福岡のラーメンブロガー、ラーメン大好きガーソーさんがお届けする福岡ラーメンレポート。 このご時世にほぼ24時間営業(8:00~翌7:00)、更に若いスタッフさんの元気よく丁寧な接客、バツグンに美味いラーメンやつけ麺、卓上の自家製もやしキムチと甘辛の豚肉味噌が食べ放題と、人気が出る理由しか見当たらない営業スタイルで、誕生から数年で今や名店と言っても過言ではないお店となった「中洲川端きりん」。 誕生の経緯、ラーメンやつけ麺の味、今後の展開等について、Youtube でkatsumura channelを運営されているkatsu muraさんと一緒に取材、私は本記事で、katsu muraさんはYoutubeの動画で、それぞれに「中洲川端きりん」の人気の秘密に迫ります。
中洲川端きりんの誕生
醤油ラーメンと肉汁餃子のラーメン居酒屋として創業した「中洲きりん」が2019年1月開店、豚骨ラーメンとつけ麺のお店「川端きりん」が開店したのが2019年8月で、2020年1月に川端のお店が「中洲川端きりん」として統合されました。 惜しまれつつも「中洲きりん」を「川端きりん」と統合したことで、現在はほぼ24時間営業、かつ豚骨ラーメン、醤油ラーメン、つけ麺のラインナップを実現し、そのどれもが高レベルと、他にはないお店として高い人気を誇る「中洲川端きりん」ですが、誕生したキッカケは2人の博多のおっちゃん(注釈1)の熱い思い、そして現在の人気は情熱に溢れた若者達によって生みだされたものだったのです。
若い子たちを育てて夢や希望をかなえさせてやりたい
中洲きりんは、ラーメン居酒屋になる前は頂き家という名前の居酒屋でした。 頂き家の大将は元々建築関係の仕事をされていて、夜は居酒屋もやるようになり、ずっとがむしゃらに昼も夜もなく働き続けてきたそうです。 そしてもう身体がついてこないとなった時に、当時海外でラーメン店の立ち上げをしていた後輩と相談し、もう自分たちは昔ほど働かくなくても食べていけるようになったんだから、次は若い子を育てるようにしよう、若い子の夢や希望を叶えさせてあげる、そういう存在に自分たちがなったらかっこいいじゃないかという話になり、そこからイタリアンやフレンチを経験しつつも先々に不安を抱えていた若者たちが集まり、醤油ラーメンと肉汁餃子をメインとした「中洲きりん」が誕生しました。 そうして若いスタッフが中心となって、今まで運営されてきたそうです。
きりんの店名の由来
麒麟児という才能ある若者を意味する言葉がありますが、正にその麒麟児が集まる、麒麟児を育てる場にしたいという思いと、平仮名にすることによって親しみやすく覚えやすいという、二つの理由から店名は決まったそうです。 目標通り、現在は若い社員5人とアルバイト5人が集まって、おっちゃん2人を除くと平均年齢は24歳というから驚きますね。
主役は若い子たちです
実際、お店に行くと若いスタッフで運営されていて、博多のおっちゃん2人は昼間に顔を出す時もある、くらいだそうで、若いスタッフ自身が自分たちの店として熱意をもって営業されているのが伝わります。 あえて店長は決めず、店主という立場を5人で順に交代されるそうで、社員全員がお店の店主という意識で営業されているんだそうです。 また、休憩時間込みで1日8時間働き、それをローテーションで回すことで、お客様に常に元気な笑顔で接客出来るようにと気を配っているとのこと。 「どう頑張ればいいかの頑張り方を知らなかったり、頑張っていても報われない環境にいたりする若い子はたくさんいますけど、認めてくれる場所があって頑張り方を教わったら未来に夢や希望を持てる、ちゃんとやれるってことをウチのスタッフみんなが証明してくれています。もちろん厳しいことを言うこともありますが、理不尽なことは言いませんし、あくまでも主役は若い子たちですから、いずれのれん分けで独立出来るように我々は応援しているんです。」 そういって笑う博多のおっちゃんズはやけにかっこよく見えましたし、そういう環境だからスタッフさん達がこんなに熱心に日々の営業をして、その結果として短期間で人気のお店になったんだなあということが、取材してよくわかりました。
