私は都市から田舎へ移住し、10年以上経ちました。田舎生活にもすっかり慣れたつもりでしたが、今でもスーパーへ行くと驚かされることがいっぱい! 客層の7割以上がお年寄りなので、いろいろな頼みごとをしてくるのです。戸惑いつつも、平和に解決できた、ほっこりするエピソードをご紹介します。
買うものを忘れちゃった、おじいさん
ある日、陳列通路中央で1人のおじいさんが悩んでいる様子。私がその横を通り過ぎようとしたら
「ねえ、ちょっと」と、おじいさんがかなり参った様子で話しかけてきました。きたきた~、今日は何を頼まれるのかしら? と、私が少しワクワクしていると
「今日、3つ買う物があって来たんだけど、1つがどうしても、思い出せん。一緒に考えてくれんかの?」とおじいさん。
「え!? 買う物ですか?」まさかのお願いごとに、私もびっくり。初対面の私に聞くの…? と思いながらおじいさんの買い物かごの中身から連想し、一緒に考えますがかなりの難題でした。
そして、近くに来た店員さんに相談することに。
「すみません! おじいさん買う物を忘れてしまったみたいです」私が店員さんに相談すると、店員さんは
「あら、困ったね。今日何を食べました?」と、慣れた感じでおじいさんに質問します。おじいさんは
「朝ご飯はみそ汁と、魚と…。おぉ! そういえばバナナが最後の1本だった!」答えると、ぱっと表情が明るくなったおじいさん。私と店員さんに
「ありがとね」と言い、ニコニコ笑顔でバナナ売り場へ去っていきました。一件落着です。
さすが、なるほどね! こういう時は普段の生活を質問してそこから思い出してもらうのか! と、店員さんのテクニックに感心しました。
老夫婦からのまさかのお願い
スーパーの特売日。駐車場はほぼ満車。やっと見つけて私が駐車しようと思った所は、隣のスペースに老夫婦の車が駐車している最中でした。おばあさんが降りて誘導しながら、駐車に一生懸命のおじいさんドライバー。私はこの車の隣に停めたいので、のんびり待っていました。ここではイライラしない! が鉄則です。すると、2人は思いがけない行動に出ます。
車を放置し、そのまま降りてきてしまいました。そして私に一言。
「ちょっと、あんた、車、入れておいてくれる?」ニコニコ笑顔でおじいさんは言います。
「私がですか?」困惑して答える私の返事も待たず、老夫婦はお店に入ってしまいました。大役を任され、やれやれな私。でも頼られたのが嬉しくて、悪い気はしませんでした。
老夫婦の車を駐車し、隣に自分の車を停めて、カギを渡そうとお店で2人を探します。おじいさんはグレーのシャツ姿、おばあさんは小柄で花柄のブラウスだったはず。ところが、似た人ばかりで見当たりません。やっと鮮魚コーナーでお魚を選んでいる老夫婦を発見。
「はい、カギ。車入れておきましたよ」と、私がカギを渡すと2人は
「ありがとね」と、いたずらっぽく笑っていました。もしかして常習犯…? 老夫婦のいたずらっぽい顔をみてそう感じましたが、今日もまた困っていたお年寄りを助けた私ってちょっとスゴイ人なのかも…。
田舎のスーパーにいくと、お年寄りの周りは「時間がゆったり流れている」感じがします。
「困ったときはお互いさま。素直に助けてもらいましょう」そんな気持ちで私へ「ちょっと」この一言で、私は誰かのお役に立つことができます。そして、最後に「ありがとね」の言葉にほっこりするのでした。
(ファンファン福岡公式ライター/松永つむじ)