祖母が語った不思議な話・その弐拾漆(にじゅうしち)「呼ぶ子」

 私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。

イラスト:チョコ太郎

 祖母とテレビで妖怪のアニメを見ていた。呼ぶ子の話だった。  「呼ぶ子っていうのは山びこのことだね、おばあちゃんも不思議な体験したことがあるよ」  見終わって祖母がそう言った。  「どんなこと?」  「私が六歳くらいの時の話でね…」

出典:チョコ太郎

 ある秋の日、祖母は村の子どもたちと山に遊びに行くことになった。  隣りのK子ちゃんも誘うと、三歳になる弟S太も着いてきた。  野を越え、川を渡り、山道を登り、小高く見晴らしの良い場所に出たのでお昼ご飯にした。  持ってきたおにぎりを皆で食べていると一人が落としてしまった。  「あ〜!落ちた」  「あ〜!落ちた!落ちた…落ちた…落ちた…」  思わず出た声が、見事な山びこになって返ってきた。

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 「お〜い!」  「こんにちは〜」  「やっほ〜」  それからはもうご飯どころではなく、各々いろんな言葉を叫び始めた。  「こっちにおいで〜!」K子ちゃんがそう叫ぶと、山びこはすぐに返ってきた。  「こっちにおいで〜!」  「は〜い」S太はそれに応えた。  ひとしきり山びこを楽しみ、ご飯も食べ終えたのでそろそろ帰ろうとした時…  S太がいない!  木々もなく開けた場所なのに、ほんの少し目を離したすきに姿が消えていた。

出典:チョコ太郎

 皆真っ青になり日が傾くまで探したが、どこにもいない。  仕方がないので村に帰り大人たちに伝え、村人全員で山や川、池を探したが見つからない。  翌日も朝から総出で探したが、やはり見つからなかった。  三日目の朝、全員が隣家に集まり地図を広げ、もっと広い範囲で探すよう相談していた。  祖母はK子ちゃんと並んで隣りの部屋でしょんぼり座っていた。その時…

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 「は〜い」  押し入れの中から声が聞こえた。  急いで開けるとS太がひざを抱えて座っている。    体を調べてみたが怪我もなく疲れた様子もない。  口々に何があったのか聞いても「気がつくとここにいた」と言うだけで要領を得ない。  なんにしろ無事で良かった、と皆ホッとして帰って行った。  「山びこに呼ばれたに違いないと私は今でも思っているよ」  祖母はゆっくりうなずきながら、そう言った。

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