きりんのラーメン・つけ麺・肉汁餃子の説明
豚骨ラーメン
毎日でも食べたい美味しい豚骨ラーメンをイメージした時に、名店と名高い福岡のふくちゃんラーメンと佐賀のいちげん。が目標となったそうで、そこから親スープとフレッシュスープの二つをそれぞれに寸胴で炊き上げ、二種類の豚骨スープを常に一定の水位に保った営業用の寸胴に継ぎ足しながら味を調整し、ブリックス(注釈2)で言うと6.5~7でキープしながら提供する追い炊き熟成製法に辿り着き、濃度は高すぎず、でもしっかりと骨の味が出た現在の豚骨ラーメンになったのだそうです。 ふくちゃんといちげん。の大将とも交流はあるそうですが、作り方を教わったりしたことはなく、あくまでも豚骨界のレジェンドとして尊敬した上での、我流のインスパイアとのこと。 実際に食べてみると、確かにその二店舗に似ているんですが、どちらにも似ているというよりは、その二店舗の中間にあるイメージで、スープが丼になみなみと500ccも入っているのはふくちゃんの影響ですね。
麺は製麺屋慶史謹製、20番(注釈3)の特注玉子麺。 麺の太さは佐賀ラーメンを彷彿とさせます。 ツルシコで引きが強い為、普通もしくはヤワで食べるとスープとの絡みがバツグンなんですよね~。 ※個人的好みですので悪しからず。 チャーシューは大判でほど良い厚みのある肩ロース、ラーメンの邪魔をしない抑え目の味付けがいい感じ。
醤油ラーメン
牛・豚・鶏・魚介・椎茸や昆布など20種類以上の素材から出汁を引き、それらを重ねて産み出される滋味深いスープに醤油ダレを合わせています。 どれかが飛びぬけているわけじゃなく、バランス良く一体感があり、鍋やお雑煮に使ったらものすごく美味しいんじゃないかと思うスープ。 個人的にスープ販売してくれないかなあと思う逸品です。 そこに醤油ダレがしっかり効いて、他にはない醤油ラーメンに仕上がっています。
麺は製麺屋慶史謹製24番の中細玉子麺、麺自体もツルシコで美味い!
そしてチャーシューはレアチャーシュー、メンマも入っていて、どちらも美味しいです。
つけ麺
麺量は普通200g、中盛り300gで選べます。 つけ汁は牛・豚・鶏・魚介を合わせた濃厚タイプ、海苔の上に魚粉が山盛り置いてあり、後半更に魚介強めになります。
麺は製麺屋慶史謹製の14番、極太玉子麺、全粒粉入りでもっちりした食感の中にもしっかりしたコシがあり、ものすごく美味いんですよね~。 後、こちらでは麺を一度冷水で締めた後、お湯で温めた熱盛で提供されているんですが、その際に麺がくっつかないように鶏油をかけてあり、これによって更にコクが感じられる仕組みになっています。 注文時、冷盛りでと注文することも出来ます。
つけ汁の中にブロック切りのチャーシューもゴロゴロ入っていて、卓上のキムチとの相性もバッチリ。
更に、卓上にはスープ割り用のポットもあるので最後はスープ割も出来ます。 ※蕎麦湯のようにそのままでは味が濃いつけ汁に出汁を加えてちょうど良い味にして最後まで楽しむことをスープ割といいます。 また、つけ汁に小ご飯を入れて食べるのもオススメです。
肉汁餃子
夜18時からのみの提供になりますが、形は皮が厚めのシューマイのような肉汁餃子が食べられます。 肉汁餃子というだけあって、小籠包のようにアツアツ肉汁プシャーっとなりますので、火傷に注意です。 辛味が二種類、辛味噌と柚子胡椒が付いてくるのも嬉しいですね。
