息子が3歳になったので、映画館デビューをたくらんだ私。初めての映画にふさわしい作品をとよく考えて選び、親子3人でいざ映画館へ。ところが、予告が終わり照明も落ちて真っ暗になった途端、静まり返った劇場内に恐れおののく息子の叫び声が響き渡ったのです!
息子が映画館デビュー
映画好きな私たち夫婦は、月1ペースで映画館に足を運んでいましたが、息子が生まれてからはDVDでガマン。大人向けの映画はしばらく諦めつつも、子どもと一緒に楽しめる映画から始められるといいな… と考えていたら、パパも同じ気持ちだったのでしょう。息子が2歳を過ぎた頃から、子ども向けアニメのDVDを買ってきては、親子で楽しむようになりました。
最初のうちは、トイレで中断したり、眠くなったりしていた息子ですが、次第に長時間映画でも集中して見られるように。「これならそろそろ映画館に連れていってあげられるのでは」と思った私は、息子の3歳の誕生日に合わせ、映画館デビューを計画したのです。
初めて見る映画は、一生の思い出。私自身、兄の付き合いで興味のないヒーロー映画を見せられたのを不服に思っていたので、息子には大人になっても胸を張って「初映画はコレ!」と言えるような映画を選んであげたい、と考えていました。
タイミングよく、当時注目されていた某人気アニメ映画の新作が公開間近。パパと相談して、いざ3年ぶりの映画館へと出掛けたのです。
映画館に大興奮!
話題作とあって、映画館はとても混んでいました。ロビーには、公開中の映画のポスターがギッシリ。その中に、お目当ての映画に登場するキャラクターたちを見つけて、息子も大興奮です。
私たちは売店でポップコーンと飲み物を買うと、アナウンスを合図に劇場内へ。初めての場所と大勢の人で最初はキョロキョロしていた息子ですが、大きなスクリーンにCMや予告が映し出されると、目をキラキラさせて楽しみ始めました。
いよいよ上映時間になって、一瞬スクリーンが消えると、照明がゆっくりと落とされ、騒がしかった劇場内も波が引くように静まっていきます。
「お、始まるね」とパパと目配せすると、私は席に深く腰掛け直し、スクリーンを見つめました。そして、辺りが真っ暗になったその時です。シーンと静まり返った劇場内に、小さな子どもの甲高い叫び声が響き渡ったのです!
響く叫び声、どよめく劇場
「だれかー! 電気つけてー!」暗闇に恐れおののくその子どもの声は、なんと、息子の声でした。
「え?」
慌てて息子のほうを振り返ると、もう一度
「電気つけてよぉー!」と確かに息子が、絶叫しているではありませんか!
あちゃーと思った瞬間、静まり返った劇場にどよめきが起こりました。
そう、うちの子、今日が初めての映画館なんです。寝る時も小さな明かりを点けているので、暗闇には慣れていなくて。皆さん、ゴメンナサイ…
私は小さくなって、心の中でお詫びするしかありませんでしたが、パパはゲラゲラと大笑いしています。幸い、どよめきをかき消すように、映画が始まりました。
とんだハプニングで始まった息子の映画館デビューでしたが、暗闇におびえた息子も映画が始まればいつも通り、物語の世界へ。パパと吟味して選んだ映画は、映像もストーリーも最高で、親子ともども大満足でした。
映画には慣れさせたつもりでも、映画館には慣れていなかったばかりに起こった失敗。あらためて、子どもの目線に気付く出来事でした。そんなアクシデントも含め、私たち親子にとっては今も忘れられない思い出です。
(ファンファン福岡公式ライター / 繭子)