子どもの頃私は、夏になるとお中元が届くのを楽しみに待っていました。中身は何? 美味しいもの? 届くたびに大喜びで箱を開け、お菓子やジュースだった時は大騒ぎしながら姉弟で分けたものです。そんな子どもの夢はある夏、大人たちの都合で…。
お中元がやってきた!
最近は受け取ることも送ることも、すっかり少なくなってしまったお中元。私が子どもの頃には、夏になると毎日のように父宛のお中元が届いていました。
会社の人や親戚から荷物が届くたび、まだ小学生だった私は母にせがんで箱の中を見せてもらっていたのです。
私を筆頭に4人の子どもがいるわが家では、お中元のほとんどが食料品か洗剤でした。油や醤油、お酒だった時は、「なんだ…」とがっかり。
反対にお菓子やゼリー、ジュースが届いた時は姉弟で大喜びしたものです。
わが家の事情をよくわかっている親戚は、毎年私たち姉弟が喜ぶようにと、お菓子などを送ってくれていたようでした。
分配は平等に!
いざ嬉しいお中元が届くと、その後は戦いです。私は4人姉弟の1番上だったので、平等に分けるように母から指令を受けていました。
「まだ触っちゃダメ。ジャンケンにする? くじ引きがいい?」まずは何が届き、いくつ入っているのかを確認し、弟や妹の希望を聞き、好みが重なる時は喧嘩にならないように、ジャンケンかくじ引きで決めます。
1番下の妹は早く食べたくて泣き出し、弟は1番に選びたいと怒り、せっかく分けても母には
「今は食べてはいけない」と注意され、お中元が届くたびに夏休みのわが家は大騒ぎ。
もちろん親戚にお礼の電話も忘れません。母に電話口に出るように言われると、顔も覚えていない親戚にかしこまってお礼を言いました。
「今年もジュースありがとう」
「みんなで仲良く分けるんだよ」お中元を贈って私たち姉弟と電話で話すことを、遠方の親戚は楽しみにしてくださっていたのだろうと、大人になった今では思います。
夢の終わりは突然に
しかし私が高学年になったある年のこと。お中元の到着を姉弟全員で楽しみに待っていましたが、あまり届きません。
届いてもほとんど父の仕事関係の人からで、調味料やお酒ばかり。子どもには嬉しいはずがありません。がっかりするお中元が何度か続き、私はついに母に尋ねました。
「お母さん、今年はおじさん達からのお中元が届いてないね」
すると母から衝撃の事実が告げられます。
「お中元? やめたのよ」
「ええ、なんで!?」あまりにびっくりして、姉弟全員でぽかんとしてしまいました。
「だって毎年どれにするか悩むし、お金もかかるし大変でしょ? おじさん達と相談して、親戚の間でのやり取りは、今年から無しになったのよ」
なんともひどい話です。忙しい母は手間とお金、さらに時間も節約できて嬉しそうに笑っていました。一方、楽しみが奪われた私たち姉弟は、谷底に突き落とされた気分です。今年は何が届くかな? と、姉弟でワクワク話をしたのは、つい数日前のこと。
「おじさんからのジュース、今年から無いんだって」
私が説明すると、まだ小さい妹たちは泣き出しました。
「なんでやめちゃったの? 飲みたかったのに!」
「泣かないの。仕方ないでしょ…」私もがっかりしすぎて一緒にメソメソしたことを、大人になった今でも覚えています。
そんな私も結婚して10年。残念ながらわが家にお中元は届きません。調味料や洗剤が届けばどんなに助かるか、シーズンの度に考えてしまいます。皆さんのご家庭には、ワクワクする嬉しいお中元は届きますか?
(ファンファン福岡公式ライター / ましまろ)