「脳と神経の障害」について専門医がアドバイス【あだち脳神経外科クリニック】

 発症初期から高リスクな脳卒中。脳の健康状態を管理することが突然の発症の予防にもつながります。脳の健康管理についてあだち脳神経外科クリニックの安達直人先生にうかがいました。

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【脳神経外科専門医】あだち脳神経外科クリニック 安達直人先生

 広島県出身。山口大学医学部・大学院卒業。スイス・チューリッヒ大学病院客員医師、厚生労働省保健局特別医療指導監査官など、脳のスペシャリストとして培った経験を活かし、2015年「あだち脳神経外科クリニック」開業。

進化するメディカルDX 高精度・高速化の時代へ

 人気の医療ドラマを観ている方はご存じかも知れませんが、メディカルDXの進展により、医療現場では技術革新が進んでいます。MRI装置も同様で、放射線技師が患者さんの情報をセットアップすれば、患者さんが横になってすぐに自動撮影が始まり、ベストな画像をAIが読み込んで診断結果まで出した状態で、医師の手元に届けられる時代になろうとしています。
 そうなれば、多くの医療者の手を介することがなくなり、小さな危険因子も見過ごされることなく迅速に判定できるようになります。

 さらに超高速化により、従来なら約1時間を要していたフルスペックでの画像検査が5分~10分に短縮され、脳だけなら実に30秒と、ハイスピードでの検査が可能になりました。スピードも精度も上がった検査環境が整ってきたのです。

脳ドックを受診した約半分の人が脳梗塞予備軍⁉

 脳の病気を発症すると、手足が思うように動かせない、思うように話せなくなるなど、大きな後遺症が残るケースが少なくないため、発症する前に脳の健康状態を知ることはとても重要だと言えます。脳の病気は発症初期から、大きな後遺症が残るリスクが増大するため、脳の検査を受けるのに早過ぎることはありません。

 2020年の一年間、当クリニックで脳ドックを受けた方のデータを見ると、全体の約7割が30代~50代の働き盛り世代の方で、全受診者の約8割に何らかの異常が確認されました。
 具体的には、脳梗塞の痕など何かしらの所見が見つかった方は全体の56.3%、脳動脈瘤があった方は39.1%、委縮が見られた方は15.6%、血管狭窄が見つかった方は10.9%という結果でした。

 当クリニックは、県内でも数少ない日本脳ドック学会の認定施設であり、解像度が高く正確に脳内を診察することが可能な「1.5T(テスラ)デジタルMRI装置」での検査を行なっています。モニターに映し出されるリアルな脳や神経、血管の3D映像、さらには4D画像の詳細な検査に驚かれる方も多くいらっしゃいます。この高性能なMRI装置を活かした短時間+高解像度の検査なら、じっとしていられない幼児や認知症で動きをコントロールしにくいお年寄りでも撮影最短3分ほどで済み、大幅に向上した解像度でより細かな診察ができます。

 また、大切なのは診断後のフォローです。しっかり検査した後、患者さんに分かりやすく説明し、必要に応じて今後の治療計画をきちんと説明するまでが脳ドックの役割だと考えています。近頃は健康意識を持つ人と持たない人の2極化が進み、健康難民となる人が増えるのではないかと危惧しています。何ものにも代え難い健康に関心を持っていただきたいと思いますね。

健康でいることが最大の資産 人生を賢く豊かに楽しむために

 人生100年時代を生きるには、健康な体を維持することが大切です。食事や運動も大事ですが、毎日お化粧するように、脳のお手入れもして欲しいですし、愛車のメンテナンスをするように、脳も定期的に検査することでリスクを回避して欲しいと考えています。悪いところがあれば修理できる自動車とは違い、生体は壊れていくものであり、ましてや取り替えることなどできません。

 また、脳ドックで未然に治療できた場合とそうでない場合では、身体的な負担はもちろん、費用的な負担も大きく変わります。脳の病気を未然に防ぐために当クリニックを毎月受診した場合、一年間に必要な費用は約8万円、年2回の検査で約4万5000円となります。
 
 一方、脳梗塞を発症した場合、入院、手術、リハビリの期間にもよりますが65万円~430万円の費用がかかる可能性があります。入院中は働くこともできないため、経済的な損失は大きなものになるでしょう。ファイナンス的な視点から見ても、人生を豊かに過ごすために、脳の健康はとても大切なものだと言えるはずです。 

セルフチェック
~脳の病気はまず検査して、早く見つけることが大切~



※この記事内容は公開日時点での情報です。

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「こんなとき、だれに相談すればいい?」
気になる病気や症例を専門医がアドバイスします。

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