福岡の書店員さんに福岡ゆかりの本を紹介してもらうファンファン福岡の「福岡キミスイ本」シリーズ。44回目は「紀伊國屋書店 福岡本店」(福岡市博多区)の宗岡敦子さんを訪ねました。あわせて、この時期に読みたい話題の7冊を紹介します。
舞台は中洲 ある少年の成長を描いた感動作
「真夜中の子供」 辻仁成著
―こんにちは! 今回宗岡さんが紹介されるのはどんな本でしょうか。
辻仁成さんの「真夜中の子供」(2021年3月河出書房新社発行、891円、税込み)です。無戸籍で生まれた子どもの話で、福岡市博多区の中洲が舞台になっています。育児放棄や虐待を受けながらもいろいろな人に支えられ、成長していく物語です。
―この本を選んだ理由は?
やっぱり福岡が舞台になっている点です。中洲の様子がリアルに描かれていて、物語の中には博多祇園山笠も登場します。その描写もすごく生き生きとしていて、本当の物語のようです。臨場感に圧倒され、一気に読んでしまいました!
―作品のどんなところに面白さを感じましたか?
無戸籍の主人公が本当に悲惨。努力などで社会を変えるのは難しいので、周りは助けたくても助けられない。でも、絶対に寄り添ってくれる人や助けてくれる人がいて、その人たちの影響を受けて主人公が成長していきます。つらいだけじゃなく、厳しい現状を乗り越えた先に光が見えてくる。ただ暗い、絶望的というだけではなく、読む人に力や勇気を与えてくれる作品だと思います。
―結末が気になりますね…! どんな人にオススメしたいですか?
何かで悩んでいたり、不安や孤独にさいなまれている人に読んでほしいです。私自身もですが、孤独や絶望って感じたことがない人はいないと思います。いろいろな人の力や助けがあって前へ進めると思うので、ぜひこの本を読んで元気や生きる希望を見出してもらいたいです。
―紀伊國屋書店 福岡本店は開店から今年で何年になるのでしょう?
当店は1995年5月に開店したので、今年で27年になります。和書、洋書をはじめ、雑誌やコミックなどを取り扱っているほか、日記や手帳、カレンダーなど時期的な商品も販売していますよ。
―ありがとうございました! 展示コーナーには作家のサイン色紙や、書店員の一言も添えてあるので、ぜひ立ち止まってみてくださいね。続けて話題の7冊を紹介します。
「99年、ありのままに生きて」【中央公論新社】
瀬戸内寂聴著/1,760円(税込み)
大正・昭和・平成・令和4つの時代をかけぬけて「今、生きていてよかったと、つくづく思います」。デビュー間もない36歳のエッセイから、99歳、林真理子さんとの最後の対談までをつづった一冊。人々に希望を与え続けた、瀬戸内寂聴さんの一生を辿る決定版です!
「ひげの殿下日記」【小学館】
寛仁親王(文)、彬子女王(監)/4,400円(税込み)
ひげの殿下として愛された寛仁親王殿下が逝去して10年。社会福祉のことはもちろん、友人、宮家職人、娘たちの成長日記、スキーとスポーツ、そしてガンとの闘病のことがまるで日記のようにつづられています。現代皇族は何を考え、どのように暮らし、そして生きられたのか。日頃触れられることが少ない、現代皇族の生の声を伝える資料として貴重な一冊です。
「相談される力」【光文社】
廣瀬俊朗著/1,650円(税込み)
何かあったときにすぐに相談できる仲間がいることは、非常に心強い。元ラグビー日本代表の主将として活躍後、「news zero」のコメンテーターなどさまざまな分野に挑む著者が、これまでの経験をもとに、コロナ禍でのチームビルディング、地域や職場での人間関係など、相談し合える関係性を築くための参考になればとつづった話題作です。
「女性の不調は『油+』でよくなる」【青春出版社】
伊達友美著/1,540円(税込み)
実は女性ホルモンの材料は「油(コレステロール)」だと知っていましたか。PMS(月経前症候群)や生理不順といったホルモン系の不調は女性ホルモンの材料不足、つまり栄養不足のせいかもしれません。「プラス栄養」の発想でダイエットや美肌をかなえてきた人気管理栄養士が、生理から妊活、更年期まで、女性の一生を支える「油+」の食べ方を教えます。
「脚を動かすだけで下半身から即やせ! 股関節ムーブ」【学研】
miey(ミー)著/1,430円(税込み)
食事制限をしてもおなかはぽっこり、やせても太ももだけムッチリ…その原因は「股関節が硬い」ことにあるとか! SNS総フォロワー数110万人超のmieyが教える最新メソッドは、おなかと脚を最短でスリムにする「股関節ムーブ」。股関節をほぐして鍛えるだけで、脂肪を燃焼させませんか? 夏に向けて、あなたも簡単ダイエットにチャレンジしては。
「やがて飛び立つその日には」【双葉社】
石野晶著/726円(税込み)
「生きるために、生まれてきたんだ──」。岩手県の美しい自然に囲まれ、虫をこよなく愛する少女・花守ひばり。15歳の誕生日に、亡き母が遺したメッセージから、自らの数奇な運命を知ることに。宿命に翻弄されつつ希望を胸に進む彼女に、やがて奇跡の出会いが訪れ…今を懸命に生きていくことの尊さを知る感動作です!
「食べものがたりのすすめ」【農文協】
湯澤規子著/1,540円(税込み)
おばあちゃんの戦時下の料理帳から歴史を学び、食べものとウンコの行く末からフードロスに思いを巡らせ、誰かのレシピを受け取り、作ることで地域とつながる。そんな「食べものがたり」から広がるワークショップを始めてみませんか? 実践のコツや時間配分がわかる巻末付録つき。
いかがでしたか? 梅雨に入り、室内で過ごす時間が増えたという人も多いのでは。そんな時は屋内でのんびり読書を楽しんではいかがでしょう。次回もお楽しみに!