なかなか妊娠せず、不妊治療に通うことに。しかし、急な来院指示や一日おきの通院が必要で、仕事との両立は想像以上に大変。仕事を辞める決意をし、体外受精に進もうとした矢先…
忙しい職場だけど
結婚3年目。私は憧れていた出版社で働きながらも、妊娠しないことに悩んでいました。
「一度、不妊治療専門の病院に行ってみない?」私の提案に夫も賛成してくれ、職場から電車で20分先の病院に通うことに。一方職場の出版社は、締切やノルマに追われる忙しい環境。
常に支店長が怒鳴っていて、私も「いつ怒られるか」とピリピリしていました。しかし私はパート職だったため、比較的休みも取りやすく、治療と両立できるだろうと思っていました。
病院へ通いはじめ、数回目の診察中。その日もなんとか時間を作り午前休を取ったのに、医者からさも当然のように
「それじゃ、明日も来て」と言われ、戸惑いました。
「明日はちょっと…」と渋ると、医者は
「不妊治療はタイミングを合わせないと無理ですよ」と呆れた表情。生理周期に合わせて検査や治療をするので、日をずらすのは難しいと知り、やっと「甘かった!」と気が付きました。
職場では不妊治療中だと話していなかったため、同僚に対し「みんな忙しいのに」という罪悪感が。支店長に
「明日も早退を…」と言うと
「はいはい」と、呆れた顔。うんざりされていると思うと、苦しかったです。
人工授精にチャレンジするも…
数カ月タイミング法を試しても妊娠せず、焦る日々が続きました。
医者の
「人工授精にチャレンジしよう」真剣な表情の一言に、「次はきっと!」と前向きに挑戦することに。しかし、人工授精は更に通院が大変でした。
指定日の朝一番に治療に行き、以降一日安静。その後は一日置きに通院が必要とのこと。早退したり出社時間を遅らせたりしながら、通院する毎日が続きました。同僚も
「どこか悪いの?」と心配してくれましたが、正直に言えず
「ちょっと持病で」と濁していました。
人工授精は5回もしましたが、妊娠に至らず「時間とお金だけがかかる…」と次第にきつく感じるように。医者から
「体外受精に挑戦してみては」と提案されましたが、体外受精は金額も大きく、決意が必要。
幸い夫は前向きで
「貯金あるし大丈夫! 頑張ろう!」と明るく頼もしかったですが、私は「高額な体外受精をする前に、体と心をしっかり整えたい」と考え退職を決意。
支店長に話すと何かを察していたのか「体を大事に」と円満退職できました。
まさかの自然妊娠?
退職後2カ月は体を戻すため治療は休み、友達と遊んだり、夫と食事に行ったりとゆっくりと過ごしました。
そしていよいよ治療再開の日。久しぶりの病院で、体外受精前段階の薬が処方されました。
しかし翌日…「体がいつもと違う?」生理のような出血があったかと思うと、すぐに止まり体温も下がらないまま。「まさか?」と思いつつ、妊娠検査薬を使うとなんと陽性!
急いで病院に電話すると、医者も
「え? どういうこと?」と驚いた声。その後、病院でも妊娠確認ができ「来てくれてありがとう!」と夫婦で喜びました。
いま振り返ると、思い切って仕事を辞め「怒られるかも」「また休んでしまった」というストレスがなくなったのが、よかったのかなと思います。
不妊治療と仕事の両立は本当に大変。本来は周囲に理解を求めるべきで、安易な退職はおすすめできません。ですが私の場合、無事産まれた子どもの笑顔を見ていると、あのとき辞める決断をしてよかったと心から思えています。
(ファンファン福岡公式ライター/片岡みや)