福岡の街のドラッグストア戦線! ギンギラ太陽’sが3年ぶりに短編ライブ 大塚ムネト氏インタビュー

 福岡の商業施設や交通機関をキャラクターにして福岡の街の“歴史や今”を演じる劇団「ギンギラ太陽’s」が、約3年ぶりの短編ライブを披露します。公演タイトルは「天神ビッグ・バン!バン!バン!bom.6 ドラッグストア大戦争」。今、多くの人が一番気にしているといえる【健康】に密接に関わる、ドラッグストア業界を描いた新作短編集です。ギンギラ太陽’sの主宰で今作も脚本、演出、出演を担当する大塚ムネトさんにインタビューしました。

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「お待たせしました!」ギンギラが人気の短編集で帰ってきたぞ

6月公演の稽古前に衣装着用で迎えてくれた大塚ムネトさん

―ファンファン福岡では、「さらばイムズ」特集(2021年7月30日号)の時にお世話になりました。今回、ギンギラ太陽’sさんの約3年ぶりの短編ライブが復活ですね。ドラッグストアをテーマにした理由は?

 皆さんそうだと思うんですけど、コロナ禍の最初のころ、マスクや消毒液が手に入らなくて苦労しましたよね。

―そういえばマスクを購入するために、天神地下街のマツキヨの長い行列に並んだのを思い出しました。

 そうですよねー。僕もいろんなドラッグストアを回ってマスクや消毒液を探して回って。そんな時、ドラッグストアと言っても、店によっていろんな個性があるんだな、ちょっと面白そうだなと。食品が充実しているスーパーマーケットに近い店だったり、化粧品が充実しているちょっとファッショナブルな店だったり、調剤薬局がメインの「昔ながらの薬局です」みたいな店だったり。

 それに僕はずっと流通の物語をやってきたので「なんでこんなに食品が安いんだ」とか「これはどうやらドラッグストアって、いろんな業種と戦いながらやってるのではないか」と気が付きまして。そこで2年前くらいからドラッグストアの取材を始めました。

どのドラッグストアが気になる? 提供:ギンギラ太陽’s

―案外前から目を付けていたのですね。

 取材は進めていたんですが、ギンギラ太陽’s(以下ギンギラ)の本公演って、天神コアの解体をテーマにした本公演が中止になるなど(2020年)、ずっとできていなくて。ショーマンシップとの合同公演やNHK福岡放送の創立90周年記念の番組を作らせてもらったりなど、なんとか形を変えながらギンギラという表現の継続はできていたものの、やはり本公演のエンターテインメントをどのタイミングでやっていいんだろうかという迷いがあって。

「皆さんの声があって今作の準備に取りかかりました」

―2021年8月にはイムズの閉館もあって。

 その時はイムズの締めくくりのお芝居(「おしまイムズ、吹き抜けよ永遠に」)をやらせてもらいましたが、実はその時も「エンターテインメントをやってもいいんだろうか」と考えました。「お客さまは来てくれるんだろうか」とも。でも、それと同じくらい「僕らは表現者なのに、表現できないまま1年2年と過ぎていくのをどうしたらいいんだ」という悩みもあった。それに、とても縁の深かったイムズさんだったので(上演を)決めたわけです。

 そうしたら、お客さまがぞくぞくと来てくださったし、アンケートには「エンターテインメントを待ってた!」「ギンギラ太陽’sを待ってた!」という声がたくさん。そんなお客さまの応援のおかげで「よし、これは何とかライブを再開しよう」と思い立ったわけです。

 そうしてライブをやるとなれば、ギンギラの常として“街の今”を描きつつ、笑えて、街のことにちょっと詳しくなって役立って、みたいな内容にしたいなと思って。 だったら今、皆さんの中で一番もしかしたら行ってるのはドラッグストアかもしれないし、今はみんな健康のことを気にしているから、ドラッグストアを題材にして、街で起きていることを「健康」という切り口で描こうと考えたんです。

1時間に34キャラ! ドラッグストアをギンギラ目線で見ると?!

