めてお名前を見る方が増えていてうれしいかぎり。北海道など遠方の人もいて、全国あちこちにおれの写真と文章が広まっているようだ。いつもご希望されてて、まだご連絡のない人もいますが、まだまだ間に合いますからニャ。

 きょうは大きな出来事をお伝えする。おれというよりは家のことだが。

 以前も紹介したうちによくやって来るちび猫、通称「チョビ」。生まれて半年くらいになる野良だが、最近みるみる大きく太ってきた。

 楽しそうだニャアとばかりに、ガラス越しに部屋の中をのぞきに来る。

 目を細めたり。

 下から見上げたり。

 箱に入ったり。

 ガラス窓にへばりついて存在感を発揮したりもする。

 おれに何か聞きたいことがあるのか。

 入りたそうに見えるが、飼い主がガラスを開けると逃げていく。

 こっちが眠くてしょうがないのにニャアニャアうるさい。

 疲れた。睡眠不足は猫の大敵だ。

 毎日何度もやって来るチョビが子どもを産んだらまた大変、と飼い主が話している。ただでさえ、猫の多いこの庭がさらに猫だらけになると大ごとだ。

 ついに飼い主のJがおれの主治医の先生に相談して、猫捕獲用のわなを借りてきた。これでチョビを捕えて避妊手術に連れていく算段だ。Jが「多分チョビはメスだろう」と言っている。

 何だかわかりにくいが、これはとりのささ身を団子にしたものらしい。これでおびき寄せてわなの中に入らせ、食いつこうとしたら入口がバタンと閉まるしくみだ。

 Jはマヌケなので、「そんなんでうまく捕まえられるのか」と他の飼い主は半信半疑だ。

 で、仕掛けたら他の猫、こげ茶の奴が入ってきて、うまい具合にえさだけ取って逃げていた。失敗だ。

  ところが、

  おとりのえさを唐揚げに変えてみたところ、仕掛けてから10分ほどでバタン!と音がしてニャアニャア騒ぐ声が聞こえてきた。

 でも、他の猫ではしょうがない。

 おそるおそるのぞき込むと、

 チョビがいた。

 まぎれもなくチョビ。目を見開いて興奮しておる。

 Jが先生に電話したら、「そのまんま連れて来て下さい」ということで、大急ぎで病院に向かった。

 先生は一目見て、「瞳孔が開いて、イカ耳(耳が後ろに倒れる)になっているので、すごく興奮しています」と言った。たしかにすさまじい眼力(めぢから)だ。

 検査して手術したらしばらく傷口がふさがるまで預かってもらうことになった。

 検査の結果、感染症とかもなく、無事にその夜に手術出来たらしい。間違いなくメスで、避妊手術だ。5日ほど入院の後、「迎えに来て下さい」と電話があった。Jが行くと、こげな愛嬌のある犬がお出迎えた。金太郎というフレンチブルドッグだ。のん気な顔をしている。

 洗濯ネットを二重にして包まれたチョビ。爪は切ってくれたらしいが、噛みつかれたら野良なので口に雑菌があるから、外科で見てもらって下さいという話。恐ろしい奴だ。

 チョビを引き取ったその足で近くのホームセンター・グッデイに収容ケージを買いに走ったという。「あまり大きいのにしてもしょうがない」との先生のアドバイスで主に犬が車で出かけるとき用の小型な商品。チョビがキャリーバッグの中でニャアニャア鳴くので、猫好きの親切な店員さんが一緒に車まで運んでくれたらしいぞ。

 ケージに押し込むのも一苦労。えさも入れてやってるが、食べる気にもならんみたいだ。

 思えば、おれはこの家に来たときから落ち着いたものだった。先生から「ふてぶてしさのカタマリ」と言われるだけある大物だ。

 借りてきた猫というには騒がしい。

 写真で見ると、大人しくしているようだが、鋭い声を上げっぱなしだ。

 驚いたことに、二日目にはケージのすき間から脱出しておった。タコもびっくりの軟体だ。

 お気づきの読者もいるだろうが、左の耳が桜の花びらのようになっている。「避妊もしくは去勢手術を済ませています」といういわゆる地域猫の証(あかし)だ。「さくら猫」と呼ばれる。

 もう全然ケージに戻らず、キャットタワーなども活用するようになっている。

 香箱座りなどして慣れたように見えるが、実は全然慣れない。飼い主が寄ると、イカ耳で目を見開き、シャーっ!と威嚇、たびたび鋭い猫パンチを繰り出している。

 早くおれのようにのんびりゆったり過ごせるようにならんかい。

 しかし、この家の猫はおれひとりで十分なんだが。二匹になると分け前も減るし、扱いも粗末になることを心配している。孫のような歳の猫を相手に遊んでやるのもベテラン猫のおれの体力では無理だろう。

 チョビがやって来て一週間過ぎたが、いまだ奴は人間になじむ様子はない。飼い主は「どうしても慣れなかったら、地域猫として外に戻す」と言っておる。さてさてどうなることか。また、様子をお伝えしましょう。

 あ、年賀状希望者はこちらまで→ jun.kanekozuki@gmail.com

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※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

福岡市南区在住。サバトラ柄。熟年オス猫。雑種だが、アメショーの血が入っていると思っている。
ふてぶてしさが身上の甘え上手。
推定5歳か6歳の頃、今の飼い主宅に上がり込み飼い猫に。それ以前は不明だが、数百メートル離れた公園にいたとの不確かな情報。おととしの暮れ、孫娘のようなキジ白猫チョビが弟子入り。
世の中の動きに敏感なものの、とくに行動はしない。

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