私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
私が所属していた大学のサークルは毎年夏にN県I島で合宿を行うのが恒例だった。
季節が夏ということもあり新入生歓迎肝試しを楽しみ、怪談で盛り上がった。
二年生の時、肝試しコースの下見に友人Kと一緒に出かけた。
山を越えトンネルを抜け最終目的地の古い墓に着いた時、Kが妙なことを話し始めた。
「このあたりはちょっと前まで土葬だったらしいね。それだったら頭蓋骨なんかそのまま残ってるだろうね」
「うん。掘れば出てくるかもね」
「…実は頭蓋骨に関して不思議な体験があるんだ。いろんな人に話したけど誰も信じてくれないんだけどね」
「え? どんな話? 聞かせてもらえるかな」
「じゃあ話そうかな」
Kが話した内容はこうだった。
Kが6歳の時、彼の祖母が亡くなった。
あまり行き来することもない遠方に住んでいたため、馴染みもなく悲しみもそれほどなかった。
通夜、葬儀が終わり親族だけで火葬に立ち合った。
Kはそのとき初めてお骨を見たが、ただ「白いな」としか思わなかった。
係の人から喉仏をはじめとする骨の状態説明を聞き、その後骨上げ(骨を骨壺に移す)を行った。
箸を持ち骨上げ台に近づいたとき、妙な物が目に入った。
祖母の割れた頭蓋骨の内側に変色した部分がある。
そこには読めないが漢字と分かる赤い文字が書かれていた。
その時、だれかが袖を引いた。
死ぬほど驚いた。
隣りにいた妹だった。
「あれなあに? 字?」
妹も気がついたようで、二人顔を見合わせもっとよく見ようと近づいたとき、係の人が慌てたようにその骨を砕き骨壺に入れた。
初七日が過ぎた頃、父母に聞いてみたが「見間違いだろう」「変なことを言うもんじゃない」と厳しく叱られた。
家の中ではなんとなくその話をしてはいけないような雰囲気で、二度と話題にはしなかった。
それから十数年。
「一昨年、妹に聞いたらやっぱり覚えていたよ」
「…それで、何という字か分かったの?」
「あれからずっと気にしてるんだけど、いまだに分からない。こんな字だったんだけど…」
そう言いながら落ちていた棒でKが地面に書いた文字は、乙もしくはアルファベットのZに四つの点が飛んでいるような見たことがないものだった。
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合宿も終わり、実家に立ち寄ったときに祖母にこの話をしてみた。
「K君はその字をよく見なくて幸いだったね」
ホッとしたように祖母は言った。
「なぜ?」
「しゃれこうべの文字の話はね、私の故郷にもあってね…見た人に厄が憑(つ)くって言われてたよ」
次に学校でKに会った時、「書いてあった漢字が何だったかを探すのはやめた方がいい」と伝えた。
Kはそれでも諦めきれないようだった。
それから三十数年…今も探しているかもしれない。元気にしているだろうか?