その他ご飯ものなど
スライスチャーシュー丼とブロックチャーシュー丼の二種類のチャーシュー丼
スライスチャーシュー丼はレアチャーシューでご飯を覆ってあり、玉子の黄身とコショー、シーザーサラダのドレッシング風の白いタレ、そしてワサビ漬が良い仕事をしていて美味いんですよね。 ブロックチャーシュー丼は短冊切りにしたレアじゃないチャーシューを炙ってあり、細切りにした海苔、ちりばめられたゴマ、そしてやっぱり黄身とワサビ漬が良い仕事しています。 どちらもタイプが全く違い、スライスはレアチャーシューの柔らかさ、ブロックだと上質なハムのような歯応えと旨さ、香ばしさが楽しめて、どちらも美味いのでとても悩ましい逸品です。
卵かけごはん
個人的イチオシメニュー。 全卵と黄身だけのどちらかを選べます。 卓上にはもやしキムチと豚肉味噌があるので、玉子にラーメンのタレを少しかけて、それからキムチと豚肉味噌をのせて、ラーメンのチャーシューや海苔なんかものせてしまうと、もはや丼。 そしてこれがめっちゃ美味い上にラーメンのスープとの相性もバツグン。 チャーシュー丼も美味いんですけど、ついつい卵かけご飯を注文してしまうんですよね。
「中洲川端きりん」の今後の展開について
博多のおっちゃんズ曰く、 「細かい対応や味へのこだわりは、自分のお店として来て下さったお客様を大事にする思いが無いと出来ないので、今後もいわゆる多店舗展開は出来ませんが、スタッフ全員が、自分が責任者として独立したいと思ってくれているので、のれん分けという形で今後福岡に限らず出店することになると思います。」 とのことでした。 また、5人のイケメン揃いの若い社員さん、林さん(25歳イタリアン出身)、金子さん(26歳イタリアン出身)、力丸さん(23歳フレンチ出身)、寺園さん(22歳ホテルフレンチ出身)、松田さん(26歳イタリアン出身)にもお話を伺いましたが、独立して自分たちのお店としてきりんを広めたいと、大変熱く語られていましたので、先々が楽しみです。
まとめ
オープン当初から美味しいと思って個人的に通っていましたが、今回改めてお話を伺ってみると、頑張っている若いスタッフさんと、その理由や場所を提供して応援している博多のおっちゃんズとの、温かい物語がありました。 こんなご時世なのに若い子がたくさん、それも熱心に働いているなあと思っていましたが、元気で丁寧な接客や細やかな対応も、ちゃんと理由があるんですね。 今後の若い子たち、いや、麒麟児たちの更なる活躍に期待しています。 尚、今回はコラボ企画ということで、「中洲川端きりん」にてkatsu muraさんが実食している様子や、2人で「中洲川端きりん」について対談している動画をkatsumura channelにて配信しておりますので、村上めしで検索の上、そちらもチェックしてみて下さい。
注釈
注釈1 文章中の博多のおっちゃん呼称については、本人達の希望により表記しております。 注釈2 文章中のブリックスは、濃度計を用いて計った場合の濃度を表す言葉です。数字が大きいほど濃度が高い、つまり濃いスープとなります。 ただし、旨味と濃度はイコールではないので、あくまでも目安の一つです。 注釈3 麺番14、20、24という言葉については、製麺機で作った麺の帯が幅30mm、これを切り分ける切刃の本数によって麺の幅(太さ)が決まることから、その本数を番手で表して麺幅を表しています。 例14番2.14mm、20番1.5mm、24番1.25mm。 但し、切った時の幅であり、茹でることで膨らむので食べる際にはこの幅よりも太くなりますし、あくまでも幅なので厚みはまた別の話となります。 一番細い麺は30番幅1mmの麺になります。