ムロツヨシさんがやりたい役者、脚本家と「やりたいこと」をやるというコンセプトで10年近く開催されてきた「muro式.」。2018年にいったん幕を閉じましたが、2021年に野外トラックを使った舞台「muro式.がくげいかい」として再開されました。その「muro式.がくげいかい」が2022年4月22日(金)~26日(火)、太宰府天満宮(福岡県太宰府市)の天神広場で開催されます。演出、出演のムロツヨシさんにインタビューしました!
「何も考えずに笑いに来られるような喜劇をつくろうと」
ー今回の舞台「muro式.がくげいかい」でムロさんがやりたいことは。
数年前からエンタメ、演劇界は大きなダメージを受けています。ただ足を止めるばかりでなく、できることは何だろうと考えたときに、野外でのトラック劇という一つの前例をつくろうと思いました。幕を閉じていた「muro式.」ですが、今までの経験値を生かして(観客が)何も考えずに笑いに来られるような喜劇をつくろうと。それが今回やりたいことですね。
―野外劇をするきっかけは。
個人で舞台をつくっている人間としてやるべきことは、前例をつくること。ある人にとっては成功、ある人にとっては失敗というジャッジをくだしてほしいです。「あれは失敗だったから、こうすれば成功だったのに」とか、「成功をまねよう」という若い人たちが現れてほしいです。
―内容は「桃太郎」がベースだとか。見た人にどんなことを感じてもらいたいですか。
多くの人が知っている「桃太郎」を「なぜ僕たちは受け継いで知っているんだろう」と考えるきっかけになればいいなと思います。僕も答えは見つかっていないんです。
ミュージカル「モンティ・パイソンのSPAMALOT(スパマロット)」というパロディーの作品に出演したこともきっかけです。イングランドでみんなが知っている物語を「こうきたか!」と思わせる解釈ができないか思案していました。
そして僕が子どものころに楽しんでいた「ザ・ドリフターズ」からちょっとヒントをもらって、子どもの笑いをつくれないかなと考えました。赤ちゃんを連れて来られる演劇もありだと思い、ショートバージョンの昼公演が生まれました。
―室内劇場と野外の違いは。
野外の素晴らしさは、空があり景色があること。生活の音、飛行機の音、木が揺れる音に特別感があります。ただ、劇場にある袖がない。何をもって役者がはけるのか、役者が隠れる場所をつくっても物をどうやって運ぶのか、などに面白さがあると思います。
―ムロさんが注目してほしいシーンは。
まずは最初です。トラック劇なので、どう登場するか注目してください。昨年、大阪と福岡で開催できず「延期」でなく「ロングラン」という言い方をさせてもらいました。「ロングラン」だからこそできることは何かと考えて、エンディングをすべて変えています。若い世代の(振り付けなどをする)ムーブメントディレクター・福田響志(なるし)にエンディングを任せました。楽しみにしていただきたいです!
―出演者の西野凪沙さんは約400人の中から選んだそうですね。その理由や魅力は。
オーディションに来てくれた役者の中で一番野心がありました。こういう人に「muro式.」を背負ってもらいたい。吸収が早かったです。その分悩む時間が長かったですが、待ちました。待つ時間も僕の経験になりました。僕の成功体験と失敗体験を伝えていって、彼女が数年かけてそれを取り入れるか、取り入れないか決めてもらえればいいなと思います。
―出演者であるヨーロッパ企画の本多力さん、永野宗典さんとの出会いは。
20年以上前にあった演劇の「E―1グランプリ」での出会いが最初です。ヨーロッパ企画も出場していて、めちゃくちゃ面白くて。悔しくて、面白かったことは言いいませんでしたけど。その後、映画「サマータイムマシン・ブルース」で3人が共演しました。それぞれが初めての映像の場でした。それを一緒に経験したせいか、できないからこそ補い合って三角形がつくれました。その形を変えて今に至っています。
―太宰府天満宮の場所を選んだいきさつは。
野外劇をしたいと考えた時、すぐに太宰府天満宮だと思いました。以前、本広克行監督から太宰府天満宮の関係者を紹介されていたので、すぐに福岡に会いに行きました。演劇の力を信じてくれている方だったので、開催OKの返事をもらいました。こんなご時世ですが「いいもん見ちゃったな」だったり「こんなことやってるヤツがいるんだな」だったり、皆さんの思い出になればいいなと思っています。
「打ち上げができるようになったら『ラーソーメン』で締めたい」
―劇中でアドリブはありますか。
実は「muro式.」は台本にフリーの“お任せタイム”をつくっています。お客さんとマッチしない場合もある非常にリスキーな作り方です(笑)。ヒリヒリもしますが、ワクワク感に変わるようになってきました。
ムロツヨシが自由人で、本多力が天然キャラのように見えると思います。でも実は、何をしだすか分からない永野宗典を2人で支えているんです。その永野宗典が一番面白かったりする。「それが悔しい」と2人で話しています。永野さんは僕たちが後ろで支えていることを分かっていない(笑)。
本多力のポジショニングが素晴らしいんですよ。前に出過ぎず、真ん中に立ちつつ。誰かの面白フレーズがお客さんに伝わらなければ、面白フレーズのさらに面白フレーズを生み出すのが本多力なんです。お笑いの世界の人たちはすぐに見抜いて「一番すごいのは本多さんでしょ」といいます。「俺じゃないの」と言ったら、「絶対、本多さん」だって(笑)。その臨機応変な三角形を見ていただきたいです。
―福岡の食事など、楽しみにしていることはありますか。
今回、太宰府なので行けないと思いますが…やっぱり(「ふとっぱら」の)「ラーソーメン」。アーティストも演劇の人たちも「ラーソーメン」で締めるといいますか。打ち上げができる時代になったら行きたいです。
―ムロさんのリフレッシュ方法は。
ご時世が許せば1人旅に行っています。ふらっと知らない場所へ。昔は誰かと飲むことだったんですけど、この2年で変わりました。それからジョギングをすることもリフレッシュになっていますね。
―公演をする中で地域ごとに反応は違いますか。
大阪の皆さんは受け入れてから笑うまでのスピードが速い。東京の人は信用するまでに時間がかかりますが、集中して見てくれています。僕の経験でいくと、福岡はこの真ん中。ふわっと心地よい。信用しすぎないほどよい感じがあります。
muro式.がくげいかい
出演:西野凪沙、本多力(ヨーロッパ企画)、永野宗典(ヨーロッパ企画)、ムロツヨシ
脚本:ふじきみつ彦
メインテーマ:東京スカパラダイスオーケストラ
演出:ムロツヨシ
日時:2022年4月22日(金)~26日(火)
※全8回公演。4月22日(金) 19:00、23(土) 14:00 /19:00、24(日) 14:00 /19:00、25(月) 19:00、26(火) 14:00/19:00 ※一部完売や残席わずか
場所:太宰府天満宮 天神広場 特設会場(野外) 福岡県太宰府市宰府4-7-1
【14:00開演の回】全席指定 一般 5,000円、高校生以下 2,000円(税込み)
※中学生以下は保護者同伴の上、来場を
※未就学児は保護者1人につき子ども1人まで膝上無料。座席が必要な場合は有料
【19:00開演の回】全席指定 8,000円(税込み)
※未就学児入場不可
※各公演1人4枚まで
問い合わせ:「muro式.」福岡公演事務局(FBS福岡放送内) 092-532-1830(平日10:00~17:30)