平均睡眠時間は50年間で1時間短縮。ストレスが増え、多忙な現代人が悩む睡眠障害No.1が不眠症です。そんな不眠症について睡眠障害センター 福岡浦添クリニックの山口祐司先生にうかがいました。
【総合内科専門医】睡眠障害センター 福岡浦添クリニック 山口祐司先生
福岡市出身。自治医科大学卒業。浜の町病院、熊本大学病院、ハーバード大学医学部べスイスラエル病院などで研鑽を重ね、2000年から「福岡浦添クリニック」院長。「グッドスリープ・グッドライフ」をモットーに日々診療を続けている。日本睡眠学会専門医。
夜中に目覚める、寝た気がしない。 それらはすべて不眠症です
強い眠気に襲われ、場所や時間を問わず寝てしまう「過眠症」や、時差ボケのように昼夜のサイクルと体内時計が合わない「隔日リズム睡眠障害」など、多岐にわたる睡眠障害の中で最も多いのが「不眠症」。人生の3分の1を眠って過ごしていながら、日本人の5人に1人は不眠を訴え、患者数は年々増加しています。不眠により疲労がたまると、日中の生活や人間関係に影響が出てきたり、生活習慣病が悪化したりすることも。
不眠症状にはいくつかの種類があり、「入眠困難」「中途覚醒」「早朝覚醒」などの思い当たる症状だけでなく、睡眠時間は十分なのに一睡もできないと認識する「睡眠状態誤認」もあります。
病気や過度な飲酒、体内時計の狂いなど、不眠の原因はひとつではありません。特に最近は新型コロナ禍で在宅を余儀なくされ、将来を考え眠れないという人も。これは不安によって分泌されるストレスホルモン(コルチゾール)が脳を覚醒させ、睡眠の質が落ちてしまうためです。
質の良い眠りの鍵は入眠前環境を整えること
不眠症の治療は、「入眠環境を整える」ことがポイントです。夜間、まず短時間だけ寝て、睡眠の質が上がってきたら徐々に睡眠時間を増やす「睡眠制限法」、寝る前のヨガやストレッチ、ぬる目のお風呂への入浴などを推奨する「睡眠衛生指導」のような、非薬物治療を行います。それでも効果がなければ、メラトニンなどに作用する薬を服用する薬物治療を行います。
問題なのは、当院のような睡眠専門の病院に来る前に、睡眠薬を処方するだけの治療を受けていた患者が少なくないこと。睡眠の質を上げることで薬の量を減らす「出口の見える治療」なら、薬物治療も決して怖いものではありません。