ドラッグストアってこんなことになってたの?! と驚くなかれ 提供:ギンギラ太陽’s

―今作の特徴を少し教えてください。

 いつも、登場する乗り物だったりお店だったりを「一つでも好きになってくれたらいいな」と思いながら物語を作っていて、今回でいうと34キャラクターが出てくるんですが…

―出ますねえ!(笑)

 そうですね、1時間で34キャラ。出演は7人ですから1人5役くらいをフーフー言いながら演っています(笑)。僕が演じる地元密着のドラッグストアをはじめ、おなじみのドラッグストアたちが出てくるので、どれか一つでも好きになってもらえたらいいなと思います。

 ギンギラではお店や物がキャラクターに見えてくることを「ギンギラ目線」と言っていて(笑)、お客さまにもギンギラ目線を持ってもらえるようにしています。今回の芝居を見た後は、それまでただマスクや消毒液を買いに行っていたドラッグストアが、ギンギラ目線を通すことで、ドラッグストアに出かけることもエンターテインメントの延長みたいになってくれたらいいなという思いもあります。

「僕が演じるのはこのマークの…」

―大塚さんがよく行くドラッグストアはありますか。

 家の近くにあったのが「ドラッグイレブン」で、上の階に100円ショップの「キャンドゥ」がありました。ドラッグイレブンはツルハグループの一員に変わっていったりするんですけども。そして2年くらい前からはどこもかしこも行ってますね(笑)。りんごのマークの「ドラッグストアモリ」は食品が充実していますし、一番最近だと、ららぽーと福岡の前に「コスモス」があるので、ららぽーととコスモスを見比べながら両方に行ってみたり(笑)。

―取材対象としていろんな店舗に(笑)。

 そんな中、自分の中で存在が大きくなったのは「大賀薬局」です。それもあって、今回、大賀薬局を演じています。これまでずっと福岡の流通のこと、天神や西鉄、戦前や戦後の歴史などを描いてきていたんですが、その時々に、実は常に大賀薬局が資料に出てきていたんですね。出てきてはいたものの、薬局やドラッグストアというのを自分の中で意識できていなかったので、あまり気に留めていなかった。

 それが改めて今回、ドラッグストアという軸で見ると…天神って元々畑が広がる寂しい地域で、1924年に最初にできた鉄道会社も西鉄の前進の小さな鉄道会社で赤字だった。その後1936年、昭和11年に岩田屋が天神にターミナルビルを作り、天神が発展していくんです。そして実はこの岩田屋のビルができるよりも前に、さびれていた天神にいち早く、天神の未来を信じて出店していた、それが大賀薬局だったんですよ!

―そんなに前だったとは驚きですね。

 戦後にできた新天町よりもずっと前なんですよ。戦前に既に薬品と食品を扱う店を天神に作っているんです。そして戦後は西鉄街という商店街(天神コアの前身)の中で、夜中の12時くらいまで開けているお店を営業していた。これって今でいうコンビニエンスストアの先駆けですよね。そして1961年に福ビル(福岡ビル)ができたときは、1階に出店。これが、実はドラッグストア形式として、日本で一番最初のお店だったらしいです。

大賀薬局のエピソードが止まりません

―えっ、そうなですか、全く知りませんでした

 調剤もあって、薬や雑貨を売っている。このドラッグストア形式が福岡で一番最初でもすごいのに、九州初どころか日本初だったというのを知って「すごいな大賀薬局!」と。しかもその福ビルの店で、雑貨をまとめて同じ金額で売って大好評だった、その値段が100円だったという。それって今や暮らしの定番の100均なわけです。

―なんと!

 大賀薬局は調剤もいち早く、コンビニと組んだのも福岡では一番早かったというように、常に先陣を切ってお客さまのために便利なことや新しいことに挑んでいるです。そんな中にあってブレていないのが、「地域に根ざして人々の健康を支える」という目標。僕もギンギラを「地域密着で地元の物語を地元から発信していくんだ」という気持ちでやってきましたので、地域にこだわる大賀薬局の姿勢に共感するものがあって。そんなことで誠に勝手ながら(笑)、大賀薬局をやらせてもらっています。

 今の大賀の社長が「全国にたくさん出店しないんですか」という問いに対して「たくさん出店するなら地元にたくさん出して細やかに地元を支える」と答えたというようなことが書いてあって、それにぐっときたので、今作のセリフにも引用しています。

