祖母が語った不思議な話・その漆拾玖(79)「カ・タ・リ」

 私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。

イラスト:チョコ太郎

 小学3年生のとき、授業でいろんな音を作る実験があった。
 私の班のテーマは「お化けの音」だった。
 あれこれ試したが、下敷きを曲げ伸ばしして作ったホワンホワンという音に決めて発表、クラス中が大ウケだった。

 学校から帰って祖母にこの話をすると
 「お化けの音…怖い音…不思議な音なら聞いたことがあるよ」
 そう言うと祖母は話しはじめた。

………………………………………………………………………

 祖母が六つの時、村のT家のおばあさんが亡くなった。
 家ぐるみで付き合いが深く、孫のMちゃんは同い歳の友達だったので祖母も通夜に行った。
 「歳も歳だったから仕方ない。大往生だな」
 喪主である長男はそう言い、家族もわりとさばさばしていた。

 「おばあちゃん、残念だね」
 「いつも私に優しくしてくれたから、寂しくなるな…」
 Mちゃんとそんな話をしていた時に小さな音がした。

 …カ・タ・リ

 音はおばあさんの入ったお棺から聞こえた。
 しかし誰もが話すのに夢中で、気が付いていない。
 Mちゃんを見ると青い顔でお棺の方をじっと見ている。
 聞いてはいけないような気がして、すぐに家族とT家を後にした。
 もちろんTおばあさんが生き返るなどということはなく、翌日には葬儀が執り行われた。

 それから二十年後、T家のおじいさんが亡くなった。
 たまたま実家に帰っていた祖母はお通夜に出かけた。
 そこですっかりお母さんになったMちゃんと再会した。

 「あの時、おばあさんのお棺から音がしたのを覚えている?」
 祖母がTおばあさんの通夜の話をしようか迷っていたら、Mちゃんの方から切り出してきた。
 「やっぱり聞こえてたんだ! 私はずっと気になっていたけど聞けなくて」
 「…実はうちの家で誰か亡くなると時々お棺が鳴ることがあってね。その音がしたら次の年に必ず死人が出るんだよ」
 「じゃあ…」
 「そう。あの次の年には私の兄さんが原因不明の高熱で亡くなったのよ」
 そこまで話すとMちゃんは家族に呼ばれ、立ち去って行った。

 焼香も済まし、長年の疑問も解け、さあ帰ろうと立ち上がった祖母の背後で音がした。
 …カ・タ・リ

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