「コンフィデンスマンJP 英雄編」五十嵐役・小手伸也さんインタビュー

 ドラマ「コンフィデンスマンJP」(フジテレビ系)で大ブレークし、名バイプレーヤーとして知られる小手伸也さん。1月14日に公開された映画「コンフィデンスマンJP 英雄編」でもドラマに続き五十嵐役を演じています。劇場版3作目となる本作について、見どころや撮影中のやり取りなどをインタビューしてきました。 ※撮影中のみマスクを外しています。

—ドラマからスタートし、劇場版も3作目に。本作のどんなところがファンの心をつかんでいると思いますか。

 脚本の妙(みょう)でしょうね。古沢良太さんの描く世界の緻密さと大胆さが一番なのかなと。この世界観を作品として具体化していく作業というのはすごく楽しいですし、僕ら役者は、古沢さんの脚本(ほん)に負けない絵づくりやキャラクターの練り上げを考える。元々の脚本がすでに高い完成度を誇っていますが、それに対してちゃんと応えつつも、古沢さんですら想像できなかった発見や発想をぶつけることでより作品の面白さが高まっていく。その結果がファンの皆さんへ届いているのではないかと思います。
 この作品に関わっている人全て、真剣勝負で挑んでいる感じがすごくあって、例えば古沢さんが脚本では描いていなかった衣装などは、スタッフが「こうしてやろう、あんなふうにしてやろう」と考えて作りこんでいて、衣装に限らず全てのセクションが「やってやる!」という雰囲気で挑んでいる。真剣に、セクション同士で闘っているというか。「みんなで力を合わせよう」というチームワークの発揮の仕方もあると思うのですが、個々が頑張ることによって大きなムーブメントが生まれる、みたいな。そういうチームワークでやった結果の作品という感じがいたします。

—それは役者同士でも?

 役者同士のせめぎ合いもすごいです! 「僕ら仲良いよね」っていう感じはあるんですよ。雑談もすごくしているんですけれど、「じゃあ本番いきます」となった時の切り上げ方がパキッとしている。全力でふざける部分は本番、作品につぎ込んでいる。だからアドリブの相談とかも誰も全然してくれないんですよね(笑)。全部ぶっつけ本番なので、そういうアドリブに対しても「そっちがそうくるならやってやるぜ!」という気持ちで挑んでいます。そういう真剣勝負の部分が、コメディーにしてはひりひりしているかもしれませんね。
 でもやはり脚本がしっかりしているので、調和はとれているというか、ある程度遊んでも壊れない(笑)。どんなに踏んでも壊れない板の上でやらせてもらっているので、すごく自由がきいて、のびのびと演じさせてもらっています。確かに脱力していても気は抜けない怖い部分もありますけどね。例えるなら、失敗できないジャズセッションをずっとやっているような。

—アドリブなどは結構そのまま通る?

 僕らは全員古沢さんの脚本をとても大事にしているので、本筋のセリフに関しては実は全然変えていなくて、古沢さんが詳しく書いていないト書きやシーンの余白、動きやビジュアルの部分を現場で発案している感じですね。
 ふざければいいってものでもなく、全力でふざけるけど足は踏み外さない。なので、みんなちゃんと「ダー子はこんなこと言わないよ」とか「リチャードだったらこう言うよね」とかお互いに話しつつ。でもリチャードに関しては、ときどき「こひさん」(リチャード役を演じる小日向文世さんの愛称)が出ちゃうんですよ(笑)。楽しくなり過ぎちゃうと「こひさん」(の素)がね(笑)。そういう時も、誰かが必ず「今のはこひさんが出てるよ!」って指摘しています(笑)。

—今作の脚本を読んだ際の率直な感想は。

 率直に申し上げますと、今回の作品は「難しい」と思いました。今まで映画を2作品やってきて、ロマンス編などはタイトル通りにロマンスというテーマに対してダー子、ボクちゃん、リチャードの三人がどう関わっていくのか、というサイドストーリーというかサブテーマのようなものがあった。プリンセス編はよりサイドストーリーが際立ちますよね。コンゲーム(騙し合い)から少し超えちゃって、コックリとフゥ一族の家族の絆みたいなものに焦点が当たった感動巨編になっている。プリンセス編などは、コックリの成長物語ですからコックリを追っていればすんなりと話も入ってくる。
 ただ今回は、3人の闘いを描いている。3人の師匠だった三代目「ツチノコ」を誰が継ぐかという闘いの発端を経て、3人の過去を描くのもシリーズ初ですし、その3人の過去と思惑も含めひとつの出来事に対して、三者三様の目線で話が進んでいく。過去を描くのもシリーズ初です。そのひとつの出来事に対して、三者三葉の目線で話が進んでいく。それぞれの視点かつ、時系列なども入れ替わるので、一本筋では理解しにくい、難易度の高い脚本だなと思ったのが正直な感想です。正直最初は僕も、「今どこ撮ってんだかわかんない」という瞬間も多くて(笑)。
 でもそれを田中(亮)監督が映画として分かりやすく落とし込んでいて、完成した試写を見て感動しました。「あの時はこうなって、ここにつながっていたんだ」って。この構造が頭に浮かんでいてそれを脚本化できる古沢さんは…やっぱりすごいですよ。