大賀、ツルハ、コスモス、100円ショップの歌謡ショー 皆さんと一緒に空間を作る喜び

 ―ツルハドラッグやコスモスの話もありますね。

 北海道から南下してきた化粧品に強いツルハ、宮崎県で生まれて九州から攻め上がっているコスモス。どちらも面白いんです。コスモスは「エブリデーノープライス」とうたって安さで勝負している。チラシも作らずにコストを抑え、薬で利益が上がるから食品はギリギリでいいとか(笑)。そうだったのか!とか、だからあんなに安かったのか!とか発見ばかりです。

―そういえばコスモスは冷凍食品も充実しています。

 コスモスのPBの冷食は、裏を見たらナショナルブランドですよ。プライベートブランドをいかに充実させていくか、これがドラッグストア業界の次の戦いで、一流のナショナルブランドと組んでプライベートブランドを出しています。冷食もコンビニに負けていないんです。

 百貨店をスーパーが追い抜き、スーパーをコンビニが追い抜き、その後、流通を賑わせる存在がずっとコンビニだったと思いますが、そのコンビニと互角に戦うのがドラッグストア。ドラッグストアのコンビニ化が先か、コンビニが薬品をどんどん扱えるようになってドラッグストア化するのが先かみたいな感じで、し烈な戦いを繰り広げているんです。

 特にコスモスはコンビニとは違う商法で、狭い商圏に大きな店舗をどーんと作る戦い方。業界の資料を見ると、コスモスが出店すると、その地域の流通戦争が激化すると書かれています。

―本当に個性が違うんですね。

 だから今回は、かぶりモノもいろんなタイプが出てきます。初登場も多いですよ。ドラッグストアはロゴデザインにも個性があって、一目で分かる。さらに一番印象に残る部分を強調して作っています。

―そんな話が詰まった5つの短編で構成されていて、昭和歌謡編もありますね。

 どこまでネタばれしようかなあ(笑)。100円ショップが出てきて、あの御三家の歌を歌いまくります。

おなじみの天神キャラが登場。もちろんイムズマンも  提供:ギンギラ太陽’s

―5月公演での手応え、観客の反応は。

 皆さん「うん、そうそう、ドラッグストアってそうだよね!」という反応でしたし、歌謡コーナーは「おバカなことやってるなー」と思いながらも振り付けを一緒にしてくれていましたね。振りがちょっと難しいんですよ(笑)。

 そういえば、実は今回の天神劇場のイス(客席)は、イムズホールから譲り受けたイスが並んでるんです。イムズやイムズホールの思いをイスで受け継いでいるんです。

―イムズマンの歴史はつながっているんですね。

 いつもだったら記念写真大会をやるんですが、今はコロナ対応でお客さまに席を立ってもらえないので、僕がイムズマンで登場して「それぞれのお席から撮ってください!」みたいなことをやります。

 それにしても「皆さんと一緒に空間を作っていくのが演劇なんだ」ということを、少しずつですが取り戻せているのが本当にうれしいです。マスクをしてくださいとか、熱を測ってくださいとかこちらからのお願いごとがたくさんあるのに、ちゃんと守った上で見に来てくださる皆さんの存在がとてもありがたいです。

チケットは「健康祈願・疫病退散」の特製バッジ付き! 提供:ギンギラ太陽’s

―最後にメッセージを。

 今回見てくださると、きっとどこか大好きになるドラッグストアが見つかると思いますよ。ドラッグストアと健康に詳しくなりに来てください! バッジも付いています(笑)。

「天神ビッグ・バン!バン!バン!bom.6 ドラッグストア大戦争」

日時:6月5日(日) 18:00 ※完売
     6日(月) 14:30/19:30
     7日(火) 17:30/19:30
     8日(水) 14:30/17:30/19:30
     9日(木) 14:30/17:30
場所:天神劇場(福岡市中央区天神3-7-13 TM-20ビル2階)
料金:全席指定3,500円(税込み) ギンギラ特製バッジ付き
問い合わせ:アンミックスエンタテインメント
電話:092-725-2558(11:00~17:00)※月曜除く

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