【母の日】切ない思い出 プレゼントに腕時計を選んだワケ

 初めての給料は、親に何か贈るのが夢だった私。高校1年生の時に始めたアルバイトで、初めて給料をもらいました。ちょうど母の日が近いことから、当時流行していたラインストーンが縁に埋め込まれた腕時計を、母と自分にお揃いで購入をしたのですが…。

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母の日 プレゼント

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 母の日の朝、購入した腕時計を母に渡しました。母はとても驚きながら喜び
 「こんな素敵な腕時計初めて!」と早速つけてくれました。せっかくなので、お揃いの腕時計をつけて買い物とカフェへ行くことになりました。

 親子関係は悪くなかったのですが、年頃になると一緒に買い物に行くことも少なくなっていた為、久々の母との買い物を楽しみました。母は
 「腕時計に合う洋服を購入したい」と、楽しそうに洋服を選んでいました。その後、オシャレなカフェで最近の話をしながらイチゴタルトとアイスカフェラテに舌鼓を打っていました。母の腕で光る腕時計を見ながら、こんな幸せな時間がずっと続けばいいなと思ったのを覚えています。

帰宅後 母との喧嘩

 楽しい時間を過ごし、帰宅するといつもの日常が戻ります。当時の私は思春期で、成績をめぐって母と喧嘩をすることもありました。
 そして、母の日にも私の成績について喧嘩をすることになってしまったのです…。喧嘩の最中、腹を立てた母が
 「こんなものもらうよりも、勉強をしてくれるほうが嬉しい」と、腕時計を床に叩きつけたのです。

 初めての給料で買った腕時計が床に叩きつけられた事、喜んでもらえていなかった事がショックで、私は言葉を失ってしまいました。
 叩きつけられた腕時計のラインストーンは数個取れていました。壊れた腕時計とストーンを拾っていると、これまでに無いような胸の苦しみを感じました。初めて、「胸が苦しいというのはこういう事か」と知った体験でした。

 無残な姿になった時計を見ながら、お金を稼ぐ事がとても大変だった事、自分のお金でプレゼントを買う時の気持ち、渡した相手が喜んでくれるだろうかという気持ち、渡した時の自分の気持ちを思い出し、涙が止まりませんでした。

翌朝 仲直り

 気付くと、朝になっていました。前日泣きつかれて、寝てしまったようです。机に置いた、壊れた腕時計は無くなっています。捨てられてしまったかな、と思いながらリビングに行くと、母が壊れた腕時計をつけていました。そして
 「ごめんなさい。昨日の行動はどうかしていた」と腫れた目をしながら母が謝ってきました。
 「勉強嫌いだけど、やるよ」私と母は仲直りしました。

母の日に腕時計をプレゼントした理由

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 私が大人になってから、“あの時なぜ腕時計を選んだのか”を母と話す機会がありました。私は昔からロマンチストな性格です。
 「生まれてから一緒に時を刻んできたから、これからも一緒に時を刻みたいと思ったから」と母に伝えました。母は
 「そんな気持ちで贈ってくれた物を叩きつけてごめんなさい」と泣きながら謝ってきました。

  今では私も一児の母です。
 ビールを一口飲み、母の腕についているラインストーンが取れた腕時計を見ながら
 「あの時のお母さんの気持ちが今なら分かる。今度は私と、私の息子と三世代でお揃いの腕時計買おうか!」と笑いながら話しました。

 母が全てだった子ども時代から、自分が中心の時代、仕事が大事な時代、子どもが中心の時代と沢山の大切な時間を過ごして今に至ります。それでも、何年経っても自分の腕時計を見ると、今なら理解出来る母としての感情もありつつ、あの時の母の日の切ない思い出がよぎります。

 (ファンファン福岡公式ライター / でんでん)

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