つい最近12月に突入したと思ったら、あっという間にクリスマスシーズンとなりました。毎年この時期になると思い出す出来事があります。12年前のクリスマス、私が体験した不思議なお話をご紹介させてください。
姉の事故
12年前の冬、姉が交通事故にあいました。命に別状はなかったものの腰を骨折、強い衝撃から顔中は傷と打撲だらけ。病院の先生からは1カ月の入院を言い渡されました。当時私は高校3年生、弟は中学1年生でした。
両親は幼い頃に離婚しているため父はいません。そのため母は仕事終わりに毎日病院へ通い、私は弟の面倒を見ながら学校とバイトへ行くという生活が続きました。
そんななか迎えたクリスマス。みんなで病室にいると、母が
「好きなもの食べておいで」と言って私と弟にお金をくれたのです。「クリスマスなのにどこへも行けなくてごめんね」という母の想いがあったのでしょう。何が食べたいか尋ねると、すぐさま
「お寿司!」と答える弟。
今でこそ100円寿司のお店が溢れていますが、当時は一皿200円以上する回転寿司店しかなく、母子家庭のわが家では回転寿司店=高級店というイメージだったのです…。
お寿司が食べたいと目を輝かせている弟を見て、母と姉は笑いながら
「行ってらっしゃい」と言ってくれました。こうして私は弟と2人、回転寿司店へ向かうこととなったのです。
「料金は頂いています」
回転寿司店につくとカウンター席に座り、弟と学校生活や家族の話をしながらお寿司を楽しみました。
お金のことを気にしつつ、ある程度満足した私たちはお会計を頼むことに。レジにつくと店員さんが驚くべき一言を発したのです。
「黒い帽子を被ったお客様から料金頂いていますので、お客様のお支払いは◯百円です。」
「… え、はい?!」
食べた量に見合わない安い金額に驚く私。困惑していると店員さんが
「男性のお客様が、お客様が食べたぶんはこれで支払ってとお金をおいていかれたのですが… お知り合いではないですか?」と、再度不思議そうに尋ねてきました。
「え! 知り合い?! 声とか全然かけられてなくて… どこの席にいましたか? どんな人でしたか?」
「黒い帽子を被った男性で、20代くらいですかね。てっきりお知り合いかと…」
20代だと身内でもないし、バイト先の先輩かな? とも思いましたが、だとしたら声をかけてくれたはずです。記憶を辿ってみましたが「この人かな?」と思いつくような人物もいません。
聞きたいことがたくさんありましたが次のお客さんが待っていたので、たった数百円の会計を済ませてお店を後にしました。
「よくわからないけどラッキーじゃん、姉ちゃん!」弟はよくわかっていない感じでしたが、私は「誰なんだろう、あとから連絡くるかな?」と心に引っかかったまま病院へ戻り、一連の流れを母と姉に話すことに。
話を聞いた2人も私と同じように驚いていました。その後みんなで思い当たる人物がいないか考えてみたものの見当もつかず…。そして結局誰からも連絡がこないまま一日が終わったのでした。
その後の真相は…?
あれから12年、いまだにその人が誰だったのかわかっていません。
12年前のクリスマスが辛い思い出だけにならずに済んでいるのは、この不思議な体験の「夢だったのかな?」と錯覚するような、フワフワした気持ちも鮮明によみがえってくるからです。
もし、あの時の「黒い帽子の方」が見ているのならば、この場をかりてお礼を言いたいです。
あの時はありがとうございました。
(ファンファン福岡公式ライター/きゆな なみ)