娘のバトンクラブの発表会。衣装作りは親が担当するのですが、グループのリーダーママは、わが子の衣装ばかり盛る大迷惑ママでした。衣装格差をなくそうと提案しても、ことごとく反対され…。発表会当日まで揉める中、解決に導いたのは意外な一言でした。
卒業に合わせた発表会
バトンクラブでは、小学6年生の卒業にあわせて毎年3月に発表会を開催。5人ほどのグループに分かれて、5・6年生が振り付けを考え、下級生を指導する演目があります。グループの衣装は親が協力して作るのも恒例。リーダーの母親を中心に工夫を凝らします。
娘が小学3年生の時、グループのリーダーになったのは6年生のNちゃん。衣装はNちゃんママが考えます。娘の喜ぶ顔が見たくて、私は張り切って衣装を完成させました。ところが、娘に着せてみると何か物足りません。
白いTシャツに、深緑のリボンがついた黒のフレアスカート。黒い靴下をはかせると、喪服のよう…。娘は
「もう発表会には出たくない」と言い出してしまいました。
衣装格差にがく然!
次の練習日。衣装を試着するため練習場に行くと、アイドルのように着飾った上級生たちが目に飛び込んできました。娘と同じスカートに、深緑のボレロを羽織り、頭にはかわいいミニハット。下級生とは対照的な姿に、私はがく然!
グループ演目は上級生たちの見せ場。でも、上級生が主役で下級生が脇役というわけではありません。私は思い切ってNちゃんママに話しかけました。
「上級生、すごくかわいいね。それに比べて下級生が地味すぎると思うんだけど…」
すると
「下級生のボレロとハット、予算が足りないからやめちゃった 」と呆れた答えが返ってきたのです。心の中で憤慨するも、娘に発表会を楽しんでほしい私は、余った材料で下級生2人の飾りを作りたいと申し出ました。Nちゃんママはわが子のミニハットをさらに造花で飾り立てながら
「任せるわ」と興味なさそうです。
髪飾りを横取り?!
リハーサルまで3日。私は深緑の余り布をかき集めて2人分のボレロと髪飾りを作りました。Nちゃんママに報告メールを送りましたが、戻ってきたのは却下の返事。上級生が目立たなくなる、という理不尽な理由でした。
結局、渋々許してもらったベストと髪飾りを作ってリハーサルに持っていくと、Nちゃんママは花に仕立てた髪飾りに興味津々。
「上級生のボレロに付けさせて」と言い出しました。慌てて
「これは下級生用」とたしなめると、悔しがっています。
少しは形になったかな、と思いながらリハーサルを見ていると、世話人ママがやってきて
「下級生がかわいそう。髪飾りを明るくしたら?」とピンクの余り布をくれました。その夜、私は深緑の髪飾りにピンクの花を添え、手直ししました。
一件落着した一言とは?
発表会当日の朝、髪飾りを見るなり
「何このピンク。取ってくれない?」とケチをつけたNちゃんママ。世話人ママが口添えしても
「目立ちすぎる」とかたくなです。時間が迫るなか
「Nに決めさせる!」と言い出しました。
ところが、Nちゃんは髪飾りを見ると
「かわいい。ピンクがあるほうが絶対いいよ!」と目を輝かせました。私は胸をなでおろし、周りのママたちも顔を見合わせ、うなずいています。ただ1人、Nちゃんママだけは不満げでしたが、Nちゃんは
「逆にどうしてダメなの?」と母親に詰め寄ります。純粋にいい発表会にしたいと願う娘の一言が、自分勝手な母親を黙らせたのでした。
落ち込んでいた私の娘も、発表会では笑顔で堂々の演技を披露。私の努力も報われたのでした。
(ファンファン福岡公式ライター / 繭子)