“人生は冒険だ” 映画「空に住む」青山真治監督にインタビュー

 作詞家・小竹正人さんの小説と三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの楽曲「空に住む ~Living in your Sky~」の世界観を映画にした「空に住む」が公開中です。黒猫ハルとタワーマンションに住む主人公・直実を多部未華子さん、彼女の前に現れるスター俳優・時戸森則を岩田剛典さんが演じます。長編映画を撮影するのは7年ぶりという青山真治監督に話を聞きました。

出典:https://fanfunfukuoka.aumo.jp

―小説や楽曲を映画化するにあたって大切にしたことは。  原作者の小竹さんとは、何がこの作品の“コア(核)”なのかをかなり話しました。小説やシナリオを何度も読み返して、徐々に理解しながら、キャラクターのイメージを作っていった感じです。劇中には、主人公と暮らす黒猫のハルが登場しますが、僕も小竹さんも猫好きで話が盛り上がって。僕も飼っていた猫との別れを経験しています。そんな思いも重ねながら、原作のコアな部分を丁寧に描いたつもりです。ハルを演じてくれたのは、12歳のベテラン俳優猫ですよ。

―本作初タッグ、主演の多部未華子さんの印象は。  10年くらい前から、多部さん主演のドラマはよく拝見していました。夫婦でファンになって、うちの娘にしたいな~なんて話していたんですけど(笑)。面白い女優さんだなという印象です。個性があって、一味違う何かを持っている人だと思います。

―役作りについて。  僕は、あまり役者に対して演出はしません。多少の意見交換はしますが、なるべく話をしない方がいい。シナリオはすでに渡してあるので、役者がどう演じるかが僕の興味の中心なんです。外側から口を挟むより、役者同士の関係の中で作り上げていく感じや、それぞれのアンサンブルが興味深いです。

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―多部さん演じる直実はどうでしたか。  「あ、そうするんだ」と感心する場面も多く、直実そのものでした。「それでいきましょう」と淡々と進められましたね。年齢など関係なく、主演とはそういうもの。主演としての“格”を演じてもらわないといけない。多部さんはしっかりと演じてくれていたと思います。

―スター俳優役の岩田剛典さんは。  多部さんと同様、脚本を読んで感じたままに演じてもらいましたが、ひたすらクレバーな人です。何をやってもクレバーに見えてしまう。岩田さんが演じる時戸、僕は好きですね。岩田さんが時戸を演じてくれてよかったです。

―7年ぶりの長編映画、製作に関して心境の変化は。  実は、今までは「この映画は僕の好きなあの映画を意識しよう」とか、そんなことを一人でひそかに考えながら作っていたんです。でも今回は、それが全くなかった。そんなふうに考えないまま、気付いたら完成していたんです。やっと一人前の映画作家になれたと言ってもいいのかな。

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―それは何かきっかけが?  少し前まで大学の先生をしていて。教える側は、学生より勉強しないといけないんですよ。ひたすら勉強していたので、何かに似ている作品は作ってはいけないと思ったのかもしれませんね。5年間くらい先生をしましたけど、教えるより映画を作る方が単純に好きだということに尽きますね(笑)。九州を舞台にした作品? 期待されるとやりたくなくなるタイプです(笑)。

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―読者にメッセージを。  この映画を見て、“人生は冒険だ”ということを感じてほしい。見た後、そういう意味か…と、それぞれの受け止め方をしてもらえればうれしいです。

あおやま・しんじ

1964年北九州市出身。96年、北九州市門司区を舞台にした「Helpless」で長編映画デビュー。2000年に手掛けた映画「EUREKA ユリイカ」で第53回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に招待され、国際批評家連盟賞とエキュメニック賞を受賞。主な監督作品は「月の砂漠」「レイクサイド マーダーケース「」エリ・エリ・レマ・サバクタニ「」こおろぎ「」サッド ヴァケイション」「東京公園」「共喰い」など。

取材/秋吉真由美 撮影/下川順司

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