幼稚園から帰宅後、子どもたちは遊ぶ約束をして誰かのお宅に集まります。ママたちもわが子と一緒にお邪魔して、お茶とおしゃべりをすることも。本来なら楽しい時間なのですが、ある日集まったお宅で驚くべき会話に出くわすことに!
幼稚園から帰ったら、今日はどこで遊ぶ?
子どもの世界は、大人のようにグループが固定しているわけではありません。園内ではよく一緒に遊んでいても、園が終わってから集まる顔ぶれはがらりと違ったり。また、約束のない日だってもちろんあります。
幼稚園にお迎えに行くと、みんなの約束状況は黙っていても耳に入ります。周りが何時にどこで集合! と騒いでいる横で、わが子が浮かない顔をしていると「この子は会話に入れなかったのかな、園で何かあったのかな」と内心気をもむことも。
けれど、子どもにもその日のリズムや気分があって当然。
「今日はママと遊ぼう!」と、ホットケーキを一緒に作ったり、図書館や少し遠くの公園まで出かけたり。楽しい時間を工夫しながら、子育ての毎日は忙しく過ぎていきます。
楽しいお茶タイムのはずが
ある日の幼稚園帰り。K君のお宅に息子とお邪魔しました。5組の母子が揃い、子どもたちは可愛い歓声をあげながら庭と室内を行き来してボール遊びやゲーム、ママたちは居間でお茶タイム。
お菓子をつまみ他愛ないおしゃべりが弾む最中、K君ママとS君ママが特に仲良しと知っているママ友が
「そういえばさっき、S君とママがふたりで散歩しているのを見たよ」
それを聞いたK君ママは軽く目を伏せ、神妙な口調で
「今日は、前もってうちに誘うお友達を決めていたの」と告げました。
「昨日KだけS君のおうちに誘ってもらえず寂しそうだった。だから、そのつらさをS君ママにも分かってもらいたくて」K君ママはみんなの顔を見渡し、きっぱりと言い放ちました。
「こういうことって、持ちつ持たれつでしょ」
昨日誘われなかった仕返し!?
子どもは、その日の気分で友達と約束するものです。親同士が仲良しでも、その子同士がいつも一緒とは限りません。ましてや、親同士がいちいち他の子の様子を気遣い、気を利かせて誘うのもおかしな話。
昨日誘ってもらったから、今日は誘ってあげる。昨日誘ってくれなかったから、今日は誘わない。K君ママの言う「持ちつ持たれつ」ってそういう意味? ということは、今日K君の家に誘ってもらった4人の誰かが、明日はK君を誘う番?
私と3人のママたちはK君ママの発言に驚いて誰も何も言えず、戸惑う視線をきょろきょろ。それにまったく気づく様子も見せず、K君ママはすました顔でカフェオレを口に運ぶのでした。
子どもと遊ぶ友達を勝手に決めるママって…
子育て中のママたちは、母子ぐるみで遊ぶ機会が多い分、ママ同士の関係と子ども同士の関係の線引きが難しいところがあります。わが子が寂しそうにしていれば、誰だって心は痛みます。
けれど、子どもが寂しければママが楽しく盛り上げればいいのです。誰かと遊びたいなら自分から声をかけてごらん、ってわが子にうながしてあげるのもあり。子どもの関係に大人が介入したり、誰々が誘ってくれないなんてうらむのは筋違い。
その日に誘う友達を朝から決める理由を、もし子どもに聞かれたら、K君ママはどう答えるのでしょう。その後、K君とはクラスが分かれ、K君ママと交わる機会も自然と減りました。今でも「持ちつ持たれつ」という言葉を耳にするたび、みんなそれぞれの子育てに必死だったんだなあと、あの日の衝撃をなつかしく思い出す私です。
(ファンファン福岡公式ライター/山ナオミ)