—見どころは。

 やはり騙し合いという本質をとらえたストーリー。最高傑作になっているという感覚があります。ロマンス編やプリンセス編のような、その作品のテーマを背負ったキャラクターに3人が関わるのではなく、3人の騙し合いという王道の設定。コンゲームの真骨頂が描かれているという意味では、ドラマ版コンフィデンスマンJPの正統派続編という感覚があります。見終わったときの気持ちよさが半端ないですし、すぐに見返したくなります。
 どストレートな騙し合いの世界に、素直に騙されてほしいと思いますし、1回目にその「騙された」気分を味わった後、2回目は僕たち騙す側の目線を楽しんでほしい。ネタばれした状態で見ても作品の面白さを損ねることが一切ない、というのがコンフィデンスマンの醍醐味でもあると思います。
 結末を知っているからこそ、前半めちゃくちゃ笑えるネタが入っていることに気づく。見れば見るほど新たな発見の喜びがある、永遠に味の尽きないガムのような作品です。ダー子の駄菓子好きに合わせてお菓子で例えてみましたが(笑)。

—本作の五十嵐を演じる上で心掛けたことは。

 本来の五十嵐をちゃんと全うしたという感じですね。五十嵐は初登場以降だんだん“いじられオジサン”みたいなおもしろポジションを確立してしまって(笑)。いてもいなくてもOK、みたいな。ダー子ちゃんもよくそういうふうに言うし、切ないポジションなんですが、古沢さん曰く「小手さんのせい」だと(笑)。
 でも本来の設定は「神出鬼没の腕利きコンフィデンスマン」。そういうキャッチコピーがついていながら、「プリンセス編」などでは最後まで何も、一切知らされないままデヴィ夫人とエンディングを迎えてしまった(笑)。だんだんとそういう扱いが定着していった中で、古沢さん曰く、今回は「五十嵐への罪滅ぼし」だそうです(笑)。僕自身はシリーズ当初から「当人はいたって真面目」を貫いているので、今回見え方が違ったとしたら、やっぱり古沢さんのおかげかな。五十嵐の活躍にも是非ご期待ください!

—小手さんが本シリーズで好きな部分とは。

 変わらない関係性みたいなものはすごく好きですね。こういうシリーズもので重ねていく作品は、だんだんとキャラクターが成長していくこともあるじゃないですか。この作品に関していえば、そういうことが一切ない。ニュアンスとしてはドラえもんやサザエさんに近い作品だなと。だから「いたのか五十嵐」みたいなお約束をみんなで共有できるし、その一方で毎回期待通りの展開に、結果見事に裏切られる、このシリーズならではの快感もある。
 映画版で言えば、香港、マレーシア、マルタ、と世界中を飛び回っていますが、やっていることは何も変わらず、全く一緒のコンゲーム。不変的な安定感がありますね。いつ見てもこのメンツのわちゃわちゃが見られる、みんなにとってのそういう楽しい場所。ご新規さんも常連さんも同じく楽しめるそういう作品だなと思いますし、そういう作品であり続けたいと思います。僕自身がこの作品を本当に大好きなので、できれば「寅さん」くらい続けたいですね!

小手伸也(こて・しんや)

劇団innerchildを主宰。作家・演出家・俳優を兼ねる。NHK大河「真田丸」(塙団右衛門 役)、「コンフィデンスマンJP」(五十嵐 役)と続き、以降「シンデレラおじさん」としてブレイク。

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劇場版「コンフィデンスマンJP 英雄編」

長澤まさみ、東出昌大、小日向文世が共演した人気テレビドラマ「コンフィデンスマンJP」の劇場版第3作。かつて悪しき富豪たちから美術品を騙し取り、貧しい人々に分け与えた「ツチノコ」という名の英雄がいた。それ以来、当代随一の腕を持つコンフィデンスマンが受け継いできた「ツチノコ」の称号をかけ、ダー子、ボクちゃん、リチャードの3人がついに激突することに。地中海に浮かぶマルタ島の首都で、マフィアが所有する幻の古代ギリシャ彫刻「踊るビーナス」を手に入れるべく、それぞれの方法でターゲットに接近。そんな彼らに、警察やインターポールの捜査の手が迫る。公開中。

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著者情報

好きな物:お酒とエンタメとスポーツ、コスメ。ものづくりと一人旅。好きな動物はカワウソ。好きな物を好きなように書いてみます! 主にインタビュー記事やホークス関係の記事を担